●とある写真家の新天地2
皆様、お久しぶりです。
今回の更新から、また投稿を再開したいと思います。今のところ隔月での投稿を予定しております。
一話一話の文字数が少なく、加えて、不定期の更新となりますので、非常にゆっくりとしたペースで話が進行していくことになりますが、温かく見守っていただけますと幸いです。
他の作品共々、よろしくお願いします。
島に移住して来たまではいいが、やることも特になく、島をぶらつく日々を送っていた。
私を誘った彼女は、島の役場支所の雑務をしている。
大学卒業と同時に公務員の道を選んだ。ほどなくして、故郷の街の役所で働くことになった。自分の役目をもらえ、順風満帆な人生を送る彼女を見ていると劣等感を抱きそうになる。
ここ数日は、彼女との時間をできるだけ少なくするため、自室として用意された部屋に籠り、その日撮った写真や大石さんの写真集に目を通していた。
「入っていいかな?」
不意に部屋の外から聞こえる彼女の声。
「ご飯?」
「いや、ちょっと話をしたくて」
用事があるとなると顔を合わせないわけにはいかない。
「いいよ」と返事をする。なるべく平然を装って。
「お邪魔します」と少し緊張気味に部屋に入ってくる。
「マユってさ、写真撮るの好き?」
「えっ?」
「あっ、いや、別に深い意味はないんだよ。ただ、ちょっと訊きたかっただけなんだけど」
少し焦ったような反応を見せる彼女に気を遣わせてしまったと思い、何もなかったように普通に答えてあげる。
「もちろん。じゃなきゃ、こんなことしてないよ」
「そうよね」
「公務員は楽しい?」
「…楽しいことはないよ。堅っ苦しい仕事だもん」
「ん~」と少し考え込んだ後、苦笑いしながら答える。
「そっか」
その後、沈黙が流れる。何か喋らなければと話を戻す。
「話って、それのこと?」
「いや、頼みたいことがあってね」と言いながら写真を取り出す。
それは古い写真。若い男女が写るが、それがどれくらい前のものなのか、見当がつかない。
「何これ?」
「これが私のおばあちゃんなんだけどね。おばあちゃんを撮ってもらえないかな…ってお願いしに来たの」
「このおばあちゃんを?」
私がそう聞き返すと、ひとつひとつ説明しながら、その経緯を話し始めた。
「最近、終活を始めてね。昔の写真とか整理してたんだけど、この写真、他界したおじいちゃんと一緒に写ったのを見つけてね」
「どうやら、その場所が、この島らしいんだけど、もう一度その場所で写真を撮りたいって言い出したのよ…」
「そうなんだ…」
「私が撮ってあげてもいいけど、せっかくならプロにお願いしたいって希望出してきたのよ。知り合いに居るからお願いしてみようかって提案したら、その人にお願いするって決めちゃってね」
思わぬ、お願いに少し戸惑った。
こうして、特定の誰かにお願いされるのは初めて。知人の親族ともなれば、責任重大。
「無理にとは言わないからね。急ぐような事でもないから返事はいつでもいいよ」
と彼女は言ってくれた。
正直言うと、乗り気ではないのだが。
これを断ってもいいものなのか。
心に引っ掛かるものがあった。




