表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
8/8

0008 久しぶり

村の入口、彼と初めて会った場所で、僕らは別れを告げた。


「お騒がせしました」「あとは頼んだ」「じゃあね、圭くん」

「ああ、また、いつか」


僕らは、事件を解決したその日のうちに、帰路についた。


꒷꒦꒷✝︎═━┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈━═✝︎꒷꒦꒷


帰り道は、行きと同じように電車に乗った。

行きのときと違うのは、ひとが異常に多いことだろう。


「満員電車寸前って感じ‥」

「近くで祭りがあったみたいだぞ」

「祭り?呑気なものだね」


ガーノはスマホで、情報を集めていた。さすがは機械部隊隊長。ネットサーフィンがお得意なようで。


「あ、ちなみに次の駅がいっちゃん人多いぞ」

「うわ~」

「ヒェ」

「スイ、俺の服にでも掴まってろよ」

「う、うん」


スイは言われた通り、ガーノの上着を握った。…かわいい((


「マカも人混みに呑まれるなよ。お前チビだし」

「余計なお世話だ」


はっ。174cmなんて、ブラッドレインの中だったらまだちっさいほうだろ。158cm舐めんな。スイなんか132だぞ。


「いつぞやのガーノちゃんじゃないんだし、そんなはぐれる訳無いだろ」


꒷꒦꒷✝︎═━┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈━═✝︎꒷꒦꒷


数分後


「あんのチビ、見事にフラグ回収しやがった」


無事、彼女は人混みに呑まれ、どこかへ消えました。


「やっぱ似てるよね、二人」

「どこがだよ」


彼は何かを思い出したというように青ざめた。


「あいつ、駅の場所わからねーんじゃ」

「え、でもスマホで調べれば」

「いいや、あいつのスマホは今…」


꒷꒦꒷✝︎═━┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈━═✝︎꒷꒦꒷


(あんのクソガキ…なんでよりによって今日、スマホぶっ壊すんだよ)


あんな事言わなきゃよかった。きれいにフラグ回収してる場合じゃないんだよ。

ひとまず、見覚えのある駅に降りて、記憶を頼りに帰るか。スイは…ガーノのことだし心配いらないか。


《次は**。**。お出口は、右側です》


確か行きで乗り換えしたのはもう少し先の駅だったはず…


「すみません、降ります」


後ろから聞こえた、その声に反応して、周りの乗客は道を開けようと努めた。

けれど、僕は動けなかった。

その声はたしかに聞き覚えがあって、声の主に掴まれた腕の感覚にも、たしかに心当たりがあったから。


「え?」


泣きそうなほど震えた声が自分の口から発せられ、我に返った。そして、勘違いだろうとその人物の顔を見上げる。

その顔は、想像通り、つり革にぶつかりそうなほど高い場所にあった。そして、真っ赤な血がそのまま変化したような、赤い瞳をしていて、七三分けに整えられた、きれいな金髪の髪をしている。


彼は、ただただ冷静に、レンズ越しに僕の目を見つめ、腕を引いた。


「一度、降りますよ。よろしいですね、マカ君」


その声も、その姿も、温もりも、本物だと理解したとき、僕は一体、どんな顔をしていたのだろうか。


はは…、


考えたくもないな。



꒷꒦꒷✝︎═━┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈━═✝︎꒷꒦꒷


電車から降り、彼にスマホを渡された。

彼は「連れがいるのでしょう?」と一言だけ口にした。電話をしろ、ということだろうな。


まだ、少しだけ震える手で、ガーノの電話番号を、入力する。

ついでに、僕の連絡先を登録しておきたいところだが、怒られそうだからやめておこう。


「想像以上に落ち着いてますね。もう少しテンパるものかと」

「あれでもかなりテンパってたほうだよ」

「本当に落ち着いていますね。あなたはこの手のものが苦手だったと思いますが」

「そうだよ。僕はあれから対して変わってない」

「そうは、見えませんがね」


ちなみに、僕らは今、男子トイレの前にいる。ぎりぎり入ってるけど。一応言っておく。僕は女だ。そして隣のこいつもそのことを知っている。つまり、確信犯((


「今、とても失礼なこと考えていませんか?」

「ごめんって」


「いや事実だろ」

「はい?」


よし、話はできてる。

このままこちらのペースへ持っていこうと思ったが、本当にくだらない言葉しか出てこなかった。「ソッチの様子はどうなんだい?」とか「なんでこんな場所に?」とか、そんな具合だ。でも、どれも今言うことではないような気がして、結局言葉に詰まってしまう。多分この思考もこいつには筒抜けなんだろう。

僕がこんなにも焦って困っていることなんて、きっとそうそうない。多分こいつも楽しんでいるだろう。


「それはもう♪」

「おま、ちょっと黙ってて」

「君が困っているようだから、こっちから話してあげようと思っていたのに」

「どうせ、ろくでもない話しか聞けないだろ」

「それもそうですね」


彼も会話を諦め、しばらくの間、無言が続いた。

手の中のスマホは、最後の一文字が打ち込まれるのを気長に待っていた。


「…僕」


思い切ってこの沈黙を切り裂いた。


「僕、言いたいことも、聞きたいことも、たくさんある。でも…」


詰まりそうな言葉を精一杯絞り出して、言葉にして紡いだ。


「今は、僕のこの状況をなんとかしないと、だよね」

「そうですね」


最後の一文字を、やっとの思いで打ち込み、コールボタンを押した。



スマホを耳に当てようと顔に近づけたところで、彼が、僕の手からスマホを取り上げた。

そして、今まで見たことのない鋭い目つきで、僕を睨みつけた。



「は、?」

「気づいていなかったわけではないでしょう」


コール音が止み、スマホからガーノの声が聞こえたが、すぐに通話が切られてしまった。


「最初から、ずっとあなたは平常ではなかった、ということですか。警戒していたこちらが馬鹿でした」

「まっ、ディt」

「黙りなさい。今のあなたに、名を呼ぶ資格などありません」


彼は心底嫌そうな顔をした。


「彼だったらもう少し手荒でしたよ。ここへ来たのが私で良かった。そうは思いませんか、マカ君」


強い力で、口をふさがれた。正直、抵抗する気力がなかった。

彼の言うとおりだ。僕はずっとおかしかった。


右腕が勝手に動き、彼の手を払い除けた。


「全くだね、僕はどうかしてたみたいだ。冷静だったら、電車の中で君を切りつけていただろうに」

「言ってくれますね」

「こっちのセリフだよ。気づいてないのかい?」


少しだけ、相手が動揺してくれることを願って、悪あがきの言葉を口にした。


「君も冷静さが欠けているんじゃないのかな。だって君が冷静だったら、僕と会話なんて交わしてはくれないだろう?」


彼は、特に動揺しなかった。逆に動揺したのはこっちの方だった。



彼は本当に悲しそうな、嬉しそうな表情で、笑った。


「ああ、本当に。馬鹿ですね。」


彼のその言葉にかき消され、近づいてくるもう一つの足音に気がつけなかった。


ああ、懐かしい顔だな。


意識を失う直前に見たものは、また、僕の想像を超えるものだった。



「…君たち、一体…誰?」

次回『少しの空白』

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ