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泥棒は嘘つきで 15

 

 翌日、無理が祟ったせいか泥のように寝てしまい目が覚めると既に11時を回っていた。

 誰も起こしに来ない所を見ると空気は最悪っぽいな、なんて思いながら顔を洗ってたらドアを叩く音が聞こえたが誰だろ?



「こんにちは。突然の来訪申し訳ありません。今よろしいですか?」


 あらま!?これは意外、まさかのダイスさんがやって来たので皆を呼んで話を聞く事に。何しに来たのだろうか?


「どうぞ」


「失礼します、先日はどうもありがとうございました。実は幾つか用事があって来た次第なのですが…無理もないですかな、姫の最後の態度を考えれば邪険にされるのも」


「いえ、ダイスさんが悪いという訳じゃないんですよ」


「ほう、では何かありましたかな?」


「ちょっと…」


「そんなヒソヒソしなくてもいいじゃないですか?今私はみーさんに怒ってまして空気を悪くしております。不快に感じられたら申し訳無いです」


 もうやだこの子怖い …でも怒ってる理由が理由なだけに何とも言えぬです


「さようでしたか。我々に関与する話でなければ触れないで起きましょうか」


「いえ実は…」


 クリスが事情を話すとダイスさんがこっちを見て来て…


「なるほど…みーさん、少々外へ行って頂いてもよろしいですか?ちょっと頼みがありまして、行けばすぐにお察し出来ると思います」


 なんだ?俺のフォローしてくれるのか?ってか外ってなんだろう


 とりあえず外に出て見ると1人の少女、って程幼くはないか?実年齢からすると少女だが…この人がアレか?お孫さんか?


「はじめまして。エリス様の侍女をやってますカーサと申します。以後お見知りおきを」


「あ、どうも、みーといいます。もしかして」



 と、言いかけた所で後ろからスリーパーホールドを掛けてきた奴がいた。即座に理解したが油断したよ



「あら?随分隙だらけじゃない?もう腑抜けてしまったのかしら?」


 エリスめ……思えばコイツに引っ掻き回されまくりだな、酷い目にしか遭ってない気がするの


「痛い痛い!お姫様、お転婆が過ぎまするぞぉ!?」


「だからアンタがお姫様って言うと馬鹿にされてる気しかしないからやめなさいよ!」


「あれれぇ〜?そのお姫様は別れ際になんて言ったんでしたっけぇ?」


「ぐぬぬ……」


「お姫様〜イチャつくのはその辺にして下さいねぇ〜」


「い、いちゃついてなんかないわよ!!」


「そうにしか見えませんでしたけど?」



 この侍女さんエリスより強そうだな



「んで、今日は何しに来たんだ?」


「あの……その……ええっとぉ…私王女だしぃ…」


「仲良くしてくれた皆さんに酷い事言って別れたので謝りに来ました」


「いくら他人事だからってそんなハッキリと言わないでくれる!?」


「申し訳ありません、他人事なもので」


 エリス相手にそんな感じに出来るってスゲーな。なんか色々フォローしてるとは聞いたけど多分ガチでこの人におんぶに抱っこレベルなんだろう、容易に想像がつくわ。

 それに…本当に姉妹の様な関係なんだなって思う


「そうかそうか、それは成長しましたねお姫様。これからはもう少しなんていうかこう…ねぇ」


「わ、分かってるわよ!」


 あれ?なんか素直じゃないか?今のはどちらかと言うと軽口叩いといて気楽にしてやろうってノリだったから食い付いても良かったのに



 流石にいきなり入ってくのはちょっと気まずいという事で俺が先に行ってワンクッションを、となったんだが…俺は気まずくないってか!?

 まあいい、お兄さんは大人だからこんな事で目くじらは立てんのよ



「ダイスさん、大体分かりました…では」


「みーさん!!!そ、その……色々言ってしまって申し訳ありませんでした!ダイスさんから聞きました、私達には秘密にして、とか死地に赴く男の約束を守ってたんですね」


 何そのカッコいい話?いや、そうとも言えるけど、そうなんだけど…真正面からそんな事言われると恥ずかしいを超えてキツイわ


「バレてしまったか、実はそうだったのだ。だから勘弁な。んで、今回の件を円満に解決って事で……本日の主役の登場です!」



 多少なり文句も言いたい気持ちはあるにはあるがこの件は本当に掘り下げて欲しくないです、中身はジェノサイダーズ案件なんです、全然違うエピソードが現れちゃうんですよぉ。

 うん、とっとと誤魔化そう。んで後でほぺ放題で手を打つか



「あ、あの……別れ際にあんな事言ってアレなんだけど…アレはごめんなさい!!」





 アレが多いのは置いといて、ちゃんと謝れたじゃないか。そんな訳で仲直りパーティーが開催された




「ジェノサイダーズって良い人達だったの!?」


「ええ、私をしてカッコ良かったと認めざる得ないわね」


「この人ほんの少しの量の心を盗まれたとか言ってました。ポケットに入るくらいのもんだとか」


「あんた余計な事言うんじゃ無いわよぉ?」


「その説を語る記者は少し居ましたからね、今までの所業も悪い評判が絶えない貴族ばかりが対象でしたので」


「でも驚きだわ。せいらってヤマト村の戦士がまさか師匠の身内とは。師匠の凄さを考えたらあの強さは納得だけど」


「姐御の強さ…思えば私はちゃんと目の当たりにした事ないなぁ、そんなに強かったの?」


「この私をして手を出したら殺されるって分からされるレベルだったわね。なんでジェノサイダーズさん達と争ってたからよく分からなかったって方が大きいけど」


「正体が気になる所ですね。さぞや立派な御方に違いない」



「ええ、そうね。でも最後逃げる時転んでたり私の親に恩があるとか大嘘ついてたしロクでもない気もするわね。話に乗ってやったらまあその気になっちゃって!何度噴き出しそうになった事か。あの大嘘をバレてるとも知らずドヤ顔で語ってたあの姿見せてやりたかったわ」


 ………


「エリス様が嘘と知ったのは後からでございましょう?」


「ば、バカ!そんな事ないわよ!」


「あの国宝は盗み出す事や潜入は不可能ではありませんがその事実を無かった事にするのは不可能です。その辺を調査不足なのは意外と泥棒歴自体は低いのでは?と推察されますが…我々にとっては救世主に他ならないので触れないでやりましょう。結果として他国の者は騙せてますし」




 みーです。最近鶏の天ぷら寄りになってる気もします…限りなく存在気配を消してる俺。

 ジェノサイダーズ案件の会話は危険なので普段は話題に出る事はほぼ無いが今回は仕方ない、適度に相槌を打ちつつ、仄かな興味をチラつかせつつ、話の流れに合わせておく、これに尽きます。

 ただ、変に流そうとしたりし過ぎるとクリスあたりなんかは察して来そうなので本当に細心の注意を払っての応対してますよ


「そういえば背丈だけならみーさんと似てた気がするわねぇぇ?」


 え!!?イカンイカン、焦った素振りも危険だ。この場合のオレ…軽口を叩いて


「でも仮にそうだとするとせいらさんに一方的にやられてたというのが気になりますね。如何にせいらさんの本気が凄いとしてもみーさんが一方的にやられるとは思えませんし…今回の場合で言うと相棒はリリィさんになると予想されますが、この2人相手だとせいらさんが勝つのは難しいのではないでしょうか?」


「ふっ、ジェノサイダーズさんもまあまあやるとは思うけどこのみー様程ではない、って事でしょーなー」


 華麗にスルーされましたがこれで良いんです。

 そりゃ本音を言えばチヤホヤされたいけどリスク大き過ぎますしね


「クリスが対峙してたら終わってた気がするんやでぇ」


 それはそう。対人でサシの勝負に持ち込めるならクリスが一番手っ取り早い


「エリス様は事件当夜、即姿を消した影が薄いどころではない向こうの王子よりもジェノサイダーズのルピンさんの方が婚約するに値するとか言ってました」


「ば、ばか!そういうのは言うもんじゃないのよ!それに…どうあれ捕まれば死刑は免れられない犯罪者なんだからね」


 やっぱそうよね、どう見たって捕まれば死罪よね。 

 ここまで来たらもう捕まらないように突っ走るしかないな


「なればこそ正体がバレる前に捕まえて無理矢理結婚するという手もありますよ」


 ダイスさんはかなりロックな御方なのか?


「…一応恩人でもあるから有資格者なのは否めないわね。どっかで会った事あるような気もするんですけどねぇぇ」


 その程度では動じない俺。ってかまさか実はバレてるとかないよな?


「王女の会った事あるかも知れない人となると…意外と高貴な身分の方なのかも知れませんね」


「それは無いわね!身に沁み出てるオーラが高貴さなんて皆無だったもの、どちらかと言うと貧相寄りね。きっとパーティーとかで食事をビュッフェ方式にしたら品なんて皆無でプレートの上が肉で真っ茶色なタイプに違いないわ。それに下手したらナルシスト入ってるかも知れないわよ」


 コイツ…好き勝手言いやがって!ジェノサイダーズさんは結構な恩人さんだろうが!


「エリス様、あんまりそういう事言ってるとルピンさんに嫌われちゃいますよー」


 いや待て、バレてないよな?


「聞かれてるわけ無いから大丈夫よ!仮に聞かれたってどうせ転んで忘れちゃうわ。それより皆、一応そんな危険と世間で言われてる盗賊さんがまたこの美しい私そのものを狙いに来るかも知らないからやっぱり私の専属護衛冒険者としてウチに来ちゃいなさいよ!」


 丁重に断るボク達


「専属は無理たけど何かあったらいつでも頼んでね。私達はいつでも行くよ!」


 クリス様は相変わらず気前が良いですねぇ、まゆもは師匠だから言うまでもない感じたけど


「とりあえずはそれで手を打つわよ。みー、アンタは私の護衛として即来れるようにいつでも準備は怠らない事ね。ありがたいでしょ?」


「はいはい、ありがたいですぅ。カーサさん、そちらの姫様は俺の事が好き過ぎてあんな事言って来ちゃうんだけど程々にって教育しといて下さいねぇ」


「承りました。次回からはもう少し照れ隠しを上手くする様言い付けときますので遊びに来てやって下さい」


「アンタ等ねぇ!!何好き勝手に言ってるのよ!!ちょっとお呼びしてあげたらすぐそんな勘違いするなんて、モテない男はコレだから嫌なのよ!すぐ勘違いして勝手に盛り上がるんだから。そんなしょーもない男に色々言われて可哀想な私」


 カーサさんは意外とノリが良い、意外でもないな。


 

 その後、いつもの様に口論しつつも驚くほど簡単に仲直りが済み、いつものノリで絡んで時間も忘れて喋り倒す俺達。   

 国のほうが結構大変だそうなので流石にお泊りはする事なく帰ってくエリス達、今度王宮に泊めてくれるというお土産を頂きました。



 因みにその後イストとトルクスは婚約破棄という事でいつも通りに戻った、というより戻したそうだ。

 現状大変なのはトルクスで王様、というよりは王族は皆事実上追放となり、王様を始め暗殺に絡んだ可能性が濃い者達はイストへ引き渡しになるそうで、現状ではその範囲を決めてるんだとか。

 どの世界も変わらないもので弱みを見せた途端手の平返しする所は出て来ますね。

 殆どの国が非難と経済制裁や何らかの制裁をして、その一部をイスト王が亡くなってまだ苦労してるという名目で支援するという形になったのだ。

 特にトルクスと密になっていたソウセンが真っ先にイストに支援表明した事でトルクスの凋落には拍車がかかるだろうと思われる。




 色々解決していつもの空気が戻り気が楽になったので今日は改めてぐっすり寝ようなんて思ってたら…ドアをノックされたので開けてみるとメロニィがやって来ました、感じから察するに改めて謝りに来たっぽいな



「みーさん…本当に申し訳ありませんでした!!」


「いや、もう気にしてないから大丈夫だよ。気にされるとその方が嫌だならもうあの話はほぺ放題でおしまいですな」


 いやほんと、ボロが出そうで困るんですよ。全く別枠の話が存在しちゃってるからねぇ。

 なんて言ってると俺の上に座ってきやがった


「ど、どうぞ。ほぺ…お好きにして下さい。た、多少の事もいい…ですよ」


 喜んで!!


「うわーいほぺ放題だぁい!!も、もしかしてこの位置関係…あんな事やこんな事も!?」



 落ち着け俺。これ割と色々出来るやつや!でもメロニィに下手に手を出すともう逃れられなくなる気がするから自重せねばならぬ



「みーさんにがっかりなんて言ってしまった自分にがっかりしているのです。もう好きにしちゃって下さい」


 くっ!!そんな風に言うと我慢が…ねぇ?メロニィって可愛いんだよ。

 だからこんな感じで迫られると困るですぅ


「お、落ち着け!メロニィのお怒りはもっともな話だったじゃないか。むしろ仲間との絆的な事で怒ってたんだろ?何も悪くはないのだよ」


「それでもです。……私、自分でも思った以上にこの生活や皆との関係……色々気に入ってしまってたようでちょっと感情の整理が追いつかなかったのです」


 そんな事言われるとなんか照れくさいじゃないっすか


「それは嬉しい限りですなぁ、これを機に主導権を少し強くしつつ隙あらば許嫁の話を有利になんて腹黒い考えが僅かながらあった、とか一瞬でも疑った俺も悪いから本当おあいこ」



「そ!?そそ、そんな訳ないじゃないですかぁ!!み、みーさんは私をそんな風に見てたんですか!?」


 コイツ……やっぱり腹黒いな!


「いやーそんな事ないよー」



「なんですかその目は!?それになんで棒読みなんですか!!そ、そりゃほんの、ほんの僅かながらそんな事も考えたかもしれませんが…ショックだったのは本当なんですからね!」


「キミ達、ドアも閉めずになにやってるのさ?」


「こ、ここは皆の家なんやでぇ!!そういうのはアカンのじゃぁぁ!!」


「あ…」


 俺がベッドに座ってる上に座ってるこの状態…イチャついてるようにしか見えませんよねー。

 にしてもメロにゃんはやっぱ所々抜けてるな、結局この日は明け方近くまで皆でくっちゃべっていました






 そして翌日、誤解も晴れて改めてリリィさんも呼んでお昼を共にしてると何処からともなくせいらさんも現れて、いつもの平和な日常に戻りました……



 戻ったはずでした



 今回のエリス様との冒険者生活やちょっとメロにゃんと不穏な空気になった事なんかを話すと、姐御は案の定というかメロニィの狙いを一発で看破してメロにゃんがまた焦らされる…うん。いつもの平和な光景てしたね。

 リリィさんが薬の材料の調達で夕方前には戻るという事で姐御も用があるから戻ると言い出して…



「ガント達を利用して嘘付いた罰として、ちょっと面倒くさいお引っ越し案件のお手伝いをみーには頼みたいんだが…その打ち合わせしたいからちょっとみー様お借りしていいか?」


「そうですね、嘘は良くないからみーくん、ちゃんと活躍して来るんだよ!」


 みー様とか言ってる時点でなんかヤバいと思ったんだよ。なのでちょっと怖かった俺は



「前髪の調子が悪いから明日でもいいっすか?」



 無駄足掻きをしてみたら



「そこんとこなんとかお願いしますよぉぉ〜……」





 無駄に溜めがあると思ったら耳打ちして来て




「ルピンさん♡」




 どうやら平和はまだまだ先のようでした。

 もう勘弁して下さい

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