閑話(お嬢と五人の執事)遊園地編②
私と白石は一旦休憩を取ることにした。
「青田、先程食べていたラーメンは何ですか?」
「味噌ラーメンだけど?」
「黒川、味噌ラーメンが食べたいです。
味噌ラーメン一丁!」
「うるせえな……」
黒川が渋々味噌ラーメンを買いに行く。
「白石も一緒に味噌ラーメンを食べませんか?
次のアトラクションに備えて、体力をつけておいた方が良いですよ」
「いえ結構です。
先程のお嬢の姿を見て食欲が失せました」
まあッ! 酷い。
後でお腹が空いたと言っても知りませんからね!
しかし青空の下で食べるラーメンは格別ですなー。
「黒川、美味。青空味噌ラーメン、美味ですよ」
「分かったから黙って食え」
「お嬢。ラーメンをすすらないでください。
汁が飛んで、服が汚れますよ」
「うるさい白石。
ラーメンはすすって食べるものですよ?」
「フフッ。お嬢はいつも楽しそうだなー」
うん、楽しい!
これからも作戦を口実に、今まで行ったことのない場所へ連れて行ってもらおう。
「さあ、休憩終わり!
白石王子、次はあの城へ参りましょう」
少し離れた場所に、この遊園地のシンボルのような城が見えた。
城の中は、きっとメルヘンが満載の世界だろう。
滅茶苦茶不機嫌な白石王子と一緒に、メルヘンを満喫しよう。
「……!」
城の前に到着すると、看板に大きな血文字で『恐怖! 呪いのスプラッターハウス』と書かれていた。
し、城でもメルヘンでもない……。
立ちすくむ私の姿を見た白石が、珍しく笑顔で声をかける。
「さあ、プリンセス。城の中に入りましょう」
「し、白石……。平気なの?」
「こんなもの、全て作り物ですよ?
怖いのですか? プリンセス」
クッ……! 白石王子が嬉しそう。
「こ、怖くなどありません。参ります」
城の中へ足を踏み入れた瞬間から怨念が漂っていた。
「ギャー! 白石、置いていかないでー!」
「ハハハ。お嬢、絶対抱き付かないでくださいね。
指一本でも触れたらどうなるか分かっていますよね?」
「わ、分かっていますよ。
でも、怖くて目が開けられません。
白石、歌でも歌ってください。それを頼りに前へ進みますから」
「歌なんか歌うかー!」
白石の足音が遠ざかっていく。
「白石、何処ですか? 本当に何処? 助けに来て……」
ああ……。駄目だ。
私はきっと、この城に閉じ込められて永遠にさまよい続けるんだ。
さようなら、白石王子。さようなら、皆。
「……仕方がないですね」
「白石?」
「特別サービスで、これを貸してあげましょう」
怖くて目が開けられない私は、手探りで白石から何かを受け取った。
「……何ですか? これは」
「ベルトですよ。
これで出口まで引っ張りますから、ちゃんと付いて来てくださいね」
「……はい」
私は目を閉じたまま、白石のベルトを掴んで歩いた。
『キャー!』
「ギャー! やっぱり怖いー! 無理無理無理無理!」
「ちょっ……! お嬢、俺に掴まるなって!
ああッ! シャツが! 俺のシャツがーッ!」
数時間後、私と白石は無事、城から生還を果たした。
いつの間にか白石が着ていたシャツはビリビリに引き裂かれ、白石のベルトは私の首に巻かれていた。
「白石君、お嬢。城の中で一体何があった!」
「黒川君、これ以上お嬢の面倒を見るのは無理です……」
白石王子、倒れる。
再び遊園地に来ることがあったら、城には絶対入らない。
下見をしておいて本当に良かった……。




