カブトムシ取りが試験!?
「えー、私が今日お前たちを担当するヨカだ。Aランクの冒険者でプロハンターでもある。」
黒髪の魔道士風の試験官がなぜかニヤニヤしながら挨拶する。
前髪が目元にかかっていて、目はみえないが。
うっとうしくないのかな、あれ。
「先輩、Bランクじゃなかったでしたっけ?」
隣に立つ長身のオーガの女魔道士がぼそりとつっこむ。
一本角、ハスキー声、メガネ。
オーガなのにあの人魔道士なのか。
オーガは戦士のイメージしかない。
「ヨウキ!こまかいことはいいんだよ!」
ヨカはジャンプして、持っていた紙束でヨウキの頭をはたいた。
オーガの頭を紙でたたく人を初めて見た。
「さて、お前らにやってもらうのはこれだ!」
ヨカがホワイトボードに大きく書き始める。
「昆虫採集」
……え?
「昆虫採集ってなんだよ!」
「そんなもんで何がわかるんだ!」
生徒たちからすぐに不満が上がる。
「しからしかああああ!!」
ヨカが一喝する。
「お前たちが探すのはこれだ。『マジックイートオオカブト!』」
ヨカが一枚のイラストをホワイトボードに貼り付けた。
……カブトムシだった。
紛れもなく、カブトムシだった。
「この辺に自生する全長10センチほどのカブトムシだ。色は黒。こいつを各パーティー1匹以上、生きたまま捕まえてこい。」
「カブトムシ採集ってどういうことだよ!?」
学生たちがざわつく。
「なお、マジックイートオオカブトの情報を教えてやろう。」
ヨウキがメガネを押し上げながら口を開く。
「まず、こいつを捕獲して売れれば、金貨1枚になる。」
「金貨1枚!?」
一気に会場の空気が変わった。
「捕獲したものは自由にしていい。足が欠けたりすると価格は下がるが、合否には影響しない。」
「金貨1枚か!」
「それを早く言ってくれよ!!」
参加者たちが色めき立つ。
「なお、こいつはCランクモンスターでもある。」
「Cランクだと!?」
「カブトムシが?」
再びざわつく。
「マジックイートオオカブトの特性を教えてやろう。」
ヨカが意地悪そうな笑みを浮かべる。前髪の奥で口だけが動いている。
「こいつは小さな魔力を吸収する。魔力感知で位置を探知できない。基本的に目視で探すしかない。」
「まじか……」
「あの黒いやつをか……」
「また、高火力の魔法は吸収できないが、その場合、カブトムシは死ぬので捕獲は不可能だ。」
殺しちゃだめなわけか。
「加えて、こいつは高速で飛び回る。生身で受けると、よくて大けが。打ち所が悪ければ死ぬ。」
「え、死ぬの!?」
「鎧で防げばいいんじゃないか?」
「鎧で防げば当然防げる。だがその場合、カブトムシのほうが砕けて死ぬ可能性が高い。捕獲は不可能だ。」
ざわざわざわざわ
ざわつく冒険者たち。
「つまりどうしろと……」
「それを考えるのがこの課題だ。」
ヨカがにやりとした。
「期限は今から72時間。健闘を祈る。わからないことがあれば我々のところへ来るように。」
「これはなかなか手ごわいですね……。」
ミコさんが真剣な顔でこちらを見る。
「要はカブトムシなんだから蜜で集めてとればいいんだろ!」
クノが腕を組んで言う。
「アタシは小さい頃カブトムシクイーンと呼ばれたのよ!まかせなさい!」
マチが胸を張る。
……大丈夫だろうか、このパーティーは。
「まず作戦会議をしよう。」
オレはため息をついて、四人を集めた。
「先輩、あなた、ほんとに趣味のわるい課題を考えますね。」
「バトルばかりが冒険者じゃないよ。」
そんなやりとりが聞こえた。
◇
話し合いの結果、まずは試験官にヒントをもらうことにした。
「わからないことがあったら聞けといってたからね。」
メンバーもこればかりはとくに異論はなさそうだった。
試験官のところにいくと人だかりができている。
「えー、質問が多いからひとことでいうよ。」
そういって、ヨカ試験官はホワイトボードになにやら書き始める。
「あさ、4時半から6時半ころが最適だ。夜に木に甘い蜜を塗っておくのがおすすめだ。
朝は気温が低いから、やつらの動きは多少鈍い。」
え、それって文字通りカブトムシでは…
「そのほか、アリがいっぱいいるところもでやすいよ。昼間は乾燥によわいから土の中にいる。」
「では、昼は土をほればいいのでは?」
生徒の誰かが質問する
「運よく見つかる場合もあるけど、あいつら急に光を浴びると暴走してつっこんでくるからね。目に飛び込んでくる、よくて失明、運が悪ければ死んじゃうよ。」
ざわざわ。
生徒たちがざわつく。
「夜は黒い姿で飛び回るからそもそも見つけるのが難しいし、たたき落としたり、撃ち落とすならまだしも、生け捕りは難しいんだ。だからコレクターには高く売れる。」
「そんなのどうやって捕れば‥‥」
生徒たちがざわつく。
「これはいくら戦闘に強くても有利じゃねえな。」
クノがつぶやく。
「とる方法は自分で考えろ、と、いいたいところだが、いくつかある。」
ヨカ試験官は続ける
「バナナに酒をぶっかけて、1時間ほど寝かせる、それをストッキングにいれて木にくくりつけるんだ。そうすると、カブトムシがよってくるぞ!」
カブトムシだ。完全にただのカブトムシの捕り方だ。
「そんな簡単でいいんですか?」
学生がおどろく。
「しかし、やつらは臆病でな、捕まえようとすると飛んで逃げる。まずは、それをどう捕まえるかは君たち次第だな。」
なるほど。
「やつらは魔法力を吸収するので並みの魔法は無効だ。だが、スキルは効く可能性があるし、正攻法でつかまえることもできるぞ。ヨウキ。」
「はい。」
そういうと助手の人が、箱の中から虫かごをとりだす。
すると、カブトムシがでてきた。
「これが諸君の探すマジックイートオオカブトだ。こいつらは温度が下がると動きが弱まる。この虫かごも温度を下げた環境になっているからおとなしい。」
そういいながら、ヨカ試験官は虫取りアミをてにもつ。
そして、助手が箱を開けた瞬間、マジックイートオオカブトが目にも止まらぬ速さで飛び出した、しかし、その瞬間、ヨカ試験官が虫取りアミでカブトムシを捕まえる。
「オオ…」
声をあげる生徒たち。
「このように正攻法で捕まえてもOK。なおこの虫取りアミは特殊素材で、このムシに突っ込まれても破れない。こちらの籠もカブトムシを保存できる。みなさんに1セット銀貨1枚でお貸ししよう」
しっかりしてるなあ。
「そして、最後が…」
声を低くする。前髪の奥で、口元がにやりと動く。
「他人が捕獲したものを奪うことだ。」
え?
それありなのか。
ざわざわ。
学生たちがざわつく。
「実際のハントでも他のパーティーからお宝を守るなんてことはあるからな。ただ、今回は相手を殺してしまった場合は失格ということにしておく。むやみに殺人をされてもたまらないからね。」
そして、ヨカはニヤリと笑う。
「ほかにも入手する方法はある。まあ、あまりいうのも良くないから自分で考えるんだね!」
◇
俺たちはとりあえず正攻法でいくことにした。
とりあえず、今日のうちに罠を仕掛けて、早朝に捕まえる作戦だ。
「あの木とこの木とあそこの木に樹液が多いみたい。」
マチがスキル【万能分析】で木々を解析することにより罠を仕掛けていく。
これであとは待つばかりだ。
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