15話「患者」
「ふ、ふざけんなよっ! お前、イサ達の仲間なんだろ!? 兄さんをこ」
「言わせねえぞオラァ!」
「ぶふっ!!」
張り手が飛んできた。ヒツジの顔が軽く吹っ飛ぶ。
ええ……。私の中の衝撃や悲しみが若干引っ込んだ。さっきの今はちょっと温度感が……。
「えーと、私たちを助けてくれたって事でいい?」
「あってるわよ。あたしは仲間とかそういうんじゃない、一昨日生まれたばかりなのに詰め寄らないで、失礼しちゃうわ」
一昨日。……一昨日か。発作とは何か関係があるのだろうか。
「ホンット何なのよ〜有り得ない。何かヤバそうだからあたしの魔法で隠してやったのにさ! お礼も言えないとか! あー、やだやだ」
関係無さそうな気がしてきた。とにかく事情を説明するのが先だ。敵を作っていい場面じゃない。
「あ、ありがとう! 私はモカ。こっちはヒツジ」
「ぬぅ……アリガトウゴザイマス……」
「あ、そ。そっちのあんたはいい子ね。あたしミラ。素敵でしょ?」
「うん、すっごい! もうすぅっごい素敵! 名は体を表す!」
ふふんと鼻を鳴らすミラは、ご機嫌そうだ。声の野太さは気になるが。
悠長にはしてられない。私はこのまま一気に捲し立てる。
「私たち、さっきまで台に寝かされてた子を追ってきたの。大切な家族だったから。そしたらここに辿り着いちゃったんだ。ここはどこ? 私たちを外に連れ出せる?」
「質問が多い!!」
「ごめんなさい!!」
反射で謝る。ずっと声がうるさい、結構ヒステリックだった。妖精ってこんな感じなのか……? 妖精ってもっとこう、綺麗でファンタジーで……妖精なんだよな……?
「ここ? 病院の地下でしょ。フツー入れないのにねぇ。あたしは「末期患者さんのところに行くよー」ってゼロに呼ばれて、連れて来られただけよ」
「末期、患者……さん……?」
「そうよ。でもあんた達は迷い込んだように見えたの。だから守ってあげた。ゼロが来る前に外に出してあげるわ、あたしの魔法ならすぐよ」
「患者ってどういうこと……?」
顔から血の気が引いていく。腹の奥が重たい。さらっと、とんでもないことを聞かされている気がする。
生まれ変わりなんて嘘っぱち、そんなのはもう分かってた。
私たちは転生のために天使になったんじゃない。だからって、患者?
「あら、あんた達ピーターパン症候群の患者でしょ。早いとこ戻んなさい」
ピーターパン症候群。
私たちは今、何を聞かされているんだ。




