#94 三つ子星の優しい王女と愚かな影姫 12
『ごめんなさい!』
ポーラに連れられてイザベラが帰ってきて、イザベラとエクレアが同時に頭を下げて謝る。
どちらも自分が悪かった、言いすぎたと謝りあう。
気がすむまでやれとは言ってやりたいところだが、話が進まない。
そろそろ仲直りしました、仲良し姉妹に戻ります、にしないかな?
「は~い、ドラパパ」
「あ、すみません。みっともないところを」
エクレアは能天気に、イザベラは顔を真っ赤にして申し訳なさそうに同意してくれる。
その様子にポーラはホッとした顔を浮かべている。
よし、それじゃあ話を整理しよう。
先ほどの話し合いでエクレアは皇帝を目指すということになった。
「ちょっと、エクレア!」
俺の言葉にイザベラが慌てる。
「もういいです、お祖母様に私が謝りますから」
「大丈夫だよ、なんとかなるよ」
エクレアは笑って言う。
この子の場合、本当にわかっているのかと不安になる笑顔だな。
「でも……」
「そのかわり、イザベラも手伝ってよ。あたしバカだから何にもできないからね」
エクレアが言うと謙遜とかなしにそんな感じがするのが怖い。
「……それはもちろん、手伝いますけど……」
先ほどそれで揉めたから引っかかるのだろう。
「いいんですか?」
「どうせ誰かでなきゃならないし、ドラパパがいい手があるっていうけど、そもそも皇帝になれる保証もないし」
おっと、ここからは俺が話そう。
そもそも皇帝レースで勝てるかなんて保証がないからな。
「……まあそうですけど」
宝石は微妙そうだしな。
「……申し訳ないですけど、……少し弱い気がします」
イザベラが正直に言う。
カグヤとも話していたんだが、こういったものはどうだろうかと思って用意した。
「何これ? ブレスレット?」
白ウサギが持ってきたものを見てエクレアが手に取って感想を言う。
わからないのはエクレアだからだろうかと思ったが、イザベラも首をかしげてるのでこの国にはないのだろうか?
「……これって時計でしょうか? 文字盤がマイタンの大聖堂にある時計台のと似ていますけど。……でもこんなに小さいですけど」
ポーラは時計ということはわかってくれたが、腕時計ということはわからないらしい。
「時計? これが?」
「ああ、いわれてみたら博物館でアンティークのものを見たことがあります」
やっぱそんなレベルなんだろう。
そもそもスーツの左手には端末が備え付けられており、それが時計どころかスマホの機能があるので腕時計なんて過去の遺物なんだろうと。
「……ねえ、ドラパパ、これ動かないよ」
うん、ガラス板をいくらタップしても無駄だぞ。
それはそのまま見て時間を知るものだ。
「……通信はどうやるの?」
時計の機能のみです。
「不便じゃん」
まあ地球でも携帯、スマホの登場で若者の腕時計離れが進んでいる。
それがこの星では腕時計そのものがすでに失われたのだろう。
逆を返せば昔はこれが普通だったんだよ。
「年代的には新しそうなのでアンティークとは言えませんが、……物としては確かに珍しくて、一見価値がわからないです」
そうだな、今まで使っていたものが壊れたので、今年買ったものだ。
技術的には最新のものではないがな。
「でもキャプテン、これバッテリー切れてませんか? 針が動いてないですよ」
「針ってこの棒?」
「そうです。これで時間を見るんですけど」
「アナログってやつですね、歴史の授業で見たことがあります」
「え~、あったっけ?」
ああ、将来的には日本でもこんな光景になるんだろうかなぁ?
腕時計が珍しがられる時代に。
まあそれはそうとその腕時計は壊れてないから。
振ってみな。
「こう?」
エクレアが時計をもって手を振る。
そんな感じだ。
それで文字盤見てみな。
「おお、動き出した!」
「本当ですね」
「振ることでスリープモードの解除スイッチが入るのでしょうか? それとも振動発電でしょうか?」
そんなもんないよ。
それには残念ながら電池も電子部品も入ってないからな。
電気も必要ない。
「――へ?」
珍しく少女3人の声がハモる。
「またまた~、ドラパパ、あたしバカだけどそれくらいは知ってるよ。世の中電気がないと何もできないんだよ。だから永久機関ができたって」
おお、本当にバカな子だと思ってたけど、それはさすがに常識の範囲内なのか。
でも本当だぞ。
「……じゃあどうやって動いてるんです?」
俺の国では機械式って言ってな、簡単に言うとゼンマイと歯車で動いてる。
「ゼンマイ? ハグルマ?」
文字盤の裏側見てみな。
「なんか綺麗な丸いのが動いてる」
ただ腕につけて歩いているだけで、そこにあるゼンマイがまかれて、歯車が動いて、連動して針が動くんだよ。
「なんで?」
昔なんか仕組みを聞いたがよく覚えてない。
「なんかよくわからないけどすごいの?」
すごいんじゃないかな?
俺の星でも、もう趣味の領域に片足を突っ込んだ代物だが、まだ大量生産されていてそれほど高価なものでもない。
ただこの星ではかなり珍しいものではないかと思っているんだが?
「えっと、……そうですね」
イザベラが考え込む。
さすがにその知識はないのだろう。
そこにカグヤが情報をくれる。
「確認したところ、惑星シールは技術国家でこういった歯車を使った機械技術もかつてはあったようですね。国の文化財にはもう動かなくなった壁掛けタイプの時計があります。ネジでゼンマイを回すタイプです」
ああ、爺さんの家にあったな。
振り子が付いてるやつか。
「そうです。当時の技術が失われており、修復も不可能ですが、歴史的遺産とされています」
そうなのか、爺さん死んだときに捨てたよなぁ。
時代がたつと何に価値が付くかわからんよな。
さて聞いた通り、俺的には安物で、このまま無くなっても惜しくないものだが、この星では失われた技術らしい。
それもこのサイズだと価値が付くかもしれない。
……さあどうする?
感想、誤字報告、ブックマーク、評価してくださった方ありがとうございます。
次話で番外編等を含めたら100話です。
とはいっても残念ながら記念に何かすることもできません。
いつも通り更新します。




