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狐の嫁入り、ただし降るのは普通の雨に非ず

 隠れ里での生活 3日目


 今日はそれ程起床が遅かった訳でもないのだが、やはりリシアとクロエの姿は既に無かった。

 寝る時は人の上で丸くなっている(クロエは変わらず撫でさせてくれないが、向こうからは平気で触れてくる。ある意味猫らしいが理不尽!)のだが、朝になると忽然と消えているのはなんなんだろう。

 

「昨日に続いてだし、何してるか聞き出した方がいいかねぇ」


 いつかのように痛い目をみる前に行動を起こすべきか悩んでいると、背後に感じる誰かの気配。

 二人が帰ってきたかと思い、振り向こうとした所でその何者かに抱きつかれる。


「レストさん、何か悩み事? リシアちゃんの旦那様ならコトノハの弟みたいなものだし、お姉ちゃんに頼ってくれてもいいのよ?」


 二人ではなくコトノハだったようだ。それはともかく何か意味不明な理屈が聞こえたが……。

 そこでいい機会だと思い、かねてよりの疑問を解消するべく、この自称お姉ちゃんに問いかける。


「コトノハって何歳なの?」

「え、っと……。14だけど……」

「ふむ、因みに俺は30超えてるんだけど」


 俺がコトノハに告げると、俺の首元に回された手が小刻みに震え始める。


「それでもコトノハはお姉ちゃんなの! もう、折角一人で退屈してるだろうから、コトノハが来てあげたのに」


 そう叫んで俺からパッと身を離す。どうもお姉ちゃんというものに並々ならぬ思いがあるようだ。

 振り返ると人化をしたコトノハが全力で不機嫌オーラを出していた。

 まず一人称が名前の時点で……と思うが、まぁいい。

 それよりもコトノハの身体に、どうしても見過ごせない点があった。


「なぁ、何で耳と尻尾がそのままなんだ? いつもは完全に人間になってたし、その事でリシアをバカにしてましたよね貴方……」


 そう、目の前の金狐は何故か耳と尻尾だけ獣のままな人化をしていたのだ。

 コトノハ曰く、不完全な人化とやらをわざわざしている理由を尋ねる。

 するとさっきまでの不機嫌オーラは即座に消えて、上機嫌で答えてくれた。


「レストさんがそういうの好きってリシアちゃんから聞いたから、コトノハも試してみたの! どう? 誘惑されちゃいそう?」


 リシアァァァ!! 何を教えてるんだあの子狼は! 

 ……いや嫌いではないけど、むしろ好きだけども。


「されないから。ってか何? まさかマジで誘惑しに来たの?」


 違うと思いながら皮肉交じりにそう返すも、


「そうよ? リシアちゃんが居ない今がチャンスだから、籠絡にする為にきたの」


 まさかの正解であり、酷すぎる理由が判明した。


「おい妹に対して良心の呵責とか無いのかよ!」

「ほら、4割は元々認められてたし?」

「まだ覚えてたのかよ!? あれ無しっつったよなぁ!!」


 俺が自身の自治権を懸命に主張していると、コトノハが尻尾を腕に絡ませてきた。

 なんだこれ、ふわっふわでサラサラだぁ!

 リシアのとはまた違う気持ち良さに一瞬で心を奪われる。


「尻尾、本当は触りたかったんでしょ? 今なら触り放題だけど……どうする?」


 ……これは悪魔の誘惑だ。

 誘いに乗ればロクでもない結末を迎える事は火を見るよりも明らかだろう。

 しかし残念ながら、俺には抗う術がなかった……。

 だってほら、気持ちいいし? 人間、痛苦より快楽に抵抗する方が大変なのだ。

 そんな言い訳を浮かべながら尻尾を撫でる。


「これは素晴らしい手触りだな……」

「んふふっ。そうでしょう? もーっと触ってもいいのよ?」


 どこかの母性溢れる駆逐艦みたいなセリフを言われる。

 そこで色々と限界が来たので、尻尾だけでなく他の場所にも手を伸ばす。

 するとコトノハが可愛らしい悲鳴を上げる。


「きゃっ! もう、そんなとこまで触っていいなんて、んんっ。言ってないのにぃ……」


 そんな事を言いながらも特に抵抗する素振りは見せない。

 つまり続けていいって事だな!!

 希望的観測と都合のいい解釈を用いてコトノハの身体を堪能する。

 どことは言わないがリシアより少しだけ大きめの場所を揉みしだく。

 二次元にしか興味無かったが、二次元レベルに可愛いコにこんな真似が出来るなんて、異世界最高だなあとゲスな思考をしながら、無抵抗のコトノハにセクハラをし続けた。



 どれくらいそうしていたのか、コトノハが腰砕けになり床に座り込んだところで我に帰った。

 外を見れば日暮れ前……。確かコトノハが来たのは昼前だったような。

 我に帰るの遅いな! と自分に突っ込みながら、どうするか考える。

 目の前には荒い息を吐き、着崩れた巫女服を直す気力もないコトノハ。

 一瞬最後までやろうかと本気で思った所で、人化したリシアがクロエを抱いて帰って来た。


「レスト、ただい……」「帰ったわよ! あー疲れ……」


 二人は俺とコトノハを見て絶句している。


 …………。


 この状況、どうなんだろう。

 いやまぁ普通にアウトだよね。

 どう見ても事後やん。やってないのに!

 とは言え無罪かと言えば有罪なのだが……。

 そこまで考えた辺りで止まった時は動き出し、二人が制圧行動に出た。


「コトノハ、一体何をしていたのか、今すぐ吐いて。その後、殺すから」

「いや、リシアちゃんあのね……? ここまでする気は無かったの。だから殺さないで!」

「レスト、アンタ……アタシやリシアがいるのに、この狐に真っ先に手を出したの!?」

「出してないから! だから爪を仕舞え! それちょっとした刃物だろ!!」


 リシアに押し倒されたコトノハは、目の据わったリシアに恫喝されている。

 助けてやりたいが、残念ながらそんな余裕はない。

 俺の方も恐ろしく鋭利で長い爪を剥き出しにしたクロエに詰め寄られて、全く身動きが取れない……。

 化身した時、出来損ないだったにも関わらず牛もどきの首を落とした爪だ。その威力は推して知るべし。

 二人の殺気で先刻までのエロい空気が、瞬く間に殺伐とした物に変わってしまった。



 その後、拷問紛いの尋問の結果、全てを聞き出した二人が下した判決は、


「誘惑した、コトノハが悪い」

「けどそれに乗ったレストも、十分悪いわね」

 

 というもので、情状酌量の余地なくどちらにも物理的制裁が執行される運びとなった。

 命乞いの間も無く、リシアの魔術で離れの外まで吹き飛ばされる俺とコトノハ。

 

 そう言えばエロい事をして肉体的ダメージを受けたのは初めてだなと、そんなどうでもいい事が脳を過ぎったのを最後に俺は意識を失った。


久々のエロ回。

こういうのはたまにやるからええねん。

ところで話変わるけど、帰ってきた元勇者9巻最高でしたね。

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