なんとも小賢しい金稼ぎ
「いや、頼れとは言ったが……。早すぎないか?」
金棒の店内、僕らはカウンター席に並んで座っていた。
「いや、僕もそう思ったんですけど……」
「あたしは金を貸す気はないからな」
僕の隣でチャーハンを食べながらバルベルはそう言った。
「すまないけど、俺も金に関しては難しいね」
「あ、そうですか……」
弱気になって下を向く。
「全然頼れないじゃないのよ!?」
小声でフリルが僕に文句を言ってくる。
困ったな。カジノが稼ぎ手段としてあればいいのだが、あいにく出禁だから僕にはどうしようも……。
「あっ!」
「……っち。こっち見んな」
三村に目を合わせて僕は喋りだす。
「三村、カジノに行ってくれないか?」
「は?」
「俺らは出禁でも、三村なら」
「あのなぁ、いいか?ここに来るまで俺はお前の肩を借りてたんだぞ?」
「なら、ユースケさんが僕の代わりを……」
「いや、店を空けるのは」
「なら」
「死んでもやらねぇからな」
「……」
バルベルは質問をする暇も与えずに返答をする。
これで候補の全員に断られてしまった訳だが……。
「うーん」
困ったな。金が必要なのに。
「っていうかカジノで同じ人間が稼いでたら目をつけられるから。一人で多額の金を稼ぐのは不可能よ」
フリルが最もな意見を言う。
「確かに……。ユースケさん、スーツってどれくらいのお金が必要ですかね?」
「そうだな。安いのなら50ゴールドだが……。まあ裏カジノに入るなら200ゴールドくらいの物じゃないとな。それに女の子はドレスだから400ゴールドくらいか?」
「なるほど」
となると必要なのは800ゴールドか。
「……裏カジノでの賭け金も考えた方がいい。1000ゴールドプラスしとけよ」
相変わらずチャーハンを食べながらバルベルはそう言う。
「じゃあ1800ゴールド……。三村は200ゴールドしかないから9倍にしないといけないか」
「一気に9倍は無理ね。それこそ賭けになるわ。マオって子がシステムを変えてるかもしれないからそう簡単にはいかないし」
フリルはそう捲し立てた後、ゆっくりと付け足しをする。
「まあでも、スロットならワンチャンある、かな。時間はかかるだろうけど」
「スロット?」
「ええ。カジノのスロットはリュウがシステムを作ってるからマオって子でも変えられないはず」
「なるほど。よしっ。少し、寝てもいいですか?」
「え?ちょっ」
「10分だけ。起きたら話すんで」
「……分かった」
「じゃあ、寝ます」
机に突っ伏して僕は寝た。
僕の睡眠学習は一般的なノンレム睡眠時に働きかけるものではない。
僕のは夢の中でひたすら現実世界と同じように勉強をするというものだ。
便利なのはペンで文字を書く必要がないので無駄な仕事をしなくて済むというのがあるが、一方で調べ物などになると向いていない。ただ、それなりに内容の復習は出来るし、なによりこうした思考問題にはうってつけと言っていい。
「……」
そうして僕は夢の中で、10分間、案を考え続けたのだった。
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長蛇の列が出来ているカジノ前。いつもなら昨日の負けを取り返せるのかと、不安な気持ちを持ってこの列に並んでいたが今日は違う。こないだまでこのカジノで働いてた金髪の姉ちゃんから必勝法を聞いたんだから!
「へへっ」
まだ勝ってもいないのに密かに笑みがこぼれる。思わず周りを確認して、自身の顔を真顔に戻した。ぼさぼさの頭を整えるように触り、ほっぺを叩く。そうすると、
「お待たせしました。開店です」
入り口に立っている男がタイミング良くそう言った。
よし、来た!
列がカジノへと流れ込んでいく中で、我先にと身体を動かす。細い体のおかげだろう。小さな隙間でもどうにか早めに中へと入ることが出来た。
「よしっ!」
小さくガッツポーズをしたいが、止まっている暇はない。急いで店内奥の左側スロットへ向けて走り出す。
スロットのコーナーに着くとまだその席は空いていた。というか、その席だけが空いていた。
「ラッキー」
思わず声を出してそう言った。すると、近くに座っていたスーツを着た男がこちらを見る。
「……」
「あ、へへっ。さーせん」
「……」
ちっ。気分悪いな。しかも、右手がないじゃねぇか、こいつ。
まあいい。今日の俺は気分がいいんだ。
どうせ勝てるんだからな。
ニヤニヤとしながら俺はスロットの席へと座った。
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男がスロットに座ったのを確認して左手を耳元にやる。
「おい、聞こえるか。定位置に着いたぞ」
「三村、聞こえてるわ。じゃあ、作戦通りに」
「……了解」
左手を戻し、またスロットをてきとうに止めていく。
「本当に上手くいくのか?」
揃わない絵柄を見て、俺はそう呟いた。




