表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/4

-1- ザ・ワールド・クリエイション

 ──世界は壊滅した。


 倒壊しかけたコンクリート・ビルディングの残骸が、まるで巨大な墓標のように立ち並ぶ。

 アスファルトの道路に走る車の影は無く。

 役目を失った信号機は、まるで柳の木と見紛うばかり。


 個としての意味を失くした終末世界に残された少年、ムジナ。

 声を持たない彼には、言葉を発する術がない。

「……」

 彼は考える。

 全てが失われたこの世界で、生きる理由などあるだろうか。

 

 絶望。

 孤独。

 全てを象徴するのは、この滅びかけた世界。


 誰が作り出したのか。

 これが世界の終焉なのだろうか。


 だが少年は思い始めていた。


 ──もしかしたら、これは自分が心に描いていた世界かもしれない、と。


 そしてまた、これが全ての終わりであって良いと思える。

 滅びるべきものは存続してはならない。

 全てが意味を失った彼の心には、今あるものに対する未練など微塵もなかった。


「ねぇ、君」


 少年に声をかけたのは、白いワンピースを着た黒髪の美しい少女だった。

 ここは、生命の失われた大地。

 自分の他にも生きている人間がいたなんて、ムジナには信じられなかった。


 ──君は、誰?

 ──君は、僕の、何?

 ──君は、どうして、ここにいるの?


 ムジナは、声なき声で問いかける。


「私はカゲヨ。私は、君の……ううん、何でもない」


 声無き声は、確かに彼女に届いた。


「隣、座っていい?」


 言葉を発することができないムジナは、意思表示のために黙って頷いた。


 コンクリートの残骸のてっぺんに腰掛けるカゲヨとムジナ。


 どこまでも続く廃墟の森の上には見渡す限りの澄み切った青空。


 それは人間文明と自然の対比。


 灰色で無機質な社会の名残が、青空の透明感を引き立てるだけの物に成り下がった。


 鮮烈な印象を放つその情景は、ムジナの目を通してその心に深く刻み込まれた。


「君、この世界を終わらせたいの? もうほとんど滅んじゃってるけど……」


 カゲヨが問う。


「こんな世界、なければいいんだ、ってそう思ってない?」


「……」


「君は世界の創造主なんだ。ううん、君だけじゃない。本当は誰もが神様になれる素質があるんだよ」


 そう言ってカゲヨは、美しい声で詩を口ずさみだした。





 望んだ未来


 心の鏡が作り上げる


 あなただけの世界


 美しいものも


 醜いものも


 全てあなたの中にある



 楽しかった思い出


 つらい思い出


 全てあなたの中にある



 全て等しくあなたの思い出


 全て等しくあなた自身


 あなたの心が作り出す


 あなたは世界の創造主


 あなただけの世界を作り出せる


 空の向こうの、そのまた向こうも



「ムジナ、この世界は君が作ったんだよ」

 カゲヨは優しく微笑んだ。

 

 ムジナが望んで壊した世界は、彼の世界だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ