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第一話 腹部にかますアッパー

閲覧ありがとうございます!

前に書いた作品で敬語失礼系との掛け合いが楽しい事に気付き、気が赴くままに書き始めてみました。

導入シーンがどなたかの作品等と被っていたら申し訳ありません。。

参考作品とかはないため、優しい目で見ていただければ幸いです。




 

【「黙りなさいよ!」


 トリーゼは細腕を振り上げて金切り声を上げた。

 恐怖で怯えるシャイラの顔に優越感を感じながら。


「……っ!」


 シャイラの背後で彼女の王子様が顔を歪めて走ってくる。


(あはは! お前は間に合わない! ざまぁみなさい!)


 トリーゼの隣で控えている護衛は、いつものように無表情を貫いている。

 そして彼女は思いきり、掌をシャイラに向かって振り下ろslgうtぎfkfがsdあ―――】












「んごふっ」


 トリーゼは振り下ろした掌を丸め、勢いよく軌道を変え、自身の腹部に突き刺した。

 それゆえ、その手がシャイラにぶつかることは無かった。

 一体、彼女は気でも狂ってしまったのだろうか。


「な、何をしている?!」


 シャイラの傍に駆け寄った彼女のオウジサマ、クライスがあまりにも突拍子の無い光景に度肝を抜かれている。


「ぐ、ふぅ」


 周囲がざわめき、どよめき、混乱する。

 だが、彼女はそれどころでは無かった。


(おぇ、い、痛すぎる。吐く、吐く!)


 蹲り顔を真っ赤にさせながら、彼女は周囲の視線を一身に浴びていた。






 ――時は遡ること1分前。



(えぇぇぇーー!?)


 私はパニックになっていた。

 なんてったって、可愛い女の子に思いきり腕を振り下ろしている真っ最中だったのだから。


 覚えている。

 私は書いていた。

 悪役令嬢トリーゼが純真無垢庶民のシャイラを攻撃するワンシーンを。

 トリーゼの容赦ない一撃により、悪役令嬢は満場一致で国外追放。

 晴れてシャイラとクライスが結ばれるはず―――だったのだ。

 ハッピーエンド目前まで執筆していたのだ。


(え、私、どこまで書いて……? って、そんな呑気な事考えていられない! ここでシャイラを叩いたら死ぬ! 絶対に殺される!)


 作者故、登場人物の相関図は誰よりも把握している。そして、私の未来がどう足掻いても八方塞がり四面楚歌であることも。

 脳味噌が思考をする前に、気が付いたら私は自傷行為に走っていたのだった……。




 +*+*+*



「トリーゼお嬢様、大丈夫ですか」


 ほう、これが朝チュンというやつか。

 目を瞑ったまま小鳥のさえずりを堪能する。

 意識が戻ってきた。痛い。なにか、どこかが痛んでいるぞ。


(い、いたいぃ)


 腹ど真ん中だ。

 自分でかました腹部へのアッパーカットは、そりゃもうスゴイ攻撃力だったみたい。

 もういっその事、格闘家に転身してやろうか。

 もし私がただの令嬢だったら、待ち受けている贅沢な暮らしに歓喜し、小鳥のさえずりをBGMに小躍りをしたいところだが、私に待ち受けているのは『極悪』令嬢なのだ。


 正しき心を持つ登場人物全員から、考えうる限り最大限の侮蔑と悪意を受けるように設計した、本当の悪役。

 年齢は20前後。

 幸いなのは彼女が美しい事か。

 悪役とは言え、「やっぱり動かすならば見目の良い人間がいい」という作者エゴから、とんでもない美人に設定させてもらった。

 煌めく銀髪を腰まで伸ばし、スラッとした体形を持つ。

 灰色の猫瞳が細められると、ちょっとミステリアスで意地の悪い顔になる。


「息は……してますね」


(は!?)


 突然、耳元で誰かの息づかいを感じた。

 うわ、なかなか起きない私の生死を確かめているんだ!

「ついにくたばったか、いや違う」と肩を落とすんだ!!

 私が起き上がったら大きな長いため息を吐くんだ!!!


「早く起きて下さいよ、トリーゼ」


 気だるげな声に心が縮む。

 これ、狸寝入りしていた方が安全では?


 すると、誰かの手がお腹に伸ばされる気配を感じた。

 着ていた服を捲られそうになる。

 このままトドメの逆アッパーカットを喰らわせるつもりか?


(いやいやいや、無理無理無理)


 死ぬならもうちょい苦しまない方法がいい。

 何なら川のせせらぎが聞こえる美しい草原で、太陽が燦々と降り注ぐ場所で眠るように意識を手放したい。


「ご、ごめんなさい! ちょっと嫌かも!」

「は? 起きてたなら言って下さいよ」


 上半身を起こし、必死に腹部を守る私を冷たい目が見下ろしている。

 彼の名は、ヘルバート。トリーゼの護衛兼執事だ。

 黒髪の知的な男性で、青く冷たい瞳が印象的。

 彼は高飛車で卑劣なトリーゼに脅され今に至るため、彼女の事を大層快く思ってはいない。

 なお、トリーゼはヘルバートの見た目をすこぶる気に入っている。


「頭でも打ちました? お嬢、昨日から変ですよ」

「え? あー……。あの後って、どうなったの?」

「お嬢が恥ずかしさでぶっ倒れた後は、皆狐につままれたみたいに突っ立ってました」

「いや、恥ずかしくないから。お腹痛すぎて失神しただけだから」

「は。その方が馬鹿っぽいですね」


 ヘルバートが私を小馬鹿にしたように鼻で笑った。


(あれ! おっかしいな~。 ヘルバートはもっと知的で大人しい性格のはずなんだけどな~)


 作者には分からないヘルバートの深層心理があったのだろう。

 そりゃそうか。嫌いな女に無理やり仕えさせられてもいたら、嫌でも性格は捻じ曲がる。

 これは私の落ち度。仕方ない。そう。だから怒りを鎮めるのだ。


「倒れたお嬢をそのまま放置するわけにもいかないんで、重いあんたを、えっちらおっちら医務室まで運んできたって訳です」

「そう、ありがとう……」

「……本当に頭大丈夫ですか?」


 ヘルバートが覗き込んでくる。


(う、面が良すぎる……)


 直視するには心の準備が出来ていない。

 私は反射で彼から顔を背けた。


「……王城、行きます?」

「あぁ、そっか。仕事……」


 登場人物は全員、王城に勤めていた。

 トリーゼはコネで、とりあえず文官の席を与えられているだけ。

 ヘルバートはトリーゼの護衛兼、王城護衛の主力。

 シャイラは平民ながら実力で外交官として活躍をしている。

 クライスは未来の王として、邁進中だ。


(いや、私だけ針の筵!)


 親の七光りのお情けで与えられたポジション。

「王城で働いている」と言えばウソにはならない。

 その言葉だけなら、「わー。すごーい」と称賛の嵐が巻き起こること必須。

 王城に勤めるには優秀な人材でなくてはならないのだ。


 ここで最も重要なのは、人間として優れている事。

 本来ならば、人の不幸を手を叩いて喜び、人の涙を嘲笑う人間なんかが到底足を踏み入れられる場所では無い。

 そこを物語の都合上、トリーゼをコネで入れさせてもらった。

 そのツケがここに回るとは……。


「もう冒険者になろうかなぁ……」


 何かよく分かんないけれど、この世界にも冒険者はいるだろう。

 顔が割れているこの城は、余りにもトリーゼの敵が多すぎる。

 どれだけ印象の改善に努めても、そう上手くはいなかいだろう。

 それに、職場でお荷物状態確定なのは精神的にやられる。


「正気ですか? あんた、本当一体どうしたんです? 冒険者なんて劣等種の稼ぎ口って言ってたじゃないですか」

「なにそれ! そんな酷い事―――」


 ――言ったわ。

 冒険者に寄り添うシャイラのエピソードら辺だ。

 平民の彼女の評判がうなぎ登りになる事実が大層気に食わなかったトリーゼは、家に帰ってヘルバートに呪詛をぶちまけたのだった。


「『あはは! あ~んな落ちぶれた職に就く人間の気が知れないわ。あんた、良かったわね、この私に仕えられて。感謝しなさいよ、フン』と、仰ってましたね」

「一言一句覚えてるの止めてよね。私の真似も二度とするな」

「俺、記憶力良いので」

「あ、そう」


 トリーゼは、お腹を抱えた。

 いや、むしろ今抱えたいのは頭だが。


「痛むんですか」

「いや? 全然平気」


 自分で殴りつけて置いて悶絶するなんて無様すぎる。

 ――トリーゼは見栄を張った。



お読みいただきありがとうございました!

頑張って恋愛要素をねじ込むタイミングを探します!

良い感じのタイトルも模索してます。。

……もしよろしければ!評価していただけると嬉しいです!歓喜で泣きます。

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