不登校仲間 2
会話中、御巫真白にかかる重力が正常になり、俺の背中の上に勢いよく落下してきた。
「っ痛ぇ……」
恐らく背骨が折れた。クソ程痛い。が、ここで露骨に痛がる様子を見せては、真白に余計な罪悪感を持たせてしまうと考え、ぐっと堪える。どうせこの程度の怪我、俺が負う分には何の問題も無いのだから。
「だ、大丈夫!? 今、とんでもない音したよ! ごめん、本当、ごめんなさい!」
「お、俺は、大丈夫……それより真白さん、いつもの丁寧な口調が崩れてますよ……素の方が、余っ程親しみ易くて、可愛らしいと思うけど……」
「っ……お、思ったより大丈夫そうですね。はぁ……ありがとうございます、立てますか?」
「もうちょっと待って……まだ動けな、っ痛てて。そ、そんな事より、真白さんも大丈夫? 血流れてるし」
「そんな事よりって……はぁ、私は大丈夫ですよ、少なくとも今の龍さんよりは。龍さんが来る前、反転した時に頭から落下したものですから怪我をしてしまったってだけです。少し頭と腕を切っただけで、もう出血も止まってきてますし、庇ってもらいましたお陰で見た目より元気ですよ。ありがとうございます」
「それは何より」
真白は申し訳なさそうに微笑んでみせた。
まぁ彼女に大きな怪我が無いのなら、俺が彼女の怪我を防ぐ事ができたのなら、それで良い。折れるなら、俺の骨で良い。
「ちょっと失礼しますよ。んしょっ……痛くないですか? まだ動けそうに無いのであれば、動けるようになるまでの間、こうさせてください」
真白は俺の元に正座し、動けなくなった俺の頭を自身の太腿の上に持ち上げながらそう言った。
柔らかい。太腿の感触と体温が、髪の毛越しに後頭部に伝わってくる。
クラス一、二を争う可愛い女の子からの唐突な膝枕イベントが発生。だがここで取り乱しては駄目である。紳士たる者、常にクールに。
「膝枕!? 良いんですか!?」
「ちょっ、声大きい! 露骨にテンション高くなりすぎです! 恥を忍んでやってるんですから……」
「おっと失礼しました。いやいやでもですね、こんな可愛い女の子から膝枕をしてもらえるなんて状況、思春期の……いいや思春期に関わらず、男なら誰でもテンションが上がるものなんですよ」
「よく恥ずかし気もなく言えますよね。ふふっ、まぁ悪い気はしないですが」
背中の激痛を忘れる程の、人生初の膝枕イベントはその後三十二分もの間続いた。
「いやぁ本当、ありがとうございます」
「感謝するのは私の方ですよ」
「それにしても、こうして膝枕してもらうのは初めてだから……仰向けから姿勢を変えられないというのもあるとは思うけど、思ったより恥ずかしい」
「恥ずかしいのは私の方ですよ」
「…………」
「…………」
「何も喋らない時間がそれなりにキツい……から、こうしてる間、自己紹介がてら俺の話を聞いてもらえないでしょうか」
「勿論。というか、さっき話そうとして結局有耶無耶になってしまったのだけれど、逆向きになっていた理由。自己紹介がてら、私の話もしなくてはなりませんね」
こうして俺は、誰にも話さないつもりだった不登校になった経緯、十月十六日の朝九時に罹った非科学的で非現実的な「呪い」という概念について、俺の顔を真上から覗き込んでいる女子に語り出す。




