◆ひとりぼっちな写真部の日常17
数日後、やっと完治して学校に行けるようになった。
テストはなんとか補修を免れた。
一学期の終業式だけを残す、夏休み前の休日。石田さんを誘って見晴らしの良い山の展望台に行った。アドバイスをしたり、されたりしながら、石田さんとの距離を縮めてゆく。
駅からバスに乗って山の中腹まで行き、そこから遊歩道を二十分ほど歩くと展望台がある。
バスが停まる山の中腹は温泉街があり、展望台までの遊歩道は軽装でも大丈夫なほど整備が行き届いている。
夜景や朝日の撮影スポットとして有名で、特に夜はカップルたちで賑わう場所だ。
よく晴れているが、遠くにある海や海岸線の建物は霞んでいる。山の裾野には森があり、そこから海に向かうほど街は発展している。
これといった名所もなければ、特徴的な建物もない。何の変哲もない街並みが広がるだけだ。強いて挙げるとするならば、街を三つに分けるように流れる一級河川と、それに架けられているいくつもの橋だろう。
「ジオラマモードって面白いですよね」
眼下に広がる街の風景を撮りながら、石田さんが言う。
「そうだよね〜」
ジオラマモードとは、画角の上半分を意図的にぼかし、簡単に風景をジオラマ模型のように撮影できる機能だ。
「ハルミさんは、こういう景色をどう写すの?」
彼女が質問する。
「私はずっと島に居たし、猫ばかり撮っていたから、どう撮って良いか分からなくて…」
正直なところ、いざ島以外で写真を撮るとなると何をどう撮ればいいのか分からなかった。
「今日は空が真っ青だし、遠くも霞んでいるから、街をメインに写したらどうかな?」
実際に写真を見せてもらいながら、的確なアドバイスをもらう。
「そっか。うん、やってみる」
見よう見まねで、私は空より街を写すようにした。
「どうかな?」
「うん、いいと思うよ」
「特徴的な目標物がないから、構図が難しいよね」
「確かに難しいね」
「でも、空はいいよね~。時間によっても季節によっても表情が変わるじゃない?島にいた時は毎日のように空を見上げてたな~」
「私はね。生まれも育ちも山奥だったから海はないし、山間だったから空もそんなに見えなかったの」
それを聞いて、真っ先にこの言葉が思い付いた。
「やっぱり、私たち正反対だ」
「確かに……」
私はおかしくなって笑う。彼女もくすっと笑う。
正反対の部分が多いけど、似ている部分もあるものだなと思った。
そんな話をしながら写真を撮り続けた。
「よし、撮れた」
彼女は一段落したようだ。
「甲子園の出品作品?」
「うん」
「私は別の写真かな…」
私は満足いく写真が撮れなかった。
「応募締め切りは来週だよね。写真に添えるメッセージも考えないとね」
「そうだね」
写真に添える一言も作品の一部。気合いを入れて考えなければならない。
「受賞目指して頑張ろ!」
「うん!」
写真が好きなメンバーは明確には二人しかいない。
より一層頑張らなければと思った。
「甲子園終わったら夏休みだけど、何か予定ある?」
ふと、夏休みに部のメンバーで出掛けようと計画していたことを思い出して、訊いてみた。本当ならもっと早く言うべきなのだが、風邪でダウンしていたこともあり提案が遅れた。
「いや、何もないけど……」
「写真部メンバーでどこか行こうよ!」
「うん!いいよ」
快諾してくれた。
「まぁ、まだみんなに話してないから、決定じゃないけどね。それじゃ、帰ろっか」
「うん」
二人は山を下りて、駅で解散した。
こっちに来る前から友達とどこかへ行く計画など立てたことがなかったため、これでいいのかと不安に思う気持ちと楽しみに思う気持ちが交錯している。
甲子園のことも気がかりで、休暇前だというのに落ち着かない。
そんな状態のまま終業式の日の朝を迎えた。




