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ファインダー  作者: 福山直木
ポートレート〜それぞれの明日〜
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▲ついてないサラリーマンの苦悩9

退職願を提出した後も一ヶ月は自分の業務を片付けなければならない。

同時進行で、決心がつくまでの仮の仕事もさがした。


妹の話では、切羽詰ったことではないという。付け加えて、仕事を継ぐ決意が固まるまでは来なくていいと言っていたらしい。そこに明確な期間は無く、すぐに帰っても締め出しを食らうことはないだろう。

しかし、父の言葉が引っかかり、自分の中でモヤモヤしたものが消えていないため、仮の仕事で間を取ることにした。


そんな折、とある求人募集を見つけた。

「あなたも発信者になりませんか?」

自作されたと思われるクオリティのチラシだ。

今勤めている会社の近くにある観光情報誌の編集部。と言っても、小さな編集部である。調べてみると、地方で観光客向けフリーペーパーなどの発行や自治体が発行した観光ガイドの編集協力をしているらしい。

半年間の短期雇用。パート従業員扱いではあるが、

とりあえず、出版社で働いた経験は生かせそうだと思った。


電話を掛けて面談の日取りを決めてもらった。


仕事が一段落して、身の回りの書類を整理していると一冊の本を見つけた。

ブラック企業を辞めた直後、落ち込んでいた俺に「本でも読んで教養を身に着けろ」と父が妹に託したものだ。ちなみに妹はこの本に菓子箱と手紙を添えて持ってきた。

気配りや思いやりという部分では、一生敵わないだろう。


中程に栞が挟まったままのそれを持ち上げると、メモ用紙ほどの紙切れが舞い落ちた。

「なにか落ちたぞ?」

丁度、側を通りかかった上司が拾いながら言った。

「すみません。ありがとうございます」

「大事なものだろう。落とさないように気をつけろよ」

上司から手渡されるまで、何かわからなかった。

よく見てみると、家族の写真だった。いつ撮られたものかは定かではないが、俺の背丈からして中学生のくらいだろう。


おめかしして満面の笑みでピースをする妹と、そっけない顔で遠慮がちにピースをする俺が花畑をバックに写っている。

母がいないということは撮影者は母だろう。ただ、確かな記憶がない。

ふと裏を見ると「辛くなればカナデを連れて帰ってこい。島で待っている」と書かれていた。確実に父の言葉である。

父が家族を顧みなかったのではなく、俺が父のことを見ようとしなかったのではないかと改めて思った。大変なすれ違いをしていたようで、胸が痛むばかりだ。

それ以上は考えないようにして、写真を元に戻し、自分の鞄に入れた。


「そういえば、盆はどうするんすか?」

向かいの席でスケジュールチェックをしている同僚が質問してきた。

決意が固まるまでは、たとえ盆休みだろうが正月だろうが、帰ってこなくていいと言われたこともあり暇だ。

「特に予定は無いけど…」

「なら、呑みに行かないっすか?最後にもう一回行っときましょーよ!」

本当に飲み会が好きなやつだ。

「そうだな。行くか」

彼は小さくガッツポーズをした。

「じゃ、日程決まったら連絡するっす!あと、十人くらい呼んで送別会も予定してますから、夜の予定は開けといてほしいっす!」

飲み会プランが載っているフリーペーパーを手に言った。

「そんな、いいよ…」

「いろいろお世話になりましたから!最後にお礼くらいさせてほしいっす!」

「ありがとう」

もう同僚と呑めないと思うと寂しい気もするが、出費がかさまなくなって良いとも思った。


帰り道、いつもと変わらない風景を眺めて歩いていた。

気づけば、この街に来て五年になる。


少しずつ変わりゆく環境に不安や期待を抱きながら、一日一日が実感なく過ぎていく。そういう時間が一番、心地よかったりする。

時の流れに身を任せるのもいいが、早く心の整理を済ませて島へ帰りたい。

いつの間にか、そんなことを思うようになっていた。

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