◆ひとりぼっちな写真部の日常16
「どう?具合は…?」
心配そうに見つめる新谷さん。
「ごめん…寝ちゃってた…?」
「どこか痛いところはない?苦しいとか…」
寝ていたから運んだのではないようだ。必要以上に心配されている。
「大丈夫…。頭は痛いけど…」
「よかった…真っ赤な顔してしんどそうにしてたから、心配だったのよ」
そういうことだったようだ。
「ごめん…なんか…みんな帰ったよね」
「いや、いいのよ。木次川も残ってくれてる。あんな奴だけど、根は良い奴なのよ」
ブランケットの件がそれを物語っている。
「そう……もう大丈夫だから、帰ってもいいよ」
先輩でもある人に手間を取らせてしまったことを申し訳なく思った。
外は雨が止み、雲間から夕空が覗いていた。その夕空は日没を過ぎ、次第に淡い紫から濃い青へ移り変わってゆく。
「分かったわ。お家に連絡したら、親戚の人を呼んでくれるって」
「ありがとう…」
「お大事にね」
「うん…」
会話をして、彼女は帰っていった。
それから、すぐに迎えが来た。
前もお世話になったあの人だ。
帰宅し、布団に寝かされた。
「寝てなさい。お粥ができたら起こしてあげるから」
「さっき起きたばかりで、眠くないです…」
「そう…じゃあ、テレビでも見る?」
「いや…ラジオでいいです…」
「渋いわね…ラジオなんて…もしかしてハガキ職人だったり?」
そう言いながら、本棚の上にあるラジオのスイッチを入れる。
「そんなことはないですよ…ただ、聴いてるだけです。私の知らない話題とか、音楽が流れてくるから面白くて…」
「確かに独特の世界があるわよね」
「はい」
タイミング良く番組が始まる。
《こんばんは。村上たかしです。夕凪スクエアー七時台、始まりました〜》
一人暮らしを始めてから、よくラジオを聴くようになった。テレビと違い、料理しながらでも楽しめる。
最初はそんな理由だったが、聴き続けているうちに不思議な魅力に取り憑かれたのだ。
《今日のお便りテーマは……ずばり「梅雨」です!!私はねぇ、梅雨が結構好きなんですよ〜。雨の音とか風情が好きなんで、毎日雨が拝めるというのは最高です。皆さんはいかがでしょう?お便りお待ちしておりま〜す!》
「この人の会話面白いんです…」
「そうなんだ〜」
そのやり取りをしてから、一切会話をしなかった。ラジオがあると自然と無言になる。
それから数十分経って、彼女が口を開いた。
「ハルちゃん…寝てる?」
あだ名で呼ばれるなんて初めてだ。
「いえ、寝てませんよ…というか…ハルちゃんって…」
「ハルちゃんのほうが呼びやすいから。駄目?」
「良いですよ…」
息絶え絶えにそう答えると、心配そうに私のところへ来た。
「大丈夫?また熱が上がってるかも…タオル持ってくるね」
額のタオルを取り、手を当てる。彼女の手との温度差で熱が高いことが分かる。
「苦しいとか、気持ち悪いとか、ない?」
何故かは分からないが、涙が流れてきた。別に苦しいとかではないし、欠伸をしたわけでもない。
「どうしたの!?」
「ごめんなさい…なんでもないです…何故か…涙が…」
その理由を探すが見当たらない。
「疲れてるんだよ…お粥は後にして、もう少し休む?」
さらに心配そうな顔をして、私の様子をうかがう彼女。
「いえ、お腹は空いてるので…頂きます…」
「分かったわ。ちょっと待ってて」
タオルを持って台所の方へ戻る。
お粥を食べた後、身体を拭いてもらった。
その後、ちょっとだけ落ち着いたため話をした。私や彼女のことや、好きなもののことなど、たわいない話をした。
最初はただの親戚としか見ていなかったが、お互いのことを知って、その距離が少しだけ縮まった気がした。




