王都21 歓迎会は
歓迎会は先輩方が企画したものだ。昼食会と違うのは開催における費用の捻出先だろうか。前者はこの学院が負担しているが後者はここを卒業したメンバーが少しずつ出してくれたものや、将来自分の護衛にと期待する貴族達からの寄付としてのものもあるそうだ。中にはここの出ではないがそれなりに大成している有名な人物も個人的にお金を出してくれたとか。こちらはどうやら学院長を訪ねてきたついでにたまたま知ったからだそうだが、歓迎会の規模が大きくなる程の資金をポンと出せるとは、なんと素晴らしい人物か。
……それだけ俺達が期待されているということでもあるのか。重いな。
「しっかし、よくそんな事を知ろうと思えるな。お前ら一応第3アリーナで一戦してきたんだろ? 元気だなぁ……」
ここまでに起こった事をかいつまんで話すと
歓迎会会場だと言われて第3アリーナへ飛ばされる
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第3アリーナは会場などではなく、俺達を待ち構えていたのは大量の魔獣、魔獣……
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戦闘数は一人当たり20戦。予定では5戦ほどだったらしいが楽々倒されるのでムキになった先輩の誰かが追加投入したそうだ。無茶苦茶だ
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先輩が満足したところで本当の会場である第1アリーナへの魔術陣が現れる
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第3アリーナで豪勢な料理が置いてあるところに目を向けると院内を案内してくれた先輩を発見。食事の豪勢さに疑問を持っていろいろ聞き出す。食べながら(←今ここ)
「まあサボちゃんレベルの魔獣はいなかったのでそこまでヘトヘトになってはいませんから。それにここまで豪勢な料理を用意するには実際かなりの金が必要ですよね? 普通疑問に思いますよ」
「そうか。確かに戦闘試験でサボちゃんと戦う第4アリーナに回されるような奴にとっては手応えがないかもしれないな。今度からもう少し強い魔獣をあてがうように進言しておこう。
それはそうと、お前の言い方では俺達の懐具合を侮っているみたいだな。そうだろ?ん?」
俺の言い方がまずかったか? 先輩は邪推しすぎだと思う。
「いや〜、卒業したばかりならそこまで金は持ってないでしょう?」
「おいおい、確か君は……ゼノンだったか。ここで肯定してどうするよ。普通はご機嫌とりじみたセリフを言うだろ。これからの生活が厳しくなってもいいの?」
本当だよ! もうちょい相手の意図を察しろよ。あれは間違いなく『ヘコヘコする新期生を前に優越感漂わせた先輩の図』をやりたいがための前振りだろ。
「おいシルヴァー……お前の言っている事に間違いはないんだが、正直すぎだ、言葉を飾らなすぎだ! 先輩に対する敬意のかけらも感じられねぇじゃねぇか!」
おっと、声に出していたか。……ちょっとのってみようか。
ということで俺は跪いて過剰演出気味で言葉を返す。
「……すみません。冗談です。頼みますから進言しないでください」
「ふっ、先輩は侮るものじゃねぇぞ。心しとけ」
「……なにこの茶番」
わふ《よく寝た。シルヴァーは変なものでも食ったのか?》
「シルヴァーさんって意外とノリがいいのね」
うるさい。俺だってここまで乗るつもりはなかったんだよ。酔ったのかもな。
「あー、もういいぞ、シルヴァー。疑問に思った事はこの後もどんどん聞いてくれ。それと、酔いやすいなら酒は控えておけよ。多分明日の授業で戦闘することになるかもしれない」
「「了解です」」
「分かりました」
とりあえず聞きたいことはすべて聞けたな。余計な茶番を挟んでしまったが先輩いわく、ノリがいいのも冒険者社会では大切らしい。その点では俺の返しは合格ラインだそうだ。
さぁ、あとは思いっきり楽しむだけだ。
「先輩、オススメは何ですか?」
「むぐ? むぐ……っ、どれも美味いぞ。まぁ、そこの肉はスープと一緒に食べたほうがいいかね。ほらあれは割と脂っこいから食べ慣れていないならスープもつけておけ。ここにある料理は不味いものなど一つもないぞ」
「じゃあ、食べに行こうよ!」
「ああ」
「私もご一緒してもいいですか?」
「「構わない(よ)」」
俺達は会場のあちこちにある食事スペースを回った。アリーナの北側には驚いたことにデザートのブースがあった。これには本当に驚いた。これだけの量を用意するのにどれだけのお金がかかるだろうか。
「きゃー! ケーキがあるわ! あ、これはタルトね。チョコレートもある!」
デザートブースについたらラヴィさんのテンションが大変上がった。女の子らしい反応にどこかほっこりする。女の子のこう無邪気な姿は滅多に見れないんだよな。冒険者って女性は居るにはいるがやっぱり男が多い。
「あ、私ばかりはしゃいじゃったわ。ごめんなさい。あら? ゼノンくんはいなくなっちゃったのね。シルヴァーさんは食べないの? 甘い物が苦手ならこれとか食べれるんじゃないかしら。私のオススメよ」
「じゃあもらおう。……これはなんなんだ?」
「コーヒーゼリーよ。ケーキとかは苦手でもこれは食べれると男性に人気らしいわ」
へぇ……そんな物があるのか。一口すくって口に含んでみる。確かに食べやすいな。ゼリーだから口の中があまりベタつかないのもいい。
「美味いな」
「そうでしょ。ケーキにコーヒーもなかなかいい組み合わせなんだけど、コーヒーゼリーも美味しいのよね。専門店に行った時は目移りしちゃって大変だったわ」
「専門店なんてあるのか」
デザートの専門店ね……女性でいっぱいかカップルでいっぱいか。少なくとも男一人じゃ肩身がせまいこと間違いないな。俺は一人じゃ行けないな。かといってゼノンと行くのもなぁ……。
「ええ、ここ王都にあるわ。確か、東街区と西街区にそれぞれ一店ずつあったと思うわ。東街区は貴族向けだからちょっと値段が高いのよね。でもチョコレートはそこしかないと聞いているわ。西街区はそこまで敷居が高いわけではないから、いつも混んでいるわ。
……それに、一人で行くのも寂しいのよね。あ、そうだわ。シルヴァーさん一緒に行ってもらえないかしら? もちろん余裕ができたらでいいわ。」
おお! まさかラヴィさんから言ってもらえるとは。俺も興味はあるんだが、一緒に行ける人がいないから渡りに船だ。男一人で行くのも寒々しいだろうしな。
「ぜひ、むしろこちらからお願いしたいくらいだ」
「ふふっ、約束よ!」
本当に楽しみにしているんだなぁ。と思えるほどラヴィさんは楽しげに笑っていた。俺も楽しみだ。
さて、そろそろ宿に戻らないと。ゼノンやアルはどこだ?
「どうしたの?」
「あ、いや……そろそろ帰らないとならないと思ってな。ゼノンとアルを探しているんだが」
「あら……もうそんな時間なのね。私も帰ろうかしら。っと、それよりゼノンくんにアルくんね……あ、あそこにいるのがアルくんじゃないかしら?」
ラヴィさんが指差した先を見ると、確かに子犬姿が見えた。あれだろうな。
わふーわふ《その香ばしい肉をもっとくれ》
「おいおい、もうそれくらいにしておけよ。うっかりあげちゃったがそれはラム酒漬けだぞ」
……おい、何やってんだ、アルは。それにコックも酒は不味いだろうよ。
「アル、そろそろ帰るぞ。それくらいにしておけ」
わふ……《仕方がない》
うん、割と素直に従ってくれて良かった。それにしても、酒の匂いが強い。どれだけラム酒漬けのを食べたんだ? もっとしっかり見張っておくべきだったか。
「さ、1匹確保。あとはゼノン1人なんだが……見当たらないなぁ」
「どこかで休んでいるのかもしれないわ」
「ああ、そういえば休憩室があったな」
休憩室だと教えてもらったのは特別棟の2階である。だから2人と1匹はアリーナを出た。
「あ、いた。ゼノン、大丈夫か?」
「うーん、ちょっと飲みすぎた気がするけど、多分大丈夫。帰るの?」
「ああ。……歩けるな?」
「うん、大丈夫。そういえば、ラヴィさんはどこに宿を取ってるの? それとも、もう寮に入った?」
「まだ宿にいるわ。【闘牛の休息亭】よ」
なんという偶然か。同じ宿を取っていたようだ。
「同じ宿を取っていたんだな。それなら俺達と一緒に行くか。その方が安全だろう。もう暗いから女性が夜に1人で歩くのはまずいだろうしな」
「そうね。ありがとう。送り狼にはならないでね?」
当たり前だ。そんなことをしたら信頼が地に落ちるじゃないか。




