0007 見てはいけないもの
「みーつけた」
最後列付近の魔獣達を殲滅したマカは、例の兎を見つけて、その前に立ちはだかった。
魔獣は行進を止め、彼女を見つめていた。
「君が卯魅ちゃんだね?」
卯魅は驚いた…いや恐怖した顔で1歩、後ろに下がった。
「知っているだろうけど、僕はマカ。君を殺しに来た。」
「な、なんで名前を」
卯魅は信じられないという表情で恐る恐る聞いた。
「あの雑魚が吐いたのか」
雑魚、とはガーノが捕まえた毒を持った犯人のことだろう。マカはすぐにそれを否定した。
「ううん。僕の_____」
彼女は目を瞑り、これまでにないほどの優しい笑顔をした。
「僕の友達が教えてくれたんだ」
そんな答えに、卯魅は戸惑った。
「は、はぁ?友達!?」
「うん」
彼女の笑顔はすぐさま消え失せ、鋭い目が、卯魅を睨みつける。
「まあ、そんなこと君が知っても意味ないと思うけどね」
「ヒッ……」
彼女は、明確に恐怖を覚えた。
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(どこまで行ったんだあの人はッ!)
岩橋圭は、マカの後を追っていた。そうしなければと、加護が言っていたから。
度々魔獣が襲ってきたが、全て蹴散らしていた。
(あれか!)
彼はマカを見つけた。彼女の傍には誰もいなかった。マカの顔に触れた空気が、歪むように震えた。
間が悪かったんだ。
「!!」
マカは彼に気づき、後ろを振り向いた。
「君、見たね?」
今まで見たことの無い、恐ろしい表情で彼を睨みつけた。強い殺気が、圭を襲った。
そして彼は、今、初めて加護に逆らった。逆らったのだ。“正しい判断”をし続ける決断の加護に。
彼女は1歩ずつ彼に近づいていく。少しずつ、距離が縮まっていく。
彼は加護に逆らい続けた。
だが、このままでは、彼は死n_____
「ッぐ」
背後から誰かの手が伸びた。圭の襟元を掴み、後ろに引いた。そのまま手を離され、圭は地面に倒れた。
彼を引っ張った人物はマカを睨んだ。
「どけ、ガーノ」
マカは低い、威圧的な声で彼に訴えかけた。
「はっ、誰がどくかよ」
ガーノは彼女の殺気に動じず、鼻で笑った。
彼の周りは電気を帯びているように見えた。
気づくと晴天だった空に雲が集まり、暗くなり_____雷がマカに直撃した。
「!!?」
圭は、信じられない物を目にした。
ガーノは倒れた彼女を受け止めた。
「すまねえな。コイツはたまに、周りが見えなくなることがあるんだよ」
ガーノは圭に笑って見せた。その後、再びマカに向き合い、1度しゃがみ、彼女を雑に持ち上げた。そして、圭に手を差し伸べる。
「立てるか?」
「…あ、ああ」
その手を取り、立ち上がると、ガーノが先導して村へ歩き出した。
「生き‥てるのか?マカさんは」
「ん?ああ」
ガーノは圭とマカを交互に見てから言った。
「一応、死なねぇ程度に調節してやったし」
「調節…」
圭は空を見上げた。さっきの落雷が嘘だったかのように、青く澄んでいた。
「もうわかってるだろ。俺らは人間じゃない」
「そうみたいだな」
村に近づくにつれて、圭は顔をしかめた。
「これも、お前がやったのか?」
「まあな」
先程まで人間を襲っていた魔獣が、少々黒焦げになり、倒れていた。戦っていた人間たちは皆、何が起こったかわからないという顔で、その場に立ち尽くしていた。
「…そうか」
(加護が落ち着いている。じゃあ、さっきのマカさんの様子は?)
圭の表情からは、いまいち腑に落ちないということが伺えた。それに気づいたがーノは、彼の名前を読んだ。
「岩橋」
「なんだ?」
「さっきのマカを見て、お前は何を思った?」
彼は、少し悩み、質問を質問で返した。
「何とは?」
ガーノは彼の反応が気に食わない様子だった。
「…質問を変える」
「なんで逃げなかった」
圭は、それにすぐには答えられなかった。
「そう、判断したまでだ」
「…そうか」
ガーノは、しばらく、彼の言葉の真意を探したが、やがて諦めた。
そう、たしかに彼は判断をした。そして決断した。自分の意志で、加護に逆らい。
あのとき、決断の加護はこう言った。
『ソイツを殺せ』と
(罪なき人は殺せない。たとえ、マカさんに何らかの罪があったとしても。あのときこちらが殺意を向けていたら、私は…)
「死んでる?」
圭はその一言で、一気に現実に引き戻された。
いつの間にか、村の中、スイのところまで戻っていた。
「いいや、生きてるよ。こいつの生命力舐めんなよ?ゴキブリ並みだぞ」
「例えが気持ち悪い」
スイは軽くガーノの足を蹴った。彼は「イダッ」と大げさに声を上げた。
「一応回復かけとくけど、それもいらないよね」
「だな」
圭は、一番の疑問を二人に投げかけた。
「彼女は、マカさんは一体何者なんだ?」
「えーと」
スイは困ったようにガーノに視線を送った。しかしガーノは、ためらいもなく、こう言い放った。
「悪魔だよ」
悪魔。太古から忌み嫌われ、悪の象徴と歌われた存在。
「主人に見捨てられた可哀想な悪魔」
そんな存在であるマカのことを、ガーノは憐れむように、悲しそうに語った。
「俺は主従関係とかわかんねぇけど、多分こいつは、”悲しい”って感情よりも”恨み”のほうが強いと思うがな」
スイは、諦めた様子で聞いた。
「後でマカに怒られない?」
「その時はその時だ」
圭は、その話を聞き、思わず問いただした。
「なぜ!」
「なんで教えたかを疑問に思ってるなら、マカがお前のことを気に入ってたからだよ」
「それが理由になっているとは思えんが」
「なってるよ」
彼は、餓鬼のように無邪気に笑った。
「フェアリーサンの奴ら以外をマカが気に入るなんて、メッチャクチャ珍しいからな。ま、悪魔だってこと聞いて、敵対するのも仕方ねぇとは思うから止めねえが、一応言っておくと」
一息置いて、彼はその言葉を口にした。
「悪魔にも家族や」「悪魔にも家族や友人がいるのだから、嫌わないでおくれ」
圭が、その言葉に被せて、一言一句同じ言葉を口にした。
「やっと、思い出した」
彼はスッキリした表情で微笑んだ。
「俺が、昔会った悪魔の言葉だ」
常時仏教ズラだった彼の笑顔を見て、二人は笑った。
「じゃあ、マカが気に入るのも必然だったかもね」
「だな」
ガーノは少しして、スイに聞こえないようにこっそりと質問をした。
「一つ聞いてもいいか」
「ああ」
「その悪魔の隣に、猫の獣人とかいなかったか?」
「いや、いなかったと思うが」
「そうか」
ガーノは、少し残念そうな表情を見せた。
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宿の一室。ベッドに寝かされていた彼女は、ゆっくりと起き上がり、壊された自身のスマホを発見した。
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「ガーノちゃん」
「お、マカ。起きたか。どうした?」
宿のエントラスで、彼は、スイと、圭と話をしていた。
「これはちゃーんと弁償してくれるんだろうね?」
「は?スマホ?」
どうやらマカは、記憶も意識もはっきりしているようだ。
「僕がなにか変なことしようとして、止めてくれたのはわかるよ?感謝してるよ?でも…」
先程までのクールな彼女はどこへ言ったのやら。マカは涙目でガーノに問い詰めた。
「雷直撃はどうかと思うよ!??めっちゃ痛かったし!スマホ壊れたじゃん!弁償!!!!」
「いやいや、明らかに俺よりお前のほうが金持ってるだろ!?」
「そんなの関係ないだろ!!壊したのはガーノちゃんだ!!」
その様子を見ていた二人は、呑気な会話をしていた。
「…俺はガーノさんが悪いと思う」
「マカ、半分ぐらい楽しんでる」
「そうなのか?」
「マカが本気で怒ったときは、ちゃん付けしないから」
「なるほど」
「なんか二人仲良くなってない!??」
「おかげさまでな!!」
無事、ガーノに弁償させることになりました。
一旦、魔獣編は終わりましたかね。
どうも、根来琴葉です。
全然投稿してなくてすみません。多分これからもっと頻度下がります。
なぜかって?受験生になってしまったからだよ!!○ね!!!!
ってことで(?)あとがきで特に話すこともないので、次回予告でもしようと思います。
マカに忍び寄る怪しい影!?その正体は如何に。
「ここへ来たのが私で良かった。そうは思いませんか、マカ君」
次回『久しぶり』
…ナニコレ(今更)




