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オカルト研究部の幽霊部員  作者: 椎名焔妃
オカルト研究部への道
17/19

゛言えない゛理由

「なんだ?」


一条が振り向いた。


「いや、お前の好きなタイプについてなんだが、、、」


「だから、言えないと言ったろう」


また゛言えない゛と言ったな。


「それだ。なぜ゛言えない゛なんだ?゛言わない゛ではなくて」


「・・・佐和野。君はいったい何を言ってるんだ?」


思い出してみると、一条は好きなタイプを徹底して゛言えない゛と言っていた。

俺はそれにちょっと引っかかった。好きなタイプは゛言えない゛ではなくて、゛言わない゛と言うのが普通ではないだろうか。

なのに、一条は゛言えない゛を徹底していた。

゛言わない゛は、単に自分が言うのが嫌だからとか、恥ずかしいからだとか、そんな時に使うものだ。

しかし、゛言えない゛は、言ってはいけない理由がはっきりとある時に使うものである。

つまり一条に好きなタイプを゛言えない゛理由があることになる。

そうすると、昨夜俺が天月に言った仮説は案外合っていたのかもしれない。


「あーだからだな、つまりお前は好きなタイプを言いたくないんじゃなくて、言えないんだろ?」


「・・・そうだが」


「すっごい特殊な人がタイプだとか?」


「違う」


昨夜の仮説は否定された。

う~ん、そうすると、


「じゃあ、あれか?その好きなタイプを言ってしまったらある特定の人物たちしか当てはまらないとか」


一条は眉を細めて、


「それはどういうことだ?」


と言った。

一条の反応からするに、これが当たりか?

一条に好きなタイプを゛言えない゛理由 ・・・それは好きなタイプを言ってしまったら、一条の好きな人が分かってしまうことにあるんじゃないかという仮説だ。


「そうだな・・・。とりあえずこれには答えてくれ。好きな人はいるんだろ?」


一条は少しの間黙ると、やがて諦めたように、


「・・・ああ」


と言った。


「それはこの高校の生徒ではないな?」


「・・・ああ」


「そうか」


これで全部分かった気がする。

一条が好きなタイプを人には言えない理由とは、タイプとしてその人の特徴を言ってしまったら、一条の好きな人がバレてしまうことにある。

一条はモテるから、好きな人がバレるということは一条よりも、その好きな人のほうに迷惑がかかってしまうかも知れない。

それでは、言いたくはないだろう。

そしてそれが誰かということだが、この高校の生徒ではなく、好きなタイプとして特徴を言ったら好きな人としてバレてしまう人物、、、、

・・・それは先生だ。

一条はこの高校の先生の中の誰かが好き、、、まぁ、普通に考えれば、容姿がよくて生徒からも人気のある女教師だとすると、、、


「すると一条のタイプは、美人で、おそらくアラサーで、人望もあるって感じか?」


「ああ・・・そうだ」


一条は肯定した。

じゃ決まりじゃねえか・・・。


「でもあれは、性格悪いぞ。相当」


「それでも好きだからな」


ま、まぁそういうとこが好き奴のいるからな。それは大した問題じゃないか。

一条はドS女教師が好き、、、と。こう言うとなんか変態みたいだな。


「・・・誰にも言うなよ。今話した内容は」


一条は言った。

それが、そうもいかないんだよなぁ・・・。


「いや、すまん。言わなくちゃならない」


「・・・そうか。なんかハメられたな、僕は」


「心配するな、お前の好きなタイプは゛大人っぽい人゛とでも言っておく。嘘ではないだろう」


「・・・それもそうだな。そうしてくれ、恩に着る」


え?俺なんか感謝されることしたっけ?

むしろ恨まれるようなことだと思うんだけど。

・・・これがイケメンの心の広さって奴か。


そうして俺は一条の好きなタイプを聞き出すことに成功した。

しかし、一条の好きな人が神野先生だったとはな・・・。

嘘をつけない性格なんて大変なもんだな。嘘くらいついたらいいのに。






放課後。

部室に集まった面々に俺は一条のことを話した。


「一条の好きなタイプは分かった」


「え!?すごいじゃん!やっぱりすごいじゃん!」


と天月は俺に言った。

ははは、まあな。俺、すごいんだぞ。

カッケーんすよ、俺。


「で、なんだったんだよ」


城ケ崎も一応は気になるようだった。


「それはな、大人っぽい人だ」


俺はそう言った。

本当は、容姿がよくてアラサーくらいで性格はキツめのドS女教師とでも言いたかったが、さすがの俺もそこまで性格が悪いわけではない。


「大人っぽい人か~なるほどね。でもなんでさわ君には教えてくれたんだろ?」


まぁ、教えてくれたというよりは、誘導尋問みたいな感じだったけどな。

それをこいつらに言う事は出来ないので、ここはテキトーに返す。


「なんでだろうな?俺にも分からん」


完全にすっとぼけってやつだな。


「大人っぽい人がタイプって別に普通じゃん。なんで言わなかったんだ?」


城ケ崎が俺に聞いてきた。


「そこも、、、よく分からん」


「ふ~ん」


一条がそう言わなかったのは、一条のことが好きな人を悲しませることにもなるから、というのもあるのだと思う。大人っぽい生徒なんてそうそういるもんじゃない。

一条は性格もいいから、どんな理由であれ誰かを悲しませることはしたくないのであろう。

ほんっと何から何までイケメン過ぎて腹が立つ奴だ。性格くらいドクズであれ!!



こうして佐伯さんをオカルト研究部に呼び出し、この件は一件落着となった。

めでたしめでたしっと。



・・・とそんなわけにもいかなかった。

どうやら俺が一条にしつこく好きなタイプを聞いていたところを誰かに見られていたらしく、俺のホモ疑惑がクラス内に流れていた。

最悪だった。

「もう俺、この学校に行けないっ!」と逃げ出しそうな勢いの俺だったが、一条が言った「それは誤解だよ」の一言で、その勢いは治まった。

さすが、カーストのトップ。発言力が違うわ。

やっぱ一条、いい奴だよな。イケメンだし、性格いいし、友達多いし、モテるし、ドS女教師が好きだし。

あ、最後のは余計か。むしろ唯一のよくないところだな。


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