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●とある写真家の新天地1
私は海を眺めている。
フォトグラファーサイトに迎え入れられてから、幾らかの時間が経った。
あれから、合同のワークショップを開催したり、写真を商用向けに販売している業者に作品を提供したりしてきた。
新たな環境に慣れ始めた私が、友人に誘われたのは二週間前こと。
仕事で一年ほど島に移住することになったらしく、話し相手になってほしいと頼まれた。
最初は断っていたのだが、費用を負担する上に1カ月だけで良いからとせがまれ、しぶしぶ引き受けることにした。
大石さんに相談すると、
「いいじゃないか。何か掴めたらいいね」と私を送り出した。
自分のスタイルを確立できない私にぴったりだとも言われた。
家族やバイト先にも同じ様なことを言われたことが、引き受けた理由のひとつだ。
新天地で何かを掴めるだろうか。モヤモヤしたものを抱えながら、島に降り立った。




