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形勢逆転の悦に入って

「ぃいいやぁああああ!!


 ボクに近寄らないでください、

 この下等なマゾヒスト風情が!」


 そして、親友の目から見ても

 異常者としか言いようがない、

 血走った目で神を追いかける健志と

 その変態から逃げる神という

 茶番が目の前で繰り広げられている。


 別に放っておいても俺に害はないのだけれど、

 これは神の弱みを握るにはちょうどいい機会だ。


 これを逃す手はない。


「なあ神、

 三つの約束を条件に

 健志から解放してあげてもいいけど……どうする?」


「楪、君という奴は……

 神を脅しているって分かってます?」


 荘厳な声音でそう言う神だが、

 その一瞬の油断が命取りとなる。


 その隙を突いて健志が彼の背に触れる。


 瞬時に身の危機を感じ取ったのか、

 彼は弱々しい声を漏らす。


「たす、助けてください……

 条件も飲みますからぁ、

 この獣から早く助けて……!!」


「はいはい、分かりましたー。


 おい健志、落ち着けー

 こっちにお前を罵ってくれるお姉さんがいるぞー」


「んぉっ!?


 こうしちゃおれん!!」


 健志はいち早く反応すると、

 俺の元まで犬のように駆け寄ってきた。


 一方で神はへにゃりと力なく項垂れているらしかった。


「はぁ……酷い目に遭いましたぁ」


 安堵の息を漏らす神の前に俺は立ちはだかってみる。


「さーて、何を約束してもらおうかな??」


 するとみるみるうちに神の表情が曇っていった。


 形勢逆転の悦に入って俺は密かにほくそ笑んだ。




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