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17 なんか忙しい夜

よろしくお願いいたします

17 なんか忙しい夜


 ほら穴に戻るとソレイユがまた泣いている。

「ソレイユ、どうしたの?」

 グレッグが駆け寄る。

「戻って来たらグレッグもイヨタもプリミーもいなくて・・・私が頼りないから嫌いになって何処かへ出て行かれたと思ったんです。」

 主神様モードでしゃくりあげながらそう言い終わると、ソレイユは椅子に腰掛けたままグレッグの腰のあたりに取り付いて泣き出した。どうしたものかと困ったグレッグだったが、何か思いついたのかちらりと黒猫の方を見るとソレイユの頭を撫でながらこう言った。

「ソレイユ、主神様の条件ってのがあるんだよ。それは種族の違いを越えて手助けしたくなるような性格であることで、なんでもできちゃうような優秀な神様は決して主神には成れないんだよ。だからね、ソレイユは立派にこのベータ世界の主神をやれてると思うよ。」

 これを聞いたソレイユはグレッグの身体に顔を押し付けたまま、もごもごと言った。

「ありがとうデース。元気出たデース。」

「これは或るラノベ作家の受け売りなんだけどね。」

 グレッグはそう返してまたちらりと黒猫の方を見たが、当の本人はそのセリフのことを忘れているようだった。




 ソレイユが落ち着いたと思ったら、今度は背後から聞き慣れた声がする。

「オニキス、どうやらグレッグは女神様までたらしこんでいるようだ。」

「そんなことではないかと予測はしていましたが、ボス、『たらしこむ』は主神様に失礼です。」

 ボスと秘書AIオニキスの声がする。二人の声がするというだけでグレッグは泣きそうになる。ホッとしたというのとは少し違うが、日常の一部を取り戻した安心感で脱力しそうになった。イヨタはそれを察してグレッグに喝を入れる。

「グレッグ、まだやることがあるぞ。」

「そうだな。」

 グレッグは敢えてデータクリスタルになっているボス永原とオニキスには声をかけず、ソレイユからそっと離れて少し離れたソファに向かった。そこにはイヨタが成形した永原の身体が寝かせてある。

「これで完成。」

 グレッグは三十秒ほど未完成の永原の身体に手を触れた後にそう言った。これでもまだグレッグはボス永原とオニキスには声をかけず、今度は一人がけソファーに座らせている銀熊先生の身体に触れた。外見は変えずに中身をリニューアルする。新しい黒猫先生と同じ仕様だ。

「黒猫先生、こっちの銀熊先生の身体でも半日くらいなら奥の院で暮らせますよ。」

 グレッグがそう言うと黒猫はサッと銀熊の膝に飛び乗り、しばらくして銀熊が目を覚ます。

「グレッグ、ちょっと見ない間にすごい使い手になったんだね。」

「イヨタはもっとすごいですよ。UFO操縦してますから。」

 グレッグのその言葉に耐えかねたイヨタが口を出す。

「グレッグ、ボスとオニキスに何か言うことはないのかよ!」

 珍しく怒気を含んだイヨタの声にグレッグはこう返した。

「それはオニキスに身体をプレゼントしてからって決めてるんだ。」

 言い終わった時には何のエフェクトもないままに、ホワイトデニムに紺色のボタンダウンシャツを着たあのオニキスが立っていた。




 念のためにイヨタが外見の調整をしている間、グレッグは例のジープとトカゲの話をした。そのグレッグの話を聞きながら銀熊は永原をデータケースから新しい身体に移し、ソレイユはタンポポ茶を入れた。データケースに入ったままのオニキスは空中に浮かんだ自分の身体の想像図と、イヨタが調整中の本体の間を無言で行ったり来たりしている。プリミーはそのオニキスが気になってぴょんぴょん飛び跳ねている。

「まあ知的生命体がみんなヒト型ってことはありえないしな。トカゲが賢くても問題はない。」

 そう言いながらソファに横たわっていたボス永原が身を起こした。

「お疲れ様です。」

 グレッグは無表情で言う。何か含むところがあるわけではなく、いつもボスに対してはこうなのだ。

「相変わらずの仏頂面だねえ。しかしこの身体は素晴らしい出来だ。トクラには申し訳ないが、グレッグとイヨタが作ったやつの方がいいなあ。」

「トクラ?」

 グレッグが首をかしげる。

「ああ、黒猫と銀熊の名前だよ。まあ、本人は嫌がってるから意地悪で呼ぶんだがな。」

 そう言って永原がにやけると、銀熊が返す。

「分かってるなら言うなよ。」

 どうやら二人は相当古い付き合いのようだ。そんな二人を見ていると誰かがツンツンと肩をつつく。ソレイユだった。ソレイユの指差す方を見れば、オニキスが立っている。

 黒髪のショートボブ、くっきりとした目鼻立ちの和風美人、ホワイトデニムに紺色のボタンダウン。オニキスにプレゼントすると決めていたイメージそのままだ。

「何か言うことがあるのでは?」

 相変わらず平坦な女性AIの声。だがそれはわざとそうしているように聞こえる声。まあ、そんなことはどうでもいい。

「ずっと・・・会いたかった。」

 それだけ言うので精一杯のグレッグは涙が止まらなかった。たかがAIに入れ込みすぎなのではないのかと自分でも思う。理由は分からないが、何故かそうなってしまうのだ。

 涙を拭いて顔を上げたグレッグとその様子を見つめていたオニキスの目が合う。するとオニキスは少し横に視線を逸らした。AIが恥じらう動作を持っているものだろうかと考える間もなく、ソレイユが声を上げた。

「発見したデース!」

「中継器を発見したのか?」

 イヨタが確認するとソレイユが答える。

「両方デース!チュウケイキもジープも見つけたデース!」

「おい、グレッグ、どうする?」

 イヨタがグレッグにそう問いかけると、グレッグはあっさりこう返した。

「イヨタとソレイユでこの前みたいに監視してくれ。結界肉まんにはバッチリ隠蔽かけるから。」

 イヨタは何を言われているのか分からないという表情に、ソレイユはふくれっ面になる。

「だって、俺はオニキスに歩く練習させなきゃ。オニキスは秘書AIだから肉体を持ったことがない。身体はあっても動かし方が分からないんだ。だから最初は付きっ切りで教えなきゃだろ?」

 グレッグがさも当然のようにそう言うとイヨタはなるほどとうなづいたが、ソレイユは納得しなかった。

「でもさっき・・・」

 ソレイユが言いかけると、銀熊が割って入った。

「なるほど。グレッグ、ではその結界肉まんとやらを作ってくれ。私と永原もそのジープを確認したい。」

 それだけ言った銀熊先生はマネキンのようにソレイユを抱えて先に奥の院を出た。ボス永原は何故かオニキスの方を見ながら「やれやれ」と言い残し、銀熊の後を追う。

「オニキス、ついでだから外まで歩く練習をしよう。」

 グレッグはそう言うとオニキスの両手をとって促した。

「重心を左側に移動させて、右膝を少し上げて右足を軽く降り出して地面につける。今度は重心を右に移して・・・そうそう。うまいうまい。右、左、右、左・・・。」

 イヨタが先導して歩き、グレッグはオニキスの両手を引きながら後ろ向きで歩く。プリミーは手伝っているつもりなのか、ゆっくりと歩くオニキスの周りをうろちょろしている。この調子ではほら穴を抜ける前にあのジープがそこら中を蹂躙しそうである。




 その頃ほら穴を抜けた先ではソレイユがまだご機嫌斜めだった。

「おかしいデース。私が初めてこの身体に入った時はあんなのなかったデース。それにグレッグとイヨタの魔法は触れれば使い方が分かるデース。オニキスちゃんもおかしいデース。入ってすぐ何歩か歩いてたデース。歩けないフリしてるデース。」

 それを聞いた銀熊と永原は大笑いした。

「主神様、今日は大目に見てあげてください。あれが照れ屋な二人の会話なのです。」

 銀熊がそう言うと、永原もうなづきながら言う。

「そういうこと、そういうこと。しかし主神様、話し方がさっきとずいぶん違うのですね。」

「この姿の時は冒険者ソレイユデース。ソレイユと呼んでくだサーイ。この話し方はこの身体に最初から付いてたデース。」

 ソレイユはそう言ってくるりと回ってポーズをとった。

「しかし、あの二人の魔法適性はすごいな。」

 銀熊が感心したようにそう言うと、

「だから言ったろ。早くあの二人を連れて行った方が主神様の助けになるって。」

 永原は自慢げにそう返した。

「そうデース。悪い奴らを見つけたのもグレッグとイヨタが作ったツバメさんたちデース。」

 腰に手を当て誇らしげにソレイユが言った。

「アルファでもあの二人でなんとかできればいいんだがねえ。」

 永原はいつもの癖で、イヨタがデフォルトで付けたジャケットの胸ポケットに手を入れる。それを見た銀熊が笑いながら言う。

「ここには葉巻はないぞ、永原。」

 するとポケットから出した手が無沙汰になった永原は、その手を顎にやりながらこう言った。

「ついな。あまりに馴染みがいいんで、いつもの癖が出た。タバコの葉、栽培できないもんかな。」

 そんなことをすれば、いよいよアルファに戻れなくなるぞと言いかけて銀熊はそれを飲み込む。実際自分がそうなのだから言うまでもない。今のアルファ地球は、いや、人類は来るところまで来てしまっている。残り少ない資源を力で奪い合う二十二世紀は、残り少ない魔力分子を独占するためにドルイド狩りをしていた時代よりも悪質だ。

「栽培ねー、いいかもしれんな。」

 銀熊はそう言って、グレッグの話に出ていたトカゲを保護する結界を探した。無論魔力探知で探す。日が沈んでしまったので目視で探すのは無理だ。

「あー。あったあった。」

「ところでお前が作ったあの街は大丈夫なのか?」

 いつの間にか隣に立っていた永原が問いかける。

「見つけたところで入れないし、入ったところで地上部分はダミーだし、大丈夫だろう。」

 銀熊のその返事に被せるようにプリミーを抱いたイヨタが割り込んでくる。

「銀熊先生、あれはダミーなんですか?」

「入れたのかい?」

 イヨタのそのセリフに今度は銀熊が驚く。そこでイヨタがサハベの街でのことをかいつまんで報告する。あの街の人々が話せないのは人脳ベースAIの実験で脳に損傷を受け、自分が何者なのか分からないせいではないかとグレッグとソレイユが気にかけていた点についてもイヨタはきちんと報告した。すると銀熊ではなく永原が口を開いた。

「その頃はトクラはまだ黒猫でも銀熊でもなくて、そうだなー、言ってみれば幽霊のような状態で、被験者たちを救えるような状態ではなかったのさ。」

 言い終わって永原がちらりと銀熊を見ると、続きを銀熊が説明する。

「サハベの街の地上部分にいるのは私が作ったダミーなんだよ。私が入っていない時の黒猫のような感じだ。実はあのジープよりも前からこの大陸への侵入者はいたんだ。主神様が降臨されるよりも前からね。」

「それは初耳デース。聞いてないよーデース。」

 ソレイユは頬を膨らませて不満をアピールする。

「すいません。まずはこの世界に慣れていただいてからなどと思っているうちに、うやむやになってしまいました。」

 銀熊はそう言って頭を下げる。深刻ではないが、なんとなく気まずい空気になりかけたところにハイテンションなグレッグの声が届く。

「結界肉まん、できましたよー。」

 皆で声の方を向くとグレッグとオニキスは結界の中に既に座っていた。いつもより大きく作った結界肉まんの最後尾の方に二人並んで。

「今日はご機嫌だな。」

 イヨタが諦めたようにそうぼやくと、ソレイユは頬を膨らませたまま言った。

「私はご機嫌斜めデース。」




 前回と同じく上空からライトを探し、見つけたら少しずつ高度を下げて監視するという方法をとった。向こうも向こうで規則的な蛇行を繰り返しながら走る。

「あれはエコー使ってるのか?」

「俺もそう思います。」

 永原の問いにグレッグが答えた。それはそうだ。そうした推察の仕方は全て永原に仕込まれたのだから。

「向こうは航空支援やドローンを持ってないんだな?」

「はい、魔法によるものも内燃機関を持つものも確認されていません。」

 永原がこうした確認をするときは攻勢に出る時だ。彼は調査や根回しを単独でやる。部下である実行部隊と敵に回るかも知りない勢力が直接接触するのを避けるためだ。グレッグとイヨタもアルファ地球にどのくらいの仲間がいるのか全く知らない。全容を知るのは永原のみだ。

「彼らが調査活動している間に、お前たちが中継基地と呼んでいるものを破壊したいんだが・・・オニキス、どう思う?」

 永原はいつも通り最初にオニキスに意見を求めた。

「リスクは未知数ですが、それに対する彼らの反応は良いデータになると思います。」

 オニキスは例の平坦でゆったりとした口調で答えた。

「主神様、壊してもよろしいですかな?」

 そう永原に問われたソレイユは元気よく答える。

「主神様だめデース。ソレイユデース。私がぶっこわしマース!」

「グレッグとイヨタには確認しないのかい?」

 銀熊がそう気を使うと永原はぴしゃりと答えた。

「こいつらは壊した時の連中の反応が見たくてドローンを飛ばしたんだ。だろ?」

「はい。」

 グレッグは我が意を得たりと勢い込んで返事をした。

「ソレイユ、中継基地の場所分かる?」

 イヨタが尋ねる。

「あっち、あの大きな岩デース。みんなで住んでる岩より少しだけ小さいやつの根っこのところデース。」

 ソレイユがイヨタの肩に手をかけて指をさした。

「なるほど。隠し場所はお互い似たような所ですな。」

 イヨタはそう言うと続けてグレッグに確認をとる。

「グレッグ、隠蔽は大丈夫だよな?」

「ああ、でもソナーを浴びないように高度はこのままで行ってくれ。そしてボスと俺をその岩の頂上で下ろしてくれ。奴らの反応を確認したい。」

 グレッグはそう答えるとソレイユをつついて彼の方を向かせた。

「ソレイユ、ぶっこわす時は手じゃなくて足でキックするんだよ。ソレイユの身体も俺たちと同じように作ってるから、一応骨とか筋肉とか腱とかあるからね。手でやると指の骨が折れたりするよ。あっ、防御魔法で大丈夫か。」

 久しぶりにグレッグに心配されたソレイユは機嫌よく答える。

「大丈夫デース。粉々に粉砕しマース。」

 こうして結界肉まんはジープの集団の後方を迂回するように飛行して目的の場所を目指した。果たしてソレイユの行った通り、彼らが暮らすテーブルマウンテンの半分ほどの大きさの岩山が見えてきた。頂上も同じように平坦になっており、その端の方に着陸する。

「ボスと俺はここから連中を監視するから、イヨタ、後は頼む。ソレイユ、キックだよ、キック。」

 グレッグにそう言われたソレイユはぎこちないキックをしてみせる。そうして結界肉まんは再度浮上し、麓の中継器のある場所へと向かった。




「しかしライトは分かるが、距離があってよく分からんな。」

 永原はスーツ姿で腹ばいになりながらボヤいた。

「暗視スコープとかあればよかったんですけどね。」

 グレッグ自身前回の遭遇の時にそう思っていた。

「思ったなら作っといてくれよ。」

「ボス、それは無茶ですよ。魔法があっても仕組みが分からないと再現できないですよ。」

「まあ、それもそうか。」

 だがグレッグはこの会話の間に思い付いたものを形にしてみた。小さな水キューブを大きさを変えて三つ作り、レンズ状にする。次に魔力粘土で入れ込み式の筒を作って、小さな方の筒の両端と大きな方の端に一番大きなレンズを付けて、原始的な望遠鏡を作った。そうやってジープのライトの方を覗いてみる。

「意外に見えますね。」

 そう言ってグレッグは永原に望遠鏡を渡した。

「おいおい、何でもありだな。」

 そう言いながら筒を出し入れして焦点を合わせた永原は急に身をこわばらせ無言になった。グレッグは辛抱強くボスの殺気が消えるのを待つ。最近なかなか触れることのなかった険しい空気だ。

 なかなかボスの殺気が消えないので、グレッグは遠くに明滅するジープのライトに視線を移した。が、唐突にその明かりが消える。

「ソレイユちゃんは無事キックをマスターしたようだな。」

 そのセリフと同時にボスの殺気は霧散した。グレッグは望遠鏡を受け取りながら率直に尋ねる。

「ボス、久々の殺気でしたが。」

「ああ、その昔仕留められなかった標的がいたからな。顔はぼんやりとして分からなかったが、こんな荒野で白スーツだ。まず間違いない。」

「白スーツ・・・ですか。」

 不思議とそこから先を聞こうとは思わない。知る必要があればボスは言ってくれる。今ボスの頭の中はその白スーツがベータ世界にいる理由を猛烈なスピードで推論しているはずだ。グレッグにできることは、より瑣末で具体的な問題をつぶしていくことだ。

「ボス、迎えが来たので現場を確認しましょう。」

「うむ。」

 そうして二人は迎えに来た結界肉まんに乗り込んだ。開口一番グレッグがイヨタに問う。

「イヨタ、回収してきてくれたか。」

「当然。」

 そう言ってイヨタがソレイユの座っている方を指差す。グレッグはてっきりプリミーを抱いているものと思っていたが、ソレイユが抱いてたのは直径が二十センチ、高さが一メートルほどの円柱だった。何かの送信機のようだ。

「まだ作動してるんじゃないのか?作動してたらこっちの位置がバレるぞ。」

 グレッグの眉間にシワが寄る。

「台座も引っこ抜いて持ってきたし、ケーブルやバッテリーの類もソーラーパネルみたいなのもなかったぞ。」

 イヨタがそう答えると、グレッグの眉間のシワはより深くなった。

「念には念をってやつだ。ソレイユ、それちょっと貸して。」

 グレッグはソレイユからその円柱を受け取ると、あぐらをかいて足で下部を抑え、上の方を手でひねった。案の定上半分を下部にねじ込む構造になっており、外すと下部には発電機らしきものとそこから上部へと伸びるケーブルが収められている。グレッグは上部を床に置き、ケーブルのコネクタを慎重に外した。

「これで送信はできないはずだ。上にも何かバッテリーが付いているかもしれないが、カウンターや時計を維持するための空気電池くらいだろう。だが念のためにバラしたまま運ぼう。」

 そう言ってグレッグは上部と下部を別々に両腕に抱えた。

「すまん。迂闊だった。」

 そう言ってイヨタが謝ると、グレッグは笑顔で返す。

「いやあ、ソレイユのキックで壊れただろうさ。念のためだ。」

「そうデース。キックで壊れたデース。」

 ソレイユがそう言って座ったままキックの真似をするとすってんころりんと後ろに転がった。そのソレイユの顔をプリミーがペロリとひと舐めする。今度はそのプリミーをオニキスが抱き上げて言う。

「通電音も聞こえません。大丈夫です。」

「そうデース。ツウデンオンないデース。」

 ソレイユがオニキスに負けじと言うので銀熊がからかう。

「主神様、分かっておっしゃってるんですか?」

「それだめデース。ソレイユデース。オニキスちゃんだけかっこいいのは悔しいデース。」

 ソレイユは身を起こしながら訴える。

「分かった分かった。イヨタ、早く現場に行こう。」

 こうして一行は現場に向かったが、そこには人影もジープもなかった。落ちていたのは小型の受信機のみ。受信機にはそれぞれアカウント名らしき文字の羅列や車体ナンバーのような数字がプリントされていた。

「ダミーか?」

 イヨタが問う。

「いや、アバターだったってことだろう。連中はまた来るってことさ。」

 グレッグはそう答えながらちらりと永原の方を見る。ボスも銀熊先生も何か知っている。その証拠に二人は黙ったままだ。知る必要があれば、そのうち何か言ってくれるだろう。

「それより腹減ったなあ。銀熊先生、食材がもうないんですけど。」

 グレッグは敢えて無頓着にそう言った。彼らは魔力分子さえ呼吸で取り込めば、飲み食いする必要はない。だが食べることは次の行動へのきっかけをくれる。ソレイユにしてもタンポポ茶を飲み、彼らと食事をすることでより快活になった。

「そうだったね。よく今日までもったね。明日はみんなで狩りに行こう。」









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