第15話 『壁の偽ヒーロー』③
オーウェンと共に俺の家の大部屋で作業をする。と言ってもまだ情報処理の段階だけど。
ブラベさんから貰った資料を眺める。『壁の偽ヒーロー』が出てから1ヶ月も経っていないのに被害者数はそこまで多くないが被害額がかなりの額だ。これだけの額なら種4級依頼になるのもわかる。
【依頼階級】よく話に出てきている種〇級依頼の事。これは依頼難易度ではなく依頼報酬金額、または被害額で決まる。要するに実力は華クラスでも被害がほとんどないから種クラスなんてこともあるのだ。
ちなみに大部屋にはソファと机、資料保管用の棚しか無い。これでも入居時に比べれば増えたものだ。
「アウル、蝙蝠型携帯眷属の設定完了したよ」
「本当?ありがとう、こっちもやっと印終わったよ」
貰った携帯眷属をオーウェンが設定する。俺には携帯眷属を使えるほどの魔力がないから任せるしかなかったが、オーウェンは笑顔で引き受けてくれた。
一応オーウェンにも俺が転生?憑依?的なことになっていることは伝えてある。
【魔力】この世界で魔法を使うのに使用する物、人によって貯蓄できる量が決まっている。人間が食事から脂肪を貯めるように食事から魔力を貯蓄できる。ただ何故か俺は魔力量が少なく、一般的平均が100だとすると俺は16しかない。ちなみにオーウェンは1200だ、えげつねぇ…
【携帯眷属】様々な種類があり、レオンさんが使った使い捨て携帯眷属と携帯眷属の2つに分けられる。使い捨てかそうじゃないかの違いだ。
中のゴーレムをどう動かすかは魔力を用いて設定する。ゴーレムの起動にも魔力を使い、上で言う平均から20使う。つまり俺は起動すらできない。
今回使う蝙蝠型は、一定範囲を巡回し、設定した対象または設定した音を拾った時、魔力でパスの繋がった者に信号を送ると言ったものだ。
なのでオーウェンに携帯眷属を任せっきりなため俺は被害者が発生した場所と目撃情報を地図にまとめていた。そして目撃情報から『壁の偽ヒーロー』の見た目がわかってもきた。
『あまり身長は高くない』『ボロボロの服だった』『薄汚れたピンクの髪をしていた』『頭に角みたいな物が見えた』被っている情報が多いのはこんなところだろう。
……情報から凄く心当たりのある人物が思い出せた。あの時裏路地にいた少女、彼女が『壁の偽ヒーロー』なのかも知れない。
「うーん被害者も目撃情報もどっちも下巣南部商業街付近、それも人通りの少ない裏路地で夜」
「被害者や目撃情報の多いのはこの靴屋、それとここの喫茶店、あとは服屋近くの裏路地か。」
二人で地図を睨みながらペンで印をつけていく。目撃情報と被害者が出た時間、時期を見ていく。
「……?ねぇアウル。この2つのお店の襲われた日付を見て」
「ん?…!頻度は下がってきているけど交代で襲われている!!」
「それにほらこれ、被害者も目撃情報も何故か川の方には無い。それに井戸のある付近にもほとんど目撃情報が無いよ」
「偽ヒーローは水辺を避けている?理由が分からないな…でも水辺を避けているのに理由があるなら捕縛に使えるかもしれない。」
「日数的に襲われるのは明日か明後日の夜、靴屋の方か。念の為今日の夜、張り込みをしようと思うんだがオーウェンはそれでいいか?」
「…うん、いいよ。今のうちに準備しとこう」
そう言うとオーウェンは買い出しと言って部屋を出ていった。
張り込みをすると言った時、オーウェンの顔が少し不安そうな顔になっているように見えたが気のせいだろうか?
まぁ指名依頼は俺と同じで初めてらしいから緊張してるのかな?俺はそう考え、張り込みまでの間にもっと情報を洗うのだった。
―――――――――
その日の夜、靴屋のオーナーと周囲の建物の人に事情を説明し屋根の上から辺りを警戒する。オーナーが何故か変にビクビクしていたのは恐怖からなのかな?
携帯眷属も目撃情報から特定した人物像を設定したが特に信号は来ていない。
「今のところ異常なし、やっぱり杞憂だったかな?」
「………」
今はだいたい午前1時ごろ、『壁の偽ヒーロー』のような人物は見つかってない。
1時半、2時、3時と時間は過ぎていく。携帯眷属から信号は来ない。
「……ダメだこのまま居ても埒が明かない、一旦解散するか」
「あっうん……」
結局その日は『壁の偽ヒーロー』は現れなかった。俺的にはまだ余力はあるからやれたがこの張り込みが始まってからオーウェンはほとんど話さなかった。
張り込みだから喋らないってのは理解できるがなんというか迷い?罪悪感?を感じてるような顔をしていてちょっと不安だったから切り上げることにした。
何を迷っているのか俺には分からない。後で聞いてみようかな?いやでもプライベートな内容だったら言い出しにくいし……
「ねぇアウル、ちょっといい?」
「ん?なに?」
「その…話したい事があるから事務所に戻ったら少し時間くれる?」
「いいよ、あとあの部屋でかいだけで事務所じゃないよ」
「えっ」 「へ?」
なんかあの部屋について誤解があったようだがそんなことは今はいい。話、今俺が気にしてることだろうか?
そんな事を考えながら撤収作業を済ませ、俺達は家に帰った。
―――――――――
家に着く頃には時間は5時頃、もう少ししたら夜明けである。ロウソク足りるかな?
若干寒かったのでオーウェンの分の紅茶とコーヒーを作る。
お湯は奮発して買った魔石コンロが役に立つ。
【魔力コンロ】正式名称"蓄熱魔石式魔力盤"盤の真ん中にある蓄熱魔石に魔力を注ぐことで熱を出せる。蓄熱魔石は分かりやすくいえばガスボンベ、熱が尽きたら魔石を取り替える。ちなみにアウルの魔力量だと点て消すの1動作で魔力が尽きる。
「時間かかるからソファに座ってて」
「うん、ありがとう」
茶葉の香りとコーヒーの香りが部屋に満ちていく。なんやかんや徹夜になるのでこの香りが心を落ち着かせる。安い物だからか強い香りが鼻をくすぐる。鼻ないけど
「それで話ってなんだい?」
作りながら何の話なのかオーウェン聞く。湯気と湯を沸かす音だけが部屋に響く。
「……本当は初めてあった時に伝えるべきだったけど伝えれなかった事がある…ごめんね」
「………僕、固有能力を持ってないんだ」
オーウェンは神妙な面持ちで、それでいて少々不安が見える顔で答えた。
「……でそれで?」
「え?それだけだけど……」
「へ?」 「え?」
時間が止まる……へ?まじでそれだけ?
魔石コンロに置いたケトルがカタカタ音を立てた時、俺とオーウェンは現実に戻ってきた。
「えっとその僕の家だと『固有能力を持たぬ者はヒューマンで無い』って言われてたからその……」
「それで不安がってたと」
「うん……」
お湯を注ぎ紅茶の抽出を待つ。その間オーウェンは実家についてを語ってくれた。
オーウェンの実家は音楽の国『ビビット』という国のそこそこ地位の高い一族らしい。
昔"ヴァルプルギス"で名を上げ、それから代々一族の中で戦闘力の最も高い者がその一族をまとめあげるそうだ。どこの戦闘民族だよ。
それでオーウェンはその一族の中にある1家系の一人息子で魔力量の高さから期待されていたようだが固有能力を持っていない事が発覚した。
それ以来父の目は冷たくなり、母親以外誰も味方してくれない家から飛び出して冒険者になった。
オーウェンの家系は固有能力至上主義を強くこじらせているせいでそれ故の家訓だそうだ。
なんというかうん、その家訓作ったやつはバカか?固有能力の有無で人かどうかを決めるって、それじゃ俺が元いた世界は全員人じゃ無くなるよ。
「はぁ……あのなオーウェン、実家が固有能力主義だろうがなんだろうがオーウェンはオーウェンだ。」
「アウル……」
「はい、とりあえず今はこれ飲んで今晩に備える、それでいいだろ?」
片手に持った紅茶を差し出した瞬間、窓から暖かな朝日が差し込んでくる。
「うん……ありがとうアウル」
不安そうな顔は完全には消えなかったがさっきよりは明らかにいい顔をしていた。
おそらく今日か明日、『壁の偽ヒーロー』と出会うだろう。もうちょっと情報を集めとくか。
そんな事を考えながら朝日に照らされた部屋で休息を取るのだった。
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ステータス
名前:アウル ■■ ■■■
種族:ヒューマノイド
属性:水
称号:【巡る者】【第1の■】【閲覧不可】
所属:森林協会所属冒険者[種 2級]
魔法:低級
固有能力:耐性【完全防腐】
創出【素敵な糸】
能力:熱耐性IV
冷耐性Ⅲ
打撃抵抗Ⅱ
精神疲労抵抗Ⅰ
撥水Ⅰ
説明が多いな。次回からは多分説明も減る…はず。基本的設定以外あやふやなのでこれから先も設定は多いかも……




