****「勝手でごめんね」****(10)
俺たちは天宮さんの座席一帯で
昼食を共にすることとなった。
五人の配置はこうだ。
天宮さんが右手奥側、
その正面には健志でその隣に神、
天宮さんの隣が立花さんで、
俺はなんと右側に出っ張ったお誕生日席だった。
なんてこった。
理由は
「ユズが一番進行っぽいから司会席に座らせようよ」
という神が言い出したからだ。
しかし、そんなことは大したことではなかったし、
大して誰も気にしていない。
今みんなの意識は
完全に天宮さんの男嫌いについてへ向いていた。
めいめい持ち寄った弁当にはあまり手を付けず、
偏に天宮さんへと視線が注がれている。
辺りは騒々しいはずなのに、
そこだけが林の中のような静けさがあった。
というよりもそんな空気を感じさせられる。
だから彼女の唇が
うっすらと開いたときは思わず唾を呑んだほどだ。
「――それじゃあ、そろそろ話させてもらうね」
前置きのような言葉を置くと
彼女はふーと淡い溜息を吐き出した。
それから顔を上げるとやや顎を引いた、
非常に良い姿勢で再度口を開いたのだった。
「あたし、
幼いときに男子からいじめられてたの。
それが原因で男子自体が
嫌悪と恐怖の対象になっちゃって、
未だに男子が大嫌い。
近付きたくもないし、
触られたりなんかしたら
失神しちゃうかもしれない。
とにかくね、それぐらいダメなの」
そう語った天宮さんは苦笑いを浮かべ、
必死に痛みを堪えているように見えた。
斜めからの視点ではあるが、
その視線が正面にいる
健志を捉えていないのは定かだった。
喋るごとに彼女の視線は机に向かっていく。
「それでね、
いじめのトラウマなのかもしれないけど、
急にだったり、
至近距離で男子に話し掛けられるとダメで……
無意識のうちに手か足が出ちゃうの」
「それはいつから?」
「うーん……
確か、高校に上がったくらいかな」
「原因とかに心当たりは?」
「ある、よ。
さっき言ったいじめが原因だと思う。
でもきっかけは別だし……
それは言いたくないの。
ごめん、みんなに
聴いてほしいって言ったのに勝手でごめんね」
と彼女は申し訳なさそうに
眉を寄せたので俺は慌てて止めに入るのだった。




