虎狩りⅢ
ゴブリンを退けてしばらく歩いた場所に魔虎の巣穴はあった。
巣穴の周りには動物や魔物の骨が無造作に放置されている。
中には肉片の付いた物もあり、死臭に蝿が集っている。
「くっせぇなぁ」
鼻を摘まんだジョンが場違いに間の抜けた声を発した。
「もういつ襲われてもおかしくない位置だ。気を抜くな。」
周囲を警戒するが魔虎の姿は見えない。
「さっさと中に入って倒しちまおうぜ」
ジョンが巣穴に入ろうとした瞬間穴の中に紅く光る二つの点が現れた。
「ジョン危ない!」
光の点がジョンに飛び掛かるのと同時にジョンの前に立ち盾を構えた。
するとガコンという大きな音と共に衝撃でジョンもろとも突き飛ばされた。
目の前では光の点の主が暗闇から出てきて姿を露にしていた。
3mはありそうな巨大な体躯。
上顎には鋭い牙が二本。
瞳孔の開いた紅い眼球。
禍々しさを強調する紫と灰の縞模様。
間違いなく魔虎だった。
「ってて…やっと本命のお出ましかい」
ジョンが立ち上がり剣を構えた。
それを見た魔虎はジョンに視線を定めて威嚇した。
「おい、注意を引き付けるのは俺の役目だろ!お前は下がれ!」
制止を無視したジョンは魔虎に突っ込んでいった。
単純な攻撃を強靭な爪で容易く受け止めた魔虎はもう片方の前肢でジョンを弾き飛ばした。
滅茶苦茶な戦い方じゃないか。
このままではジョンがやられる。
ジョンから注意を逸らすため魔虎に向かって盾に身を隠しながら突っ込んだ。
突進は見事に魔虎の脇腹に当り、魔虎の注意はこちらに移った。
突進を受けたことで怒る魔虎は激しく前肢を叩きつけてきた。
この状態も長くは持ちそうにはない。
盾の扱いには自信があったがこうも激しい攻撃では盾が壊れてしまう。
突き飛ばされたジョンがようやく立ち上がりまた魔虎に突っ込んでいった。
今度の攻撃は魔虎の後ろ足を捉えて傷つけることに成功した。
また注意がジョンへと向きそうになるが、盾で魔虎の顔を叩くことでそれを阻止。
こうして魔虎に一撃、二撃とジョンの攻撃が打ち込まれた。
このままいけば勝てる。
状況は確実に有利になっていた。
そう思った瞬間魔虎は後ろ足をばたつかせて暴れだした。
魔虎の動きはさっきよりも激しく不規則に乱れたものに変わった。
「これでは近づけない」
暴れる魔虎に圧されて後退を余儀なくされた。
それはジョンも同じようで向こうも攻撃できずにいる。
途方に暮れた所で何を思ったかジョンがこちらに駆け寄ってきた。
「ホフマン!連携技でいくぞ!」
「連携技!?ジョン、何を言っているんだ!?」
ジョンとの連携技など編み出した覚えはない。
今はふざけている場合ではないというのに。
こうしているうちにもジョンはどんどんこちらに近づいている。
そしてジョンは勢いよくジャンプしてきた。
「盾を構えろ!」
言われるままに上から来るジョンに盾を構えるとジョンは盾に着地した。
「いくぞ!俺を奴に飛ばせ!」
何がなんだか分からなず混乱するままにジョンを魔虎の方へと飛ばした。
それに合わせてジョンも飛び上がり魔虎目掛けて落下した。
ジョンが降り立ったのは魔虎の上だった。
ジョンは暴れる魔虎に必死でしがみつき剣を叩きつけた。
攻撃を受けた魔虎は不規則に暴れていた時よりも上に気がいっている。
「今だ!ホフマン、腹をやれ!」
ジョンの掛け声に応じて隙のできた魔虎の懐に入り込み腹に剣を突き刺した。
そのまま滝のように流れてくる魔虎の血を浴びながら腹を裂き魔虎を倒すことに成功した。
「へへへ……ほらみろ、勝てただろ」
得意気にしているジョンにこちらも応えてやった。
「無茶苦茶だったけどな」
試験はもちろん合格。
それから二人は数々の戦場を越えてフリーベルに配属された―――




