始まりはヤマト村で 12
「はじめまして、ワタシはシオーニと申します、王宮直下の組織に勤めるものでこの度はその長官の決定の下、お迎えに参りました。ご同行お願いします」
ううむ
「王都からお偉いさんが来たっぽいよ」
「見かけないタイプの人だな」
「白い服がなんか独特ね」
物珍しさにヤマト村の人達がそこそこに集まって来てる。
それにしても…久しぶりに感じたこの感触、それは現世というか前の世界に居た頃以来だ
「詳しくは知りませんがざっくりとそういう人が来るとは皆さんから聞いてます。えっと、今すぐっすか?」
「何か困ることでも?」
やはりそうだ、この初見から無駄に敵視されるというか嫌われてるというか…俺は昔っからそんなのばっかな傾向にある。
ヤマト村では全く無かったので或いはとも思ったが気の所為だったようだ。
まだ元の性格がキツイだけって可能性もあるので決めつけはしないが言い方的にもキツイというかトゲが感じられるな
「えっと、一応皆に挨拶とかしたいので明日とかでもいいですかね?」
「そう急かす事では無いですがあまりのんびりされても困るので出来るだけ早くしてもらえませんか?」
やだぁ、こんなのとは関わりたくないですぅ
「それはちょっと酷いんじゃないかい?彼は村に馴染んでおる。すぐ戻って来るとかでは無いって事は皆知ってるんじゃ、横暴ではないかね?」
おお、村長さん良い人や
「こ、これは失礼致しました。我々がお迎えに上がる相手は大体がその」
「それより村の宿はあそこじゃ、あんたはそこにでも泊まってくがいい」
「は、はい。ありがたく泊まらせて頂きます」
あれ、これって…この人ビビってないか?もしかして俺の想像以上にヤマト村の人って恐れられてる?村長もこちらにグーサインを、まさかの確信犯か?でもこれで挨拶が一通り出来るってもんだ。
やはりそれ相応に馴染んだから挨拶回りはしたいし、リリィさんには既に突然旅立つパターンは伝えてあるとはいえ挨拶出来るならしておきたいところだ。
リリィさんが言うには冒険者になると仮定したらリリィさんが普段薬屋を営んでる街と同じ街に来る可能性が高いと言ってた。
詳しくは聞いてないだけどかなり離れてるとはいえそれなりに栄えてる場所という点では最寄であり、それでいて主要の街の一つなんだそうな。とりあえず皆に一通り挨拶に回るとしよう
「遂に旅立ちか、勇者になったらヤマト村になんかこう…ねえ?」
「結局勝負はお預けか…早く必殺技とか覚えて俺と勝負しろよな」
「もうヤマト村出身名乗っちゃって良いんじゃね?勇者になりゃ豪邸建てられそうだし」
「まさか今生の別れとかじゃないよな?たまには遊び来いよ」
思ったより集まってくれた、これは嬉しい限りだが
「例の件、頼んだぜ」
「任せとけ、最善を尽くすよ」
「期待してるぞ」
これが何なのかは男だけの秘密。ここに居る男勢は皆心を一つにしている事柄があるのだ。
おっとかえでさん達が来た、この話題は女子にはタブーだ
「ちょっと寂しくなるなー、冒険者になるっぽいんだよね?頑張ってね」
「ありがと、頑張るます!俺もかえでさんみたいなオーバーキル魔法会得出来るよう邁進するぜ」
「そんなにオーバーキルでもない気がするんだけどなぁ」
この女、前評判通りかなりヤバい。救いなのは基本的には常識人で真面目な性格だって事だ
「結局こっちのバイトはそんなに来なかったね〜」
だって裁縫系とかあんまり得意じゃないんですもの
「まだロリコン疑惑が晴れたわけじゃないからね」
ふざけるな、俺はお姉さん大好きなんですぅ
「あ、そうだ。これ良かったらあげるよ」
何やらマントのような物が
「きゃー何々、あんたらいつの間にそんな関係に?」
「違うから!さっきサイズ間違ったやつだから、大体そんな片鱗1ミリもなかったでしょ」
それはそうなんだがさっきサイズ間違ったとかは出来れば聞きたくなかった
「嘘でもそういう時はせめて、前日に作ったとか言ってくれたら俺のモチベーションも違ったのになぁ」
「そうだよ、服作りのバイトとかしてる時点で余り物とか廃棄とか何となく察せちゃうんだから」
「どーせならこれが手作りでどーのこーので甘酸っぱい青春を味わいたかったのになぁ」
「ほら、みーさんいじけたゃったじゃん」
「いやないから、私悪くないからね」
「でも、ありがとう。遠慮なく着させて貰うよ」
そんなこんなで夜は大人チームと飲みに。同世代の連中も酒が飲める組は参加してるようだ
「もう少し居れば誰かと良い仲になんて事もあったんじゃないの、あんた見てくれは悪くないんだし」
「そうかい?でも実際やっと慣れてきたとはいえまだいっぱいいっぱいだからしばらく青春はお預けよ」
「そ、そんなこといってまさか娘に目をつけて?」
マッサン酔ってるな〜悪い気はしない絡み方だがマッサンは割と絡み酒タイプだったりする
「大丈夫だ……っていうのも飽きたから、そうだなぁ10年後…いや、5年後に改めて」
「やめて、なんか生々しい。ウチの娘、まゆもはああ見えて……胸がでかい」
「酔い過ぎだ!誰が見てもデカいわ」
13歳でアレはかなりの物だと思う。本人のキャラが変だからあまりそういう見方をしないで済んでるが
「アンタ、大人達とよく話してるの見掛けてたけどそんなノリだったの?」
おっと、かえてさんが来た。危険人物登場ですね、年齢の事はバレないようにせねばならぬ
「いやぁ、まゆもさんはとっても良い子だって話をしてたんすよ」
「胸の話ししてただろうが」
「しょーがないじゃんかよ〜男はもう……しょーがないじゃんかよぉぉ」
俺も訳のわからないノリになっていた
「娘をそんな目で見てたなんて…確かにあの歳でアレは我ながら凄いとしか」
「まゆものお父さん、奥さんが聞いたらヤバいと思いますよ?」
「ええ!?ナミ…どこ?違う、あれ?」
「マッサン酔い過ぎだ、水持ってくるからちょっと休みなよ」
そういって水を汲んでやりマッサンを休憩タイムにさせて
「おーい、みーさん。例の件なんだが」
「大丈夫、既に15パターンの戦略が組み込まれてる…私だよ」
「おお〜心強い」
村の男勢は既にある事について心一つになっている。俺もこの宴会の前に既によしまそさんに挨拶を済ませている。
そう、ヤマト村きってのある意味大賢者よしまそさんだ。あの村長をして年齢は自身の半分位の30代小太りメガネで引き籠もりのよしまそさんにはちゃんとさん付けで呼ぶ程。
残念な事によしまそさんは女子勢にはすこぶる評判が悪い。悲しいかな、一つの事を得るためには何かを失わなければならない事もある。
よしまそさんはある才能と引き換えに女性にはモテなくなってしまったのだろう。
誰もが尊敬するよしまそさん、俺はその意思を必ずや次の段階へ導くという使命があるのだ
「アンタ、私達は呼び捨てにしないのに大人達はわりと呼び捨てって、やたら馴染んでるけどもしかして」
おっとかえでさんが良からぬ事考えてますねぇ
「かえでさん酔っ払ってるんですよ〜そんな事よりかえでさんの恋バナとかしよーぜ」
「みー待つんだ、かえでさんをあまり煽ると、躊躇無しに来るぞ」
同世代ではNo.1であろう天才肌のシン君がツッコんできた。隣に恋人を連れて…こんちくしょう
「私をなんだと思ってるんだよ、心外な」
「もしかしてかえでさんに恋バナとか禁句だったか?これは失礼しました」
「いや、別に禁句とかそういうわけじゃ……ってなんだその顔は?別に何もないから、過去に心の傷をとかそんな気を使われるような話はないからね?微妙な憐れみみたいな顔やめい」
そんなこんなで次の日、いよいよ出発することになった
この村に来て、この異世界に来て起きてる時間の半分位は一緒に居た気がするまゆもは顔を出さなかった。
まああれくらいの年頃じゃそんなもんか、少し寂しい気がしたけどむしろ良いとも思った。そこそこ仲良くなったとは思うけど自意識過剰とかは抜きでもし好意を持たれたなんて事があったりしたら…流石に13歳はちょっとってのもあるし実は年下の親とも交流があるとなった今、その辺りの関係性そのものがしんどくもなりそうだと思うからね。
色々助けてくれた恩はあるから借りは返すにしてもここはさっぱりと旅立つ方が双方良いだろう、とか思いつつお迎えの人と合流し見送られながら転身の魔法を使われようかというその時、ちょっと離れた高台から以前見たのよりもかなりデカく立派な水の龍を魔法で出したまゆもが大声で待っててねー!と叫んで見送ってくれた事に何だかんだと嬉しくもあり微笑ましいと思いながら俺は、新たな旅へと出たのだった。
少ししてからまゆものあの水龍の水はどうなったのかなと思いながら




