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名無しの底辺は異世界で成り上がる  作者: ポラロイドフラッシュ
第一章 ~乳児期~ スラム街の赤さん
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迷子になった訳だが

「迷子とかないわー」


俺は見覚えの無い風景に一人呟いた。

というか迷子じゃないわこれ、もはや遭難だわこれ。だってここ森だし。

やっぱりノッポかチビでも連れてくれば良かったよ。でもレベル上げ目的で来てる訳だし、あの二人がいたらゴミみたいに邪魔だからなぁ。ルッカは東スラムに寄越しちゃったし、何より全く安心して背中を預けられないから面倒なのよねあの子。やれやれ、あ、狼さんだ。


「南無」


転移して、手刀で首をはねた。手刀は打撃に非ず、斬撃よ。

俺の手刀がなぞった断面から盛大に血が噴出した。噴水みたいに周りの草や木に赤い液体が降りかかる。お、これは美味しい狼さんだったかな。

これまでのレベル上げの経験上、血の噴出し方が大袈裟であればあるほど見返りの経験値も多い事が多いっぽいのよ。

瞬間、体の中をぞわりと何かが通っていく感覚を覚える。やったね白髪さん、レベルが増えるよ。

そういえば白髪さんが音信不通になってしばらく経つね。

お仕事忙しいのかしら。まぁどうでもいいけど。

俺は目の前に転がる死体の下に空間魔法によるアイテムボックス的なポケットを展開させた。ここに入れた物質は一切劣化、風化しないでいつまでも取って置けて、いつでも取り出す事ができるっぽい。非常に便利な魔法だね。今のところ許容量もまるで底が知れないしね。でもこれには生物は殺してからじゃないと収納出来ないみたい。これにはね。ちなみに空間魔法で出来る主な事は、


レベル1、アイテムボックス

レベル2、目に見える範囲での転移

レベル3、長距離での転移(一度訪れた事がある場所に限る)

レベル4、手に触れた人間も自分と一緒に転移させる

レベルMAX、全てを吸い込む次元の狭間を出現させる(取り出し不可)


との事です。まぁこの他にも応用で細かい事も色々とできるけどね。

というかレベルMAXのやばすぎ。1回だけ森の中で使ってみたけど展開した瞬間驚きの吸引力でそこら一帯、何も無い更地になっちゃったよ。

しかもこれに関しては取り込む物の生死は問わないみたいで誰彼関係なく吸い込んじゃうみたい。吸い込んでいかれる動物達の断末魔が心地よかったね。でも殺してはいないから経験値は一切入らないのよね。吸い込まれた生物は死ぬことも出来ないまま、次元の狭間を永久に彷徨う事になるみたい。うは、胸熱。

というか長距離転移でスラムに帰ればいいだけなんだけど、何かそれだと負けた気になるんだよね。それに移動方法を全部転移に頼っちゃうと中々イベントも起きなくなっちゃうだろうし。それは退屈だしな。

そんな事しちゃってるとあれだ、家に引きこもったニートがたまに近所のコンビ二に行っただけで外出した様な気になってしまう現象が俺にも起きてしまうやもしれない。うんうん子供の頃から引きこもり根性がついても困るしね。

転移して現場に行き、転移して家に帰る。

何ともそれじゃあ味気なくもあるしなうん。

それに重ねて言うがイベントだよ。こういう迷子になった時は総じて盗賊やら魔物やらに襲われた商人やら冒険者との遭遇イベントの示唆である場合が多いもんなんだよ。そんな楽しそうなイベントをみすみす見過ごしてたまるものか。

俺は絶対転移しないからなうん。


「くそ…ここまでか」


「どうして深部でもないこんな所にこんな魔物が…」


うん満身創痍に身を寄せ合っている男冒険者二人とオークっぽいオーク発見。つかでかっ!でかいわー、オークでかいわー。

しかしまぁこれこれ、こういうの待ってたんだよ。

もちろん奴隷商を助けてかわいい奴隷GETだぜ!てのも乙だけどね。まだ俺って赤ちゃんだからね。そういうのはもうちょい成長してからでもいいからね。

まぁそれではいっちょ助けましょうか。

見ると、冒険者二人はもう覚悟を決めているのか、目を固く閉じている様だ。オークが持っていた棍棒を振り上げ、そのまま躊躇する事無く、その一振りを彼らの頭に振り下ろす、その瞬間、


「うわ!血でぬるっぬるですねこの棍棒。ばっちいです」


彼らの頭の上に立つ様に転移した俺は、その凶悪な一撃を片手で受けきりながら、にぃっと笑った。

受けた瞬間、足場が微妙にぐしゃりとした気がしたが気にしない気にしない。

俺はそのまま棍棒に横から蹴りを叩き込む。

バキョっと小気味良い音を奏でながら棍棒が粉々に粉砕された。

オークは突然の出来事に気味の悪い声を上げる。俺はそれをまるで無視しながらオークの顎下に転移すると、また、思いっきりそこを蹴り上げた。

オークの5メートルはあろう巨体が綺麗に空中に投げ出される。

飛べないオークはただのオークとでも言いたいのかね。

ふむ、しかし首から上がぶち壊れないところを見るとやはりオーク、耐久力は相当頑丈という訳だ。こりゃいい、ボコり甲斐があるね。

俺は飛んだオークを追いかける様にその先へとまた転移する。


「ははは、何処に行こうと言うのかね!」


言いながら空中で更にオークを殴る、するとオークが今度は逆の方向に飛ぶ。また転移、蹴る。逆に飛ぶ。転移、殴る、逆に飛ぶ…(以下略

いやぁ、やっぱ1回やってみたいじゃないかこの戦い方。あと投げた柱に乗って移動とかね。

という訳で一通り楽しんだ後には、ボロボロになったオークの死体が残りましたとさ。いやあれだけ玩具にして原型が残ってるって凄いねオークさん。

お、レベルが一気に上がってる感じがする。やったね。

そんな風に俺がオークの死体を見ながら感心していると、突然後ろから声をかけられた。

あ、忘れてた。


「き…君は…」


うわ、なんつう複雑そうな顔してるのあんた。

助かったんだからもっと喜んでいいのよ。


「いきなりの事で混乱するのも分かりますが、まぁ良かったじゃないですか、とりあえず命が助かって」


俺がそう言うと、二人はすぐにハッとした顔になる。

そしてホッとした顔になった。うむ。


「…そうか、君が噂のスラムの赤さんって奴か」


あ、俺ってやっぱり有名人?

するともう一人男が焦った様に声を上げた。


「ッ!…じゃあこいつがエドガーを…」


おぉ、怖い怖い。そんな目で見つめるなよ。興奮…もしないしね。


「そうです私が赤さんです。アナタ達はあのイケメン糞野朗の知り合いですか?」


「イケメ…あぁそうだ、エドガーは俺たちのパーティーの一員だった」


「ふん…お前がエドガーを殺したせいでこのパーティーの戦力はガタ落ちでこのザマだよ」


ふーん。


「それは悪いことをしましたね。でも先に剣を抜いたのはあっちでしたし、私は降りかかった火の粉を払っただけです。だから謝りませんよ」


まぁ先にアジトに殴りこみかけたのは俺だけどな。


「それにたとえあのイケメンがいた所で今回のオークはアナタ達には手に負えなかったと私には思えますが」


そんな俺の言葉を聞いて、片方の冒険者が声を荒げる。


「エドガーなんてどうでもいいんだよ!アイツは確かに腕の良い剣士だったが他に代わりが利かないって程でもなかった!問題なのはノコだ…エドガーがいないとアイツを使う事が出来ないからな。ノコさえいればオーク相手にだって遅れは取らなかったさ…」


そう言って、顔を伏せてしまった。

それを見て、もう片方も顔を伏せる。

ノコ?名前的にはかわいい女の子っぽいよね。イケメンに付き従ってた女の子かな?口ぶりからすると、とっても強いみたいね。流石イケメン。


「そのノコっていう方はそんなに強いのですか?魔法使いですかね」


「…ノコは魔術師だ。流石にお前と違って魔法使いではなかったが…ここら辺の魔術師の中では間違いなく屈指の実力を持ってるだろうな」


あれ、魔法と魔術って違うんだね。まぁいいや。


「まぁ私たちには色々と確執がありそうではありますがね。今はとりあえず、やっぱり助かった事を喜ぶのがいいと思いますよ」


そう言って、俺はにっこりと笑った。















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