第十一話
今日は化学が無いから、白石の授業はホームルームだけか……。
ホームルームで怒られる事は無いだろうから、今日の『報告会』は安心だ。
……が! 私には、白石を怒らせて『お宝ボイス』をゲットしなければならぬという任務が課せられている。
クラスの女子の大半が録音準備をして構えている。
エビちゃんも山田も準備万端だ。ん? 山田?
「席に着けー」
白石が来たッ!
「今日は体育祭の参加種目を適当に決めてくれ」
白石、適当だな。
もうすぐ体育祭か……。
参加種目は何でもいいや。
黒川から逃げるために毎日走っているので、脚力には自信がある。
最後に残った種目に参加しよう。グゥー……。
『ゴスッ』
「ぎゃっふー!」
白石が……、白石先生が出席簿で殴った!
しかも角でッ!
これは今日の『報告会』で報告せねば。
あ……。皆が切なそうな顔でこちらを見ている。
『白石のお宝ボイス』ではなく『さち子の雄叫びボイス』を録音してしまったのか……。
山田。何故お前も切なそうにしているんだ?
気持ち悪いから、そんな顔をするな。
むー。わざと白石を怒鳴らせるのって結構難しい。
白石は日頃からテンションが低いから滅多に怒鳴らないし、仮に怒ったとしても、途中から面倒臭くなって止めてしまう。
黒川と違って根気がないですな。フフッ。
「授業中にニヤニヤするな!」
『ゴスッ』
「フギャッ!」
白石。角で攻めるのは止めていただけませんか?
しかし、なかなか良い『お宝ボイス』を頂けたのではないでしょうか?
皆さん、いかがでしたか?
あ……。皆が切なそうな顔をしている。
またもや『さち子の雄叫び』が混ざってしまったのか……。
申し訳ない。
結局その日は皆が満足するような『お宝ボイス』を獲得することなく一日が終わった。
屋敷に戻って晩ご飯を食べ、風呂から出たら恒例の『報告会』が始まった。
「青田君。例の手紙を三人に渡してくれたか?」
「バッチリだよ。黒川君」
ん? 手紙?
「あの……。手紙って何ですか?」
「お嬢。真面目に会議に参加しないから、作戦の内容が分からなくなるのですよ」
白石から資料のようなものを頂く。
こ……、これは!
私の暗黒ポエムから抜粋したと思われる、異常にメルヘンチックなラブレターではないですか!
しかも、達筆な黒川が微妙なアドリブを入れつつ、縦書き毛書体で書いているので、非常に怨念。
怨念込められた呪いのラブレターになっている。
「あ、青田……。
本当にこの手紙を渡してしまったのですか?」
「イエス!」
「ぅ、わぁぁぁ……!
怨念! 怨念炸裂だぁぁぁー!」
「またお嬢が暴れだした!
誰か縄を! 縄を持てー!」
……うん。分かっている。
こんなラブレターをまともに受け取る奴はいない。
放っておこう……。
私は椅子に縄でグルグル巻きにされたまま、大人しく報告会が終了するのを待った。
「では、他に連絡事項がある者は?」
「ハイッ!」
グルグル巻きにされて手が挙げられないので、椅子ごと立ち上がった。
皆の視線が私に集まる。
「他には?」
「黒川ー! 無視するなー!」
「仕方がねーな。何だ? お嬢」
「今日、白石が出席簿で私の頭を殴りました。
しかも角でッ! さらに二回もッ!」
「……分かった。
お前が二度もふざけて白石君を怒らせたという事だな。
お嬢以外、解散!」
ぎゃぁぁぁ……! 皆、置いていかないでー!
誰かぁぁー! 縄を解いてくださーい!




