始まりはヤマト村で 10
「ここは……リリィさんの隠れ家の中?」
「あ、目覚めましたか。良かった…私回復魔法は使えないので回復の薬草とポーションを使ったのですが何とか回復しましたね。良かったですぅ〜」
「ありがとうございます。すいませんね、不用意に触れてしまったばっかりに」
我ながら馬鹿だった。だってヤバそうだとは気付いてたけどどうヤバそうかは解らなかったので好奇心だけで触れちゃったんだもの
「い、いえいえ。こちらこそ申し訳ありません、ちゃんと事前に説明しておけば良かったです。ええっと…あればその、家を守るセキュリティ魔法みたいな物でして」
「ああ、アレですね。害虫や害獣を寄せ付けない魔道具みたいな物ですね」
「そ、そうなんです、っていうよりは結界ですかね。ところでその……お聞きしたいのですが、あなた何者ですか?」
「え?俺?何者って言われても……何者なんでしょう?って感じです」
「えっと、濁してるとかではなく、もしかして本当にそんな感じなんですか?」
「はい、そうです。逆にお聞きしたいんですけど……いや、あんな真夜中に山奥の誰も居ないような場所で出会ったら確かに変か。でもそれにしたとしても俺って何者か?みたいな要素あります?」
「ええっと……イマイチ噛み合わない感じがまたなんとも不思議と言いますか…」
ヤバい、かなり困惑しているぞ。俺何か変なのか?ここで素性明かすか……でもなんか下手に…言ってもマズイかもわからん。
むしろだ、こちらから見てもこの人は怪しい。問題はこの世界に来て間も無い俺に怪しい人が来ること自体がわからんからむしろ話してみるのも良いかもしれない
「えっと、ちょっと俺の素性的な話してもいいですか?突拍子も無い話になると思いますが」
そう言うとうんうん、と頷いてくれたのであるがままに話した。
隠すほどの話はまだ来て間もないのでそれはもう包み隠さず。とはいっても最低限ヤマト村の人達の個人情報は伏せてますけど
「なるほど……色々納得は出来ました。色々話させてしまって申し訳無いです」
「いいんですよ。それより、これはいい機会なのでヤマト村以外の外の事とか教えて貰ってもよろしいですか?」
「ええ、それは良いですけど例えばどんな事ですかね?」
基礎的な事を聞いてみた。通貨、仕事、国、公共の機関、基本的な自立した人の生き方から店等色々
「ありがとうございます、勉強になります。いずれ来るかもしれない旅立ちの時に役に立ててみせます。それにしてもこの紅茶、美味しいですね。オリジナルですか?」
「そうです!この紅茶は中々取れない茶葉を利用して作ってるんですよ」
よく見ると色んな薬草や薬に使うであろう物でいっぱいだ。
おや?アレは服…赤いジャケットとエメラルドグリーンのジャケットにそれからテカテカした全身タイツみたいな…名前なんだっけ?
「リリィさんはああいう服も着るのですか?」
「あわわ〜、そ、それはその、たまたま手に入れた洋服でして」
キョドッてるリリィさん可愛い。と、その近くに並んてる本のタイトルに見覚えが、ルピン三世?この世界にルピン三世あるの?
「この世界ってルピン三世あるの?」
「え?これご存知なのですか?」
「ルピン三世って、俺の居た世界の漫画ですぞ」
「漫画はこの世界にもありますよ、そうだったのですね。これは10年前位に売り出されてヒットした本でして、私も好きで集めてたんです」
なるほど、おおかた絵が得意な転生者が一発当てようと書いたのだろう。という事は結構転生者が居るのかも知れない
「そうだったんですね、それだと俺もちょっとそういうのが売ってそうな街とか王都とか楽しみになってきました。てことはその服もルピン三世のような服って事か、リリィさんも着たりするんですか?」
フジコちゃんの服着てほしい
「え、ええっと……その……着たことは、ありますけど……恥ずかしいです」
「お気になさらず、きっと似合いますよ。そんでもって泥棒でもしようものならもう完全にフジコちゃんですね」
「そ、そうですね、ははは」
なんだろうこの空返事、変な人に思われてるのやも。確かに今の話信じられなきゃただの頭のおかしい人になっちゃうからな、惜しいけどそろそろ帰っておこうか。人間、距離感が大事です
「じゃ、じゃあそろそろ帰ろうかなと思います。介抱してもらったり紅茶貰ったりありがとう御座いました。また何処かでお会いできたらと」
「あ、あの……もし良かったらその……少し話聞いてもらってもよろしいですか?」
あらヤダ、まさかの引き止め。これはもしやワンチャンあるか?
「ええ、喜んで」
そう即答した男の中の男みー。この世界ではチャンスを活かす男になるのだ
「実は私…表では街で薬屋を営んでますけど、裏稼業的なものをやっておりまして」
何それ、カッコいい。でもコレちょっと待て…厄介事の香りがプンプンしてる。待つんだオレ、まだこの世界の新人の僕には荷が重いです。どうしよう
「そ、そうなんですか〜カッコいいですね~俺もいつか裏稼業とか語ってみたいもんですなぁ」
「そうです、そうですよね!勿論正義の事ですよ!」
うわぁ~思わぬ食い付き、しかも正義とか言い出しちゃったよ。これアレじゃない?ルピン三世とかあるし義賊的なヤツじゃね?
「ええっと…そうですね、裏稼業で実は正義の味方!カッコいいですね~男なら一度は憧れるヤツですわ〜おおっとそろそろ時間が」
そう言うと身に覚えのある物を出してきた。これはうそぴょんくん!?この道具ってヤマト村発祥で基本的には公的場所にしか卸してない代物なので個人で持ってるとか無い筈
「すいません、試したとかでは無いんですけど先程の話、このうそぴょんくんが始動してたのですが反応ありませんでした。なので全部真実という事てすね。本当にこの世界に転生してまだ間もなくお知り合いはヤマト村の人位、つまりお仕事とかもまだあやふやでなんの柵もない自由な状態ですよね?」
そう言いながら目をキラキラ輝かせて言ってきた、両手で俺の手を握りながら。
それはこんな場面でされたくないですぅ。勢いで逃げようにも逃げれないではないか
「た、確かにまだ色々あやふやですけどこれから何やら使者が来て冒険者となり魔王を討伐せんとする未来があるよーなないよーな」
「大丈夫です、あくまで裏稼業ですのでたまにです。たまにお手隙のときににでも手伝って頂けたら嬉しいのです」
ヤダ何この上目遣い、こんな場面でされても嬉しくない。絶対面倒かつ危険に巻き込まれようとしてるのがよく分かる
「で、でも俺なんてまだこの世界に来たばかりの新人で常識もわからず色々迷惑かけると思うのでこの話はあまりオススメ出来ないかなぁ。いつかこの世界に慣れて余裕がある時に気が向いたら考えるよって事でそろそろ」
は、離さない。結構力が強い
「いやいや、あなたのその纏ってる魔力というか力はかなりな物です。あの結界を振りほどくなんて世界広しと言えどそうは居ないですよ。それこそヤマト村の達人でもない限り無理です。そんな手練れのみーさんはきっとこの仕事向いてますからいいんじゃないですかね〜」
何故こんなに食い付くのか、この時点でヤバい。だってこの美人さんパーティーも組んで冒険者やってたんだからそれなりに人脈はあるはずなんだ。
それでいてこんな得体の知れないポっと出の男に頼るくらいだからこの人のやってる事に関わろうとしてる人が居ないって言ってるようなものだ。うん、何とか断ろう
「いやぁ~あれはたまたまですよ、私なんて大したものじゃございませんのでね。とりあえず保留ということで今回はお開きという事で」
「嫌ですぅ~お願いします、一人だと色々危険で上手くやれないんです〜」
「今の危険って言った!ほら、やっぱり危ないやつや!そんなのは冒険者とかでお腹いっぱいになると思うので……ってほら、手を離すのです。ええぃこの、離さないか」
「秘密の仕事なのでアテが無いんですぅ、何とかお願いします!やるって言うまで離さないですぅぅぅ」
この女、思ったより面倒くさいぞ。さっき迄お淑やかで人当たりの良いお姉さんだったのに。このままではラチがあかん
「ええっと、具体的には何をやるんですか?」
遂に聞いてしまった
「あくまで悪い人相手の泥棒と……」
と?泥棒は予想ついてたけど他にもあるのか
「と……?」
「お仕置きです」
「はいお疲れ様でした。帰ります、ありがとうございました」
さらっととんでもない事混ぜて来やがった。お仕置きってなんだよ、アレか?仕事人的なのか?仕置人は好きだったが人を殺めるのはちょっと無理だ
「待って下さい!私一人だとあまり上手く出来ずに大っぴらになっちゃうんですぅ、なので仲間が入れば上手くやれると思うんです」
「百歩譲って盗みはまあ良しとして仕置きはねぇ?人殺したこと無いですし」
失言だった
「殺しなんてしないですよ!あくまでお仕置きです。盗みなら……良いんですね?」
一言一句って本当に大事
「いや、その……でも素人っすよ?」
「大丈夫です、私も素人ですしよく分かってないですから」
「尚更駄目だろ!何言っちゃってるのこの姉さんは!美人なお姉さんから残念なお姉さんになっちゃってるわ」
「美人だなんてそんな」
そこに反応するんか
「とにかく、そうだなぁ〜後日詳しく聞くって事で今日はもういいですかね?そろそろ夜明けも近いですし」
「わかりました、話は明日でも良いですか?」
がっつくなぁ、まあいいか
「そしたら明日の夜、もう少し早い時間にまたここでってことでいいですかね」
「はい、ありがとうございます。では今日はこの辺でおやすみするとしましょうか」
そういえば道、わからんかった
「あの、こんな事頼むの恥ずかしいんですが…あの開けた場所まで送って貰ってもよろしいですか?」
「え?あ、そうですね。お送りします」
そう言ってお送りしてもらったのだが
「あの、さっきあれ程ゴチャゴチャ動きましたけど……めっちゃ近いじゃないっすか?」
「そ、それはその……お気になさらず」
意外といい性格してやがる
「なんか色々踊らされてる感が半端ない気がして来た」
「そ、そんな事無いですよ。ゴチャゴチャ回ったのは一応警戒してたと言いますか……」
ここでちょっとイタズラ心を出してみる
「バツとして明日はリリィさん、あのボディスーツ的なの着て来て下さいね」
「ええ〜!?そ、それは……ちょっと恥ずかしいと言いますか」
「これから組むって話ですから嫌でも見る事になるんですし良いじゃないですか〜」
「そ、それもそうですね…組んでもらえるならむしろ当然ですね」
ヒャッホウ、リリィさんのエロい格好が見れるぞ!これは美味しい話だったのかも知れない
と、そんなこんなで俺はヤマト村で滞在しつつ、リリィさんと組んで裏稼業をする事になった。
既に片鱗は出ていたがこのリリィさん、中々性格がぶっ飛んでてそれはもう騒がしい裏稼業だったりしました。引き受けるんじゃなかった。
因みにあの服は想像以上に似合っていて色んな意味でヤバかった




