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後藤一家の事情  作者: 奈々篠 厳平
四章
20/50

~噂という名の~ 2

 遡ること5日前の金曜日、丁度ヒロトが病院に運ばれた翌日の事だった。


蒲生:お前たち!自分が何をしたのか、分かってんのか!!


普段温厚な蒲生先生が珍しく教室内を響き渡せる程激怒してた、ヒロトが大怪我を負ったためだった。

羽村、歌内、村坂、冨高、そして主犯である北野は囲む形で席に着いていた。


冨高:わ、私はなにもしてないです!ただ───。

蒲生:言い訳はその辺にして、何故お前たちはヒロトを虐めたんだ。

村坂:いやー、その、単なる悪戯とかじゃれ合いのつもりだったんですよ...。

蒲生:嘘つくな、複数の証人から聞いてるぞ。嫌がってる事を承知の上に(おこな)っていることをよ。

歌内:し、知らなかっただけなんだよ...。

羽村:オイ、もう言い逃れ出来ないんだよ俺たち。

蒲生:あと歌内と羽村、君ら去年も呼び出しされるよな?

歌内・羽村:...。

蒲生:同級生の勝木君に対し暴行を加えたりデマを広めようとしたり...

北野:歌内ぃ!羽村ぁ!!俺の友人に何でことしたんだぁ!!

羽村:違うって!違うって!


パンっ!!

蒲生先生は机を強く叩いた。


蒲生:...今喧嘩してる場合ではない、動機を聞きたいんだ。ランドセルを蹴っ飛ばしたり物を壊すのは...その、想定内だったが...神経衰弱の状態で階段から蹴りあげるのは流石に度が過ぎてる!一体どうゆう心算(つもり)なんだ!


すると、北野は(おもむろ)に立ち上がった。

そして北野は面を向かって発した。


北野:先生、“鷹緖山(ようしょざん)むじな”って知ってます?

蒲生:...?


北野は饒舌に鷹緖山(ようしょざん)むじなのことを話した。


北野:俺は礼津市の山付近に住んでいて、叔父から伝承されたお話だ。「昔、鷹緖山で潜んでいた妖狸たちは登山者や修行僧を襲い金目の物を奪い人を食らう、いわゆる山賊の様な悪行をしていて、住民は毎日怯えていた。ある日近くの寺院に暮らす僧侶が妖狸たちを懲らしめる為、山に登ったところ更地に魔方陣を見付け急いでお経を唱えた。すると妖狸たちが怒りながらやって来て僧侶を呪い殺した。ところがその直後僧侶の腹が裂けそこから鬼門が開き妖狸たちを吸い込み、以降悪行が無くなった。」という内容です。そして伝承に沿っていくと本来居なくなった筈の化け狸は実はまだ何処かで生きてることになり、今でも悪行に遭う恐れがあることになる。

蒲生:つまり、どういうことだ?

北野:ヒロトは、化け狸です。この目で確認しました。

蒲生:北野、気持ちは分かるかお前は僧侶ではない、ただの小学生だ。それに、あくまで昔話である、鵜呑みしてはならぬ。例えヒロトさんが化け狸だとはいえ虐めは駄目だ。1人の人間、(いや)、一匹の穏やかな普通で個性のある化け狸の子として過ごしてほしい。良いか?


それを聞いた途端、北野の顔が一変して鬼の様に激怒し反論を始めた。


北野:先生は分からず屋だ!俺のひい祖父さんは彼奴(あいつ)らに殺された。俺は彼奴らを恨んでいるし、俺達もそうだし近隣の人も彼奴らが居ることに怯えてんだよ!

蒲生:北野、落ち着け。

北野:話にならん、どうなっても知らんからなっ!!

歌内:ごめん、一層空気悪くなったし俺気分悪いから...

羽村:俺もだ。

蒲生:お、おい!待て()だ話は終わってないぞ!


先生の説得も虚しく、全員退室してしまった。

 北野の言う通り、正体が化け狸である事実は鷹緖山付近に住む人々に既に広まっており、緊急的に閉山され、近くに住む人々が精神病や慢性の体調不良に悩まされて安堵(あんど)に暮らせられなくなっている。

蒲生先生は休日の時に知ることになった。

月曜日、その噂は瞬く間に学校中に広がっていた。

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