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名無しの底辺は異世界で成り上がる  作者: ポラロイドフラッシュ
第一章 ~乳児期~ スラム街の赤さん
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スラムは俺の物な訳だが

ここはとあるスラムの小さな建物。

今日も朝からスラムの子供達の元気な声が響きわたる。


「「「「「赤さん!おはようございます!!」」」」」


はい皆さんおはようございます。


「赤さん!お飲み物をお持ちしました!」


はいはい、どうもありがとうございます。


「赤さん、今日も最高にキュートですね!」


ふふ…そういうあなたも最高にクールですよ。


「あぁん赤さんって本当にかわいいわ。こんなに可愛いのにとっても強い魔法使い様なんてステキ!」


「あぁ!ずるい!私も抱っこしたい!!」


「ちょっと!今日は私が赤さん抱っこする番でしょ!ちゃんと順番守ってよ!」


こらこら、私は一人しかいないのですよ?取り合わないで皆で仲良く愛でて下さい。


「「「はーい」」」


いや参ったね。俺のカリスマがやばい。我ながら慕われ方がぱないのぅ。

という訳でね?俺、スラムの子供達のボスになりました。まだ赤ちゃんだというのにねぇ。

何でもスラムでは力が全てらしく、今までボスとして君臨していた例の首無し死体…エドガーとかいったか?まぁどうでもいいや。

とにかくそいつを俺が倒したのだから、俺が新たなボスって事でみんな納得というかそうしてくれないと困るとの事だった。

元々エドガーは本当にスラムの子供たちの殆ど全員に嫌われていたらしく、一人を除いて俺がエドガーを殺した事を咎める者はいなかった。その一人についてはまた後で。

どうせまた今日もすぐ絡んで来るに決まってるからね。

俺としても元よりこのスラムは自分の物にするつもりだったから、結果としてこれは渡りに船なお話だった訳でね。

とりあえず俺はこのスラムを支配してみる事にしたのだった。ふふふ…と、危ない危ない、ナイフが飛んできたね。ちゃんとキャッチしないとね。

俺は今日も今日とて死角から飛んできたナイフを指先だけでキャッチした。もはやこれがないと一日が始まらないといっても過言ではないねうん。ナイフは俺を抱っこしていた女の子の肩口を掠める様に飛んできたので、女の子は完全に硬直している。周りの女の子も唖然とした様子だ。


「あいルッカさんもおはようございます。今日も非常に非情なナイスなナイフですね」


言いながら、俺は欠伸混じりにナイフを前を向いたまま後ろに軽く投げ返した。


「ふむ。この角度からでもダメか。一体お前の視野はどうなっているんだろうな」


投げ返されたナイフを事も無しに受け取ると、ルッカは大袈裟な溜息を吐いた。

ほら、俺って気配察知MAXですから。


「私に死角はありませんから。というか仮に当たったとしてもこんな物じゃ掠り傷くらいしか出来ませんよ私」


「なるほど。では次回からは何か毒でも見繕っておくとしようか」


うわ、やべ。状態異常耐性も取っとかなきゃだなこりゃ。

そこまで俺とルッカが剣呑な会話を繰り広げていると、俺を抱っこしたまま固まっていた女の子がガクブル状態で口を開いた。


「ルル、ル、ルッカさん、お、おは、おはよご、ござ」


「ん?あぁおはよう。悪かったな、お前たち相手に鼻の下を伸ばしてる頃合なら、こいつも油断して大人しく殺されてくれると思ったんだ。許せ」


「「「は、ははははいッ!」」」


赤ちゃんに大人しさを求めないでおくれよルッカさん。

女の子達は必死に笑みを作るが、かなりぎこちない表情になってしまっている。

しかし当のルッカはそれを全く意にしない様子だ。

あ、女の子達逃げちゃった。俺を置いていくなよな全く。まぁいいや。

俺は気を取り直して視線を女の子達の背中から、ルッカに向け直す。


「ではルッカさん。朝食でもご一緒にどうですか?」


「そうだな。そうさせてもらうかな」


俺とルッカは並んで食堂へと向かった。











食堂は今日も朝から満員御礼で、威勢の良い声がそこかしこで響き渡ってた。

この建物、俺が創造の力で劇的ビフォー●フターの匠ばりのスーパーリフォームを施したからね。

食堂なんてこ洒落た物も実装積みなんよ。食材ももちろん俺による支給品だ。マジ創造便利。

そして食材を調理するシェフ様っていうのはね。


「はい、シェフの気紛れっす定食おまちどうっす!次のお客さんどうぞっす!って赤さんじゃないっすか!おはようございますっす!何を作るっすか?」


うんうん。今日もいい舎弟してるねノッポさん。あ、ノッポさんはまずいか。まぁいいや。


「はいおはようございますノッポさん。今日も大盛況じゃないですか」


「はいっす!お…私の料理をみんながあんなに嬉しそうに食べてくれて私も嬉しいっす!」


ノッポはにっこりと笑いながらそう言った。

ちなみにノッポには俺という一人称は止めてもらったよ。だって女の子だっていうんだもん。俺っ娘はあんま好きくないのよ俺。始め薄汚れててノッポでおっぱいも無くて目が細っそかったからわたくし全く気付きませんでしたねいや一生の不覚。改めて見ると咲の文同さんを小顔エステに通わせた感じだね。さっぱり梅味って感じだ。でも口調はステルスの方だけどね。いや全然いけるいける。


「チビも楽しそうに働いてるっす!これも全部赤さんのおかげっすね!」


そのまま、ノッポが嬉しそうに指を差した方を見ると、幸せそうに料理を食べる子供達の間をチビがチョロチョロと料理を運んで非情に忙しそうだ。しかしその顔はかなり楽しそうにも見えた。

全く、働く事が楽しいとか頭どうかしてるとしか思えないけどね俺は。

俺はやや呆れつつも、注文を取る事にした。


「それは何よりです。ちなみに今日のおぬぬめは何でしょうか」


「今日はシェフの気紛れっす定食がおすすめっすよ!豚肉の生姜焼きとコーンスープと中華風サラダのセットっす!」


いくらなんでも気紛れ過ぎやしないかその献立は。料理自体は教える事は出来ても、組み合わせの観念を教える事は難しかった様だ。まぁいいや。おいしそうだし結構結構。


「じゃあ私はそれで、ルッカさんもそれでよろしいですか?」


俺はルッカに確認を取る。


「あぁ、それで構わない」


「…あ、ルッカさんもいたっすね」


そこでノッポは初めてルッカの存在に気付いた様だった。その表情はあまり好ましい物ではなかった。


「私がいたら何か問題でもあるのか?」


ルッカはその仏頂面を更に顰める。顔こわっ。


「あ…い、いえ!何も問題ないっす!気紛れっす二人前っすね?すぐ作るっす!待ってるっす!」


ノッポは逃げるように厨房に入っていってしまった。

やれやれ、料理が来るのを気長に待つとしますか。







総合評価200突破おめでとう。

自分で自分を祝う作者です。

これからもご愛読して頂かれば幸いです。


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