番外編:アリシアにプレゼント
本日3/10
『前世、弟子に殺された魔女ですが、呪われた弟子に会いに行きます』
最終巻コミックス3巻発売されました!
また、先日ひな祭りに短篇
『婚約破棄を告げられたので、言いたいこと言ってみた』
が大幅改題し、
『したたか令嬢は溺愛される ~論破しますが、こんな私でも良いですか?~』
というタイトルで発売されました!
ぜひこちらもよろしくお願いいたします。
2作品とも詳細は活動報告にありますので、お手に取っていただけると嬉しいです。
よろしくお願いいたします。
「アリシアにプレゼントを渡したいんだ」
ヴィンセントの言葉に、アダムは「はあ……」と気のない返事をした。
「アリシアにプレゼントを渡したいんだ」
アダムの反応が薄かったためかヴィンセントが再び同じ言葉を繰り返した。
「いいんじゃないかな」
これはただ話したいんじゃなくて相談したいのだなと判断したアダムは返事をした。
アダムが反応したことに気を良くしたのか、ヴィンセントはコクリと頷くと、話を進めた。
「いつもアリシアには貰ってばっかりだから、たまにはこちらから何かあげないといけないだろう」
おそらく姉上はそんなこと考えてないよ。
そう言いたかったが飲み込んで、「そうかな?」とだけ返した。
「そうだろう。もらってばかりでは、アリシアに飽きられるかもしれない」
「それはないと思うけど」
何せ200年越しの恋だ。100年の恋は冷めるとよく言うが、今のところ200年経過しているアリシアとヴィンセントは暖かな恋心を持ったままだ。
「いや、アリシアに飽きられたら一大事だ。生きていけない」
「はあ……」
さんざん生きてきた賢者が何を言っているのか。
思わずまた気のない返事になってしまったが、ヴィンセントは今度は構わないようでそのまま話を続けた。
「それで熊にしようと思うんだが」
「熊!?」
適当に聞き流そうと思っていたがいきなり強ワードが出て激しく反応してしまった。
「なんで熊!? どうして熊!? プレゼントに熊!?」
まるで問い詰めるかのように聞いてしまったが、とりあえずなぜそんな思考になったのか聞かねばならない。
ヴィンセントはアダムの疑問に静かに答えた。
「アリシアの実家では狩りをするだろう」
あー! はいはい! 思考がそこに行き着いたわけだ!
ヴィンセントの考えが読めたアダムは「それで?」と話を促した。
「アリシアはそこで育っているから、狩りができる男にときめくかもしれない」
「それはどうだろう」
「さらにその獲物が大きければ惚れ直してもらえる」
「それもどうだろう」
アリシアはヴィンセントがヴィンセントだから好きなのであって、おそらく狩りとかにはこだわらない。
「そろそろ冬眠明けの熊が出てくるはずだ。冬眠前より味は落ちるが、そこは仕方ない」
「気にするところそこなんだ……」
ヴィンセントは200年生きているからだろうか。少々ズレている。
「少し落ち着こうか」
「俺は冷静だが」
「少し! 落ち着こうか!」
2回繰り返すと、ヴィンセントは納得した様子で、そのままアダムの言葉を待った。
「まず、熊はアリシアちゃんの実家に行ったときでいいと思う」
本当はそれもどうかと思うが、ひとまず妥協案を出しておく。
「そしてこれが重要だけど……それアリシアちゃんにプレゼントしたら、料理するのはアリシアちゃん?」
そこでヴィンセントはハッとする。
「せっかくプレゼント渡しても、相手に労力かけさせるのはどうかなぁ」
アダムの脳裏に「わ! いい熊ですね!」と言ってノリノリで調理するアリシアが頭に浮かんだが、それを打ち消し、一般論を述べる。
ヴィンセントは考えてもいなかったようで、よろり、とその場でよろけた。
「そうか……」
アダムはヴィンセントが理解してくれたのだなとほっとした。
「熊料理を覚えてくる」
「待った待った待った」
これは小1時間ほど説得せねばならない。
そう心して、アダムはヴィンセントと向き合うのだった。
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