王都7 やり過ぎたストレス発散
今回は視点がコロコロ変わります。
さて、討伐だ! やれ、討伐だ! それ、討伐だっ!!
「おーい、ヨシズー! 釣ってきたぞ!」
俺の後ろには大量の獣、魔獣、魔獣。少し森の奥まったところを駆け回ると面白いくらい簡単に様々な獣や魔獣が追いかけてくる。ちなみに俺達がいるのは王都から一時間ほど歩いた所にある森のちょっとした広場みたいな所だ。この辺りにしか強目の魔獣共はいないらしい。ヨシズのストレス発散にここまで来たのだ。
「おし! やるぞ!」
「っし!」
ガルルゥ!
ヨシズに合わせて反転し、攻撃する。ここの魔獣は強いとは言ってもそこまで脅威には感じない。まぁ、ここまで群れていれば一人だと死んでいたと思うがな!
来てから大分経っているがサクサク狩れている。そう、笑えるくらいに!
まず、ヨシズが魔術併用の盾で群れている奴らの進行を止める。ここで後続の奴らは多少混乱してくれる。その隙に俺とアルは正面から、ゼノンは死角からそれぞれ攻撃していく。
「これで三セット目だよ! そろそろいいんじゃない?」
おっと。もういいか。上がり切った変なテンションでまた森に突入する所だった。
今回はちゃんと剥ぎ取りもしたので時間がかかった。剥ぎ取りしていなければ……もう三セットくらいはやっていただろうなぁ。またカウンター嬢を泣かすことになっていたかもしれない。うん、それは流石に申し訳ないな。
「それじゃあ、帰るか。結構狩れたな」
「うん。王都の近くの森なのに結構いたよね」
「流石に普段はここまでいないよな。……ってことは報告案件だな」
「「任せた!!」」
ぐる
「………どっちみちお前らも来ることになると思うが?」
今回狩ったのは三セット。一人一セット分アイテムボックスに収めたから売却カウンターには三人とも行かなくてはならないだろう。アルは特にアイテムを持てるものでも無いので放流だ。
「ちょっと言ってみただけだ。……いや、待てよ? 森がおかしいのは俺たち意外にも気付いた奴がいたんじゃないか?」
「ああ。確かにいたかもなぁ。先に報告してくれたらいろいろ省けて楽なんだが」
森を駆け回って魔獣などを引きつけていた時のその異様な光景は遠目にも分かったかもしれない。だからと言って報告しなくて言い訳では無いのだが。
森にいるはずの魔獣達は恐れをなしたのか、はたまたシルヴァー達が狩り過ぎたのか、あまり多くは見られなかった。警戒しつつものんびりと他愛ないことをつらつら話しながらクナッススへ戻るために森の中の広場を出て行く一行。
は、置いといて。
実はシルヴァー達が考えた通り、あの狩の様子はバッチリ見られていた。
「な……! お、おい、あれ見ろよっ!」
「うん? 何だ……あれは」
銀色の髪を持つ人? が数え切れないほどの魔獣や獣に追いかけられている。夢か、幻覚か。だが、瞬きしても消えることはない。目をこすっても、頬を抓っても……。
「現実か。って、ヤバイだろあれ。こっちに向かってはいないけどもし王都に進路をとったら……!」
「急いで帰って報告するぞ!! 狩りは中止だ、皆、クナッススへ急げ!」
「「「おう!」」」
途中に休憩を入れつつもいつもよりずっと急いで戻ってきた王都クナッスス。彼等はようやくギルドに着いた。門番が身分証確認をしている間でもあの群れがここに進路をとったらと気が気じゃなかった。
「よし、通っていいぞ」
「はいよ! 皆、いくぞ」
まるで決戦に向かうが如く切羽詰まった表情で駆けて行ったグループを見送りながら門番は首を傾げる。
「……あいつら一応Bランクパーティだよな。なのにあんな表情になる様な事なんてこの近くにあったか? ……あ、身分証の提示をしてくれ」
門番にとって王都は今日も平和であった。
*******
バタン!
「ハァー、ハァー」
「「どうした! 何かあったのか!?」」
突如ギルドに響いた音に皆の視線が向かう。そこにいたのは息を切らしているあるBランクパーティ。その異常な様子にドアを乱暴に開けた事を咎めることも忘れ何があったのか問う。ゴクリと唾を飲む音が聞こえるようだ。
「アイネの森で数え切れないほどの魔獣や獣が誰か人を追いかけていた。遠目には銀色っぽい髪を持っているように見えたが……ギルマスに伝えたい」
「話は分かった。まだ日は高いから誰かを送り込める。誰か行ってくれるか? 特別に馬車を出そう」
たまたま話が聞ける所にギルマスはいた。実はコッソリ逃げようとしている所だったのだが……到底無視できない話だったので仕方なく指示を出して行く。
「俺達が行こう。幸いメンバー全員居るしな」
そう言って立ち上がったのはBランクの中でもトップのユーグ。それと実力があるもう二パーティ。
「俺らも……」
報告に来たメンバーも行くと言ったが今は休ませるべきだと誰の目にも明らかである。
「お前らはここまで来るのに相当体力を消耗しているだろ。後は俺等に任せろよ」
王都周辺で大量の魔獣が見られたというのは大事件である。王都には多くの民が住んでいるのだ。もし魔獣が大挙して押し寄せて来たら……おそらく守るのが精一杯になってすぐに限界が来るだろう。だから報告があったら即座に倒せる人員を送らなくてはならない。しかし、先陣を切る者は落ち着くまで休憩を取ることが難しいのだ。王都まで戻って来て疲労している者達に先陣を切らせるわけにはいかない。
「そうか…恩に着る。回復したらすぐに向かうからどうか持ち堪えてくれ」
「もちろん」
先に向かうのはユーグ達のパーティともう二パーティに三人のギルド職員である。戦闘は冒険者組に任せて、ギルド職員は王都への連絡係になる。無論、襲われても対処可能な人選だから連絡したら討伐に参加することになる。
馬車に乗って行くユーグ達を見送る。皆最悪の想像が現実にならないようにと祈りながら、ある者は自分が行けないことを歯噛みしつつ、ある者はいつでも動けるように計画を立て……。
「気を付けて行ってくれ」
「ああ。行ってくる。俺達は死ぬつもりは無いからな」
先陣を切りにいく者達を前に表情を曇らすことはしなかったが皆一様に不安を感じていた。魔獣や獣が大発生することは過去に何度かあったらしいがそのダメージは計り知れないほどだったという。報告が事実ならそれは大発生の前兆であると言えよう。
そんな(シリアスな)中微妙に場の雰囲気に合わせられない人物がいた。ギルドマスターである。実は彼はドルメンのギルド長からシルヴァーの規格外さの報告を受けていたのだ。
曰く、自身を囮に十何体かのピギーを狩ったとか……
まさかな? ヨシズもいるし、変なことにはなっていないはずだ。
ヨシズがパーティ組むと言ったんだ。実力はあるに決まっているし、フェンリルもいるし……あいつら共に始祖だし。本人たちは知らないみたいだが。……しっかり研鑽を積んでいればそうそう負けることなど無いはずだ。
追いかけられていたっていうのがシルヴァーじゃない可能性だって……ないな。むしろあいつしか考えられなくなってきた。ギルマスが先入観を持っているのは危険なのに。
ギルドマスターにはシルヴァー達が死んでいるなどの考えはない。しかし、流石に長年連んで来たヨシズが率先して無茶な狩りを行っているとは考えもしなかった。
送り出したギルド職員の連絡が来るまで一人悶々と考え続けるギルマスであった。




