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魔王の角(Ⅳ)

 翌日、また呼ばれた。魔王を何だと思っているのか。いや、構わないんだが。


「そして、完成したのがこの『真・魔王の角』っす!」


「おおー」


「凄い力を・・・感じます」


 姿も形もなにも変わらない。だが、心なしか輝いて見える。


「このあふれ出る魔力!どんなもんすか!」


 そして、確かに『真・魔王の角』からは以前の俺の片角分の魔力が感じられた。こうしてみると、今までどれだけの力が失われていたかがわかる。


「見事としか言いようがないな」


「そうっすよね?そうっすよね!?うちに任せて正解だったすよね!」


「あ、ああ」


「それで、もうこの『真・魔王の角』は、返してもらえるんですね?」


 そんなことはどうでもいいとばかりにヒメがシャルに尋ねる。


「はいっす。なかなか興味深い構成で他にもいろいろと応用できそうなんすよね。今は有効な活用先を模索中っす!」


「そうですか。・・・・ほっ」


 『真・魔王の角』を抱えてヒメは安堵のため息を漏らす。


「まあ、研究が行き詰ったらまた貸してくださいっす」


「いやです!もう渡しません!」


「そんなこと言わずに~」


「いや!」


 子供のように角を抱いて隠すヒメ。可愛い。






「それでっすけど・・・」


「ん?」


「研究の過程で『魔王の角・レプリカ』が出来たんす・・・」


「はあ」


 シャルはもう一つ、似たようなものを持っていた。


 レプリカって・・・・。


「うちが貰ってもいいっすか?」


「別にいいんじゃないか?なあ、ヒメ?」


「私は本物があればそれでいいです。オーマも構わないなら、シャルがもらっていいんじゃないですか?」


「十個ほどできたんすけど」


「はあ!?」


 そして出てくる出てくる『魔王の角・レプリカ』。計十個。


 そんなぽんぽん作れるものなのか?


「いや~所有権主張されたら、いくつか隠し持っとこうと思ったすけど、許可が出て良かったっす。うひ、うひひ」


「・・・・・・・・」


 黒い黒いぞ。シャル


「あ~何に使うっすかね~」


「・・・・・・」


 シャルはもしかするとマッドなあれなのだろうか。あまり触れないでおこう。





「それはともかく、今、魔力をこめているの、感じるっすか?」


 突然シャルが正気に戻って『魔王の角・レプリカ』に魔力をこめながら聞いてくる。


「ん・・・・いや、感じないな」


 シャルの手から魔力が発せられているのはわかるが、角レプリカからはそれが伝えられてはいない。


「そうっすか」


「それがどうかしたのか?」


「いや、何でもないっす。ちょっと残念っすけど。流石に劣化は免れないっすね~」


「?」


「シャル・・・・?」


「な、ほんとに何でもないっすよ!・・・・何でも・・・・」


「??」


















「ねえ、シャル?」


 オーマが帰って、就寝時間。無理を言ってシャルと一緒に寝てもらうことにした。


「何すか?」


 あれだけ研究を楽しみにしていたのに、来てくれたということは私がする話に心当たりがあったからだろう。


「オーマのこと好きになっちゃった?」


「いいえっす」


「本当に?」


「本当っす」


 だからこの反応は予想できた。


 だからそれ以上は追及せずに、シャルを抱きしめた。


「姫様?」


「オーマ、可愛いよね?」


「いえ、それは・・・さあ・・・・?」


「可愛いの!」


「そうっすか・・・」


「それでね、格好いいの」


「そうっすか・・・」


「それで、とっても優しい」


「そうっ・・・すね、想像していたよりはずっと」


 その言葉には、間違いなくシャルも同意していた。


「うん、だから、好きになったっていいんだよ?」


「なってないっす」


「ふふ、シャルは素直じゃないな~~~」


 シャルを抱きしめたまますりすりと頬ずりする。


「ちょっ!やめるっす~~~!」




「シャルにね、お願いがあるの」


「・・・・・・・はえ?」


「お願い・・・・聞いてくれる?」


「・・・・?もちろんっすけど?」


「シャルは良い子だね~」


「それで、何すか?」


 シャルはお願いの続きを促してくる。私の真剣さを感じ取ってしまったのか。


 冗談半分にお願いするつもりだったのだが、そうもいかないらしい。


「うん、もし私が―――――」


「・・・・・へ?」


 その後、続く私の言葉をシャルは驚きと共に私を見つめ、


「・・・・・いやっす」


 断った。


「だめ?」


「だめっすね、論外っす」


「そこまで?」


「そこまでっすよ。今の話、オーマ様にはしたんすか?」


「してない」


 出来るはずがない。


「それに確証もないから」


「・・・・・・オーマ様は優しいっす」


「・・・?」


「姫様も優しいっす」


「そうかな?」


「そうっす。だからそんなことになったら、うちが絶対に止めるっす」


「そう・・・・。ふふ、頼もしいなあ」


「仲間っすからね。・・・・・ほんとに、オーマ様には言わないんすか?」


「うん」


「そっすか」


「うん」












 朝、何故かシャルは泣いていた。


「ヒメ様の悪癖・・・忘れてたっす」




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