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#95 三つ子星の優しい王女と愚かな影姫 13

 平和だねえ。


「多分船長だけですけどね」


 俺たちは今、惑星ゴールの宇宙港にいる。


 あの後イザベラ、エクレアは腕時計を持ち帰り、王宮で相談した。

 一見して価値がわからないもので吉と出るか凶と出るかはわからず、意見は真っ二つに割れたが、ばあ様の一言で腕時計に命運を賭けてみることにしたようだ。


 その後、現在皇帝の御所がある首都ゴールで行われる皇位継承試練の会場に連れていけと依頼がきた。


 王族が乗るんだから自家用の宇宙船があるのではないか? 

 もしくは定期便でいいのではと思うのだが、これは遠回しな追加報酬なのだろう。

 カグヤに言わせると相場の10倍の額が提示されたそうだ。


 大勢乗るなら対応できないと断ろうかとも思ったが、エクレア、イザベラの二人に管理頭脳が6体ということなので引き受けた。

 王族が移動するのにそんなもんでいいのかとも思うが、王女一人に影姫兼侍女が一人ついているだけでそれなりの格になるのだという。

 働かなくても生きていける、自由なこの世界で人間の使用人は稀少であり、王女に一人つくだけでも贅沢というものらしい。

 とはいえ、イザベラは教育係も兼ねている気もする。


 まあそんなこんなで惑星パールを出航。

 ポーラと仲良くしてくれているようで道中3人で色々な施設を使ってくれたので、カグヤが喜んでいた。



 そして現在、3人は地上に降りている。

 ポーラは部外者なのだがせっかくなのでおいでと言うエクレアに、付き人が多い分には問題ないというイザベラに引っ張って行かれた。

 誘われても行く気がなかった俺だが、誘われなかったので心置きなく留守番と言うことだ。

 これを平和と言わずになんと言おう。


「そこは誘われなかったことをさみしく思うとか、負け惜しむべきでないでしょうか?」


 そんなことを思う人間なら、いい歳こいて引きこもりません!




 それはさておき、あんな腕時計が価値があるものかね?


「あれだけ自信満々に言っておいて、急に弱気にならないでくれます?」


 ハッタリは自信満々に言わないと意味がないだろう?


「ハッタリとは認めるんですね」


 そりゃあ、まあ……ただの量産品の腕時計だしな。


「勝算はあると思いますよ。ドラゴンを倒さない惑星は早い段階で管理頭脳や永久機関を手に入れて便利になりますので、こういった時計単一の機能しかないものは早々に失われます」

 

 まあ今の日本でも携帯の登場以降、必要ないかなと言う意見が増えてきた。

 しかし技術と言うのはそう簡単になくなるもんかな?


「日本だって例えばテレビが昔はブラウン管だったでしょう? それが液晶に代わりました。今は他の国で使われているから技術自体はあるでしょうが、いずれは作れなくなります」


 いや作れなくなっても、技術自体はあったわけだし、その設計もあるのだから、管理頭脳だと作ろうと思ったら復刻できるのじゃないかなと。


「そのためにはそれを作る工場をつくるはめになります。その施設を作るのは昔の設備が必要となります。それを作るには昔の規格の部品が必要で……。とまあ非常に手間暇がかかる作業となります」


 いやそこまでしなくても今の技術で似たようなものをってのは?


「そうすると昔の規格を今の規格で作ることになります。そうしたら形は再現できますが、中身は別物ということになります」


 機械式の時計で言うと歯車もゼンマイも再現できないと?


「一番の問題は精度が再現できないことだと思います。ミクロン単位での歯車を作るのは今では無理ですから」


 そういや宇宙船のサイズも大雑把だったし、そういった人の手の細かすぎる技術は管理頭脳の不得手なところなのかな。


 じゃあ勝てるのかね?


「そこはわかりません。価値は認めてもらえるとは思います。ただ値段が付くかは別問題ですから」


 そうなのか?


「現在、地上ではそれで揉めています。ロストテクノロジーということで管理頭脳が鑑定不能を出しました」


 そうなると判定は誰が決めるんだ?


「まあ皇帝でしょうね。気楽に見ているつもりがいきなりジャッジをすることになって悩んでます」


 ちなみに他の国の代物はどうなってるんだ?


「今のところ惑星シールの代表者が高額ですね。ゴールの代表者の水晶細工に対し、鎧が評価されています」


 ちなみに黒真珠だった場合はどうなってた?


「かろうじて2位です」


 なら議論が起きてるだけましか。


「そうかもしれません……ああ、惑星シールの代表が腕時計を売ってくれと言い出しましたよ」


 何でだよ?


「歯車の動きがとても美しい。ずっと見ていたいと言っています」


 ああ、それは少しわかる。

 俺も初めて機械式の腕時計買ったときは文字盤より裏をずっと見てたことがあった。


「惑星シールではかつてのアナログ製品が昨今アンティークとして重宝されておりまして、この王子もその一人だったようです」


 ……じゃあ決まりか?


「はい、今、皇帝が決断しました。エクレア様が次の皇帝に決定しました」


 そうかい。


「浮かない顔ですね。この前エクレア様に提案した方法を使われる件での懸念ですか?」


 いや、そっちはどうでもいいんだが。


「では?」


 一万円弱の腕時計で皇帝になれるもんなんだなあと。

 仕事用だから安物でいいやと買ったものだったんだが、こんなことなら一桁上の時計を買うべきだったなぁと。


「……地球での値段は私たちの秘密にしておきましょう。さすがに不憫ですから」




とうとう100話です。

気楽な気持ちで始めたのでどこまで続くかなと思っていたのですが、3ヶ月以上ほぼ毎日更新ができるとは予想外でした。

これも応援してくださっている皆様のおかげです。

本当にありがとうございます。

レビューや感想、ブックマークに評価は本当にやる気をいただいております。

あと誤字報告をしてくださっている方、本当に助かっております。

特に常連の方には頭が上がりません。

日間文芸・SF・その他異世界転生/転移ランキングで日刊、週刊、月間と1位になったことも励みとなりました。

このペースがどこまで続くかわかりませんが今後も応援してくださると嬉しいです。


後ほど今後の予定を活動報告にあげておきます。

興味のある方はそちらもご覧ください。

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― 新着の感想 ―
[一言] 買った時はまさか皇帝の切符になるとは思わなんだしな(;^ω^) 船長が医師なら相応に高価な時計だった可能性もあったかも。
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