3日目
3日目、オレが学んだ日
(画面上にドアップで映る少年の顔)
「あっ、ちょっと待って!」(男性が少年をカメラから離す姿が入る)
『まったく、目を離したらすぐこれだ。ほら、こっち来て、ここで待ってて』(男性がカメラの位置を直し、少年の手を引きながらカメラに映る位置に移動する)
『3日目です。あの赤ちゃんがこんなに大きくなりました。やっぱり、成長速度が一定時期までは速いみたいです』(呆れたような笑みを浮かべながら、少年の頭を優しく撫でながらカメラに向かって話す)
『今は4~7歳くらいだと思う。今は勉強を教えて、知力と学力、知識をつけさせてます。ゲームとか、読み聞かせもしてます』
『国は読書もゲームも不必要な娯楽だって言うけど、必要に決まってる。選択肢を増やすためには必要不可欠なものだよ』
『……この子は何でも吸収して、学んで、成長してる。誰よりも賢くて良い子だ』(少年は男性の服を楽しそうに引っ張っている)
『……今日は読み聞かせをしようかな』(男性のその言葉の直後、男性と少年を呼んでいる誰かの声)
『……呼んでるね。行こっか』(男性は声のした方を見る。少年は男性の言葉に嬉しそうに笑う)
そこで動画を止めてしまった。
花宮一、と少年を呼ぶ声。2日目の記録にも入っていた声。聞いた覚えがある声だった。
声の主は、今回はカメラの近くにいたらしく、声がはっきりと聞こえた。有り得ないはずの声。その日、そこにいるはずのない人の声だった。
これは『オレ』の声だ。
それは間違いようもなく、『オレ』の声だった。
有り得ない。有り得るはずがない。似ているだけだ。
そう思いながら、震える指で再生ボタンを押す。
再生された3日目の動画。たった数秒だった。
そこには少年に服を引っ張られながら笑う花宮一と同じく、服を少年に引っ張られている画面端で見切れ、手しか見えない(手だけならば男のようだった)誰かの姿が映っていた。
その日、その場所にいないはずの人間の声。でも、どうしても、その声にオレは覚えがあったのだ。




