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玄武の渡り人 ~帰還できるのは、ただ1つの大陸だけ~  作者: かにかま
第2章 玄武門

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キメラ

その向こうには青空が広がり、遠くに建物らしき影も見えた。


「玄武街かな!」

サクラが目を凝らす。


その表情が変わった。

「待って。あそこにいる」


5人が足を止める。


石門の手前。

古道の出口を塞ぐように、大きな魔物が伏せていた。


獅子の頭。

山羊のような胴体。

背中には大きな翼があり、尻尾の先には蛇の頭が付いている。


魔物がゆっくりと立ち上がった。


「うわ…強そう」

シオリが杖を握り直す。


ユースケはヘルパーを確認した。


【キメラ】

【レベル25】


「レベル25。ボスみたいだね」


サクラが炎鱗の弓を構える。


キメラが前脚で石畳を掻いた。

獅子の口から低い唸り声が漏れ、蛇の頭もこちらへ向く。


「確認するね」

ユースケがキメラを見る。


「アナライズ!」


【弱点属性:なし】

【耐性属性:なし】

【状態異常耐性:毒、麻痺、睡眠】


「弱点も耐性もなし。毒、麻痺、睡眠には耐性あり」


「弱点なしかぁ」


シオリが少し残念そうに杖を構える。


「俺が前に出る!」


サトルが鉄壁の盾を構えた。


「無理はしないでね」


「おう、任せとけ!」


キメラが地面を蹴った。


「速い!」


ドンッ!


巨体が鉄壁の盾へ激突する。

サトルの足が石畳を滑った。


「ぐっ…!」


続けて前脚が振り下ろされる。


ガンッ!


盾で受ける。

間を置かず、獅子の牙が迫った。


「ガーディアンスタンス!」


淡い光がサトルの身体を包む。

腰を落とし、噛みつきを正面から受け止めた。


「重いな…!」


ランが横へ回り込み、拳を叩き込む。

サクラの矢も脇腹へ突き刺さった。


ユースケは炎鱗の大剣を振り上げる。


「グランドインパクト!」


重い1撃がキメラの前脚へ叩き込まれた。


「グオオォッ!」


巨体が揺れる。


ユースケは表示を確認した。

「入ってないか」


攻撃力低下は発生していない。


「いくよ!」

シオリが杖を向ける。

「アイスバレット!」


氷弾がキメラの胸へ直撃した。

巨体が揺れたが、まだ余裕がある。


キメラが身体をひねった。


「サトル、後ろ!」

ランが声を上げる。


蛇の頭が盾の脇から回り込む。

サトルが身体を引いたが、間に合わない。


ガブッ!


蛇の牙が腕へ食い込んだ。


「ぐっ!」

サトルが斧で蛇の頭を振り払う。


「サトルさん、大丈夫ですか?」


「防御力が下がってる!」


その直後、キメラの前脚が振り下ろされた。


ガンッ!


「ぐあっ!」

サトルの身体が大きく押し込まれる。


「ヒール!」

ヒナの回復魔法が飛んだ。


「サトル、代わるわ!」

ランが前へ出る。


「まだいける!」


「そのまま受けるのは危ないわ。下がって!」


「…分かった!任せた!」


サトルが後ろへ下がる。

ランが入れ替わるようにキメラの正面へ入った。


前脚が迫る。

ランは横へかわした。


続けて獅子の牙。

身体を沈めて抜ける。


蛇の頭が横から飛びかかった。


ランは後ろへ跳び、牙をかわす。


その間にヒナがサトルへ杖を向けた。

「キュア!」


淡い光がサトルの身体を包む。


「戻った!」


「良かったです」


「助かった。ありがとうな!」


キメラが大きく翼を広げる。


ブワッ!


激しい風が石畳を吹き抜けた。


「くっ…!」

ランの体勢が崩れる。


そこへ前脚が迫った。


ドンッ!


「ランさん!」


前脚が身体を捉え、ランが石畳を転がった。


「ヒール!」

ヒナがすぐに杖を向ける。


だが、キメラは止まらない。

倒れたランへ獅子の頭が迫った。


「させるか!」

サトルが割り込む。


ガンッ!


鉄壁の盾が牙を受け止めた。


「こっちは俺が抑える!ラン、下がれ!」


「助かったわ」


ランが距離を取る。

ヒナの光が身体を包み、HPが戻っていった。


キメラが低く唸る。


獅子の口が大きく開いた。

喉の奥に赤い光が集まっていく。


「何か来る!」

サクラが声を上げる。


次の瞬間。


シュンッ!


細い赤光が一直線に走った。


サトルが身体を横へずらす。

熱線がすぐ脇を通過し、後方の石壁へ突き刺さった。


ドンッ!


石壁の一部が赤く焼け、砕け落ちる。


「危なっ!」

シオリが目を見開いた。


「まともに受けたくないね」

ユースケがキメラを見る。


「もう1回試すよ」


炎鱗の大剣を構え、横から踏み込む。

「グランドインパクト!」

重い1撃がキメラの胴へ叩き込まれた。


【キメラの攻撃力を下げました】


「入った!」


キメラが振り返り、前脚を振るう。


ガンッ!


サトルが盾で受け止めた。

「さっきより軽いな!」


「いい感じ」

ユースケが距離を取る。


キメラが突然サトルから離れ、後方へ駆け出した。


「こっち来た!」


サクラが距離を取る。


弓を引いた。


「ピンニングショット!」


矢がキメラの前脚へ突き刺さる。


だが、速度は変わらない。

「入ってない!」


サクラが横へ跳ぶ。

キメラの爪が直前までいた石畳を抉った。


「こっちは俺だ!」

サトルが追いつき、盾を打ち鳴らす。

キメラが再びサトルへ向き直った。


その間にユースケは炎鱗の大剣をしまい、シルバーソードへ持ち替える。


「次はこっちを試すよ」

キメラの側面へ回る。


「アーマーブレイク!」


剣が胴を斬りつけた。


【キメラの防御力を下げました】


「入った!」


ランの拳がキメラの脇腹を捉える。

先ほどより大きく巨体が揺れた。


「効いてるわ」


「撃つよ!」


サクラの矢が続く。


キメラが大きく吠えた。


獅子の口に再び赤い光が集まり始める。


「また来る!」


全員が射線から外れる。


シュンッ!


熱線が石畳を焼きながら一直線に走った。


その直後、キメラがサクラへ向かって駆け出す。


「また私!?」


サクラが弓を引く。

「ピンニングショット!」


矢が前脚へ突き刺さった。


キメラの動きが目に見えて鈍る。


「今度は入った!」


「そのまま距離を取って!」


ユースケが声を上げる。


サクラが後ろへ下がる。


動きの鈍ったキメラへサトルが追いついた。


ガンッ!


前脚を盾で受け止める。

「捕まえたぞ!」


ランも横へ回り込む。

「ラッシュコンボ!」


拳と蹴りの連撃が脇腹へ叩き込まれた。


キメラが大きくよろめく。


シオリも杖を向ける。

「ファイア!」


火球が胸へ直撃した。


キメラが激しく身体をひねる。

翼が横薙ぎに振られ、ランが後ろへ跳んだ。


蛇の頭がサトルの腕を狙う。


「また来たか!」


サトルが盾を傾けた。


ガンッ!


牙が鉄壁の盾へぶつかり、大きく弾かれる。


「今度は食らわねえぞ!」


キメラが吠え、前脚を何度も振るう。


ガンッ!

ガンッ!


サトルが盾で受け続ける。

「まだやれる!」


攻撃力低下が効いている。

それでも衝撃のたびにサトルの身体が揺れた。


「ヒール!」

ヒナの回復が飛ぶ。


ランが再び横から入る。

拳がキメラの胴へ突き刺さった。


サクラの矢も続く。


ユースケはシルバーソードを握り直した。


キメラが獅子の口を開く。


赤い光が集まり始める。


「来るよ!」


今度は全員がすぐに左右へ散った。


シュンッ!


熱線が誰もいない石畳を貫く。


「いける!」


サクラが弓を引いた。

「ダブルショット!」


2本の矢が胸へ突き刺さる。


キメラが大きくよろめいた。


「まだ!」

ランが踏み込む。

拳が脇腹を捉えた。


ユースケも横から斬りつける。


「グオオォォッ!」


獅子の頭が天を仰ぐ。


それでも蛇の頭がサトルへ飛びかかった。


「任せろ!」


サトルが盾を前へ突き出す。


ガンッ!


牙を弾き返した。


そこへサクラの矢が胸へ深く突き刺さる。


キメラの巨体がぐらりと傾いた。


そして――。


ドンッ!


石畳へ倒れ込む。


キメラの身体が光に包まれ、無数の粒となって消えていった。


しばらく誰も動かなかった。


「…勝った?」

シオリが杖を握ったまま呟く。


サトルが盾を下ろした。

「おう…勝ったぞ!」


「やったー!」


張り詰めていた空気が一気にほどける。


ヒナもほっと息を吐いた。

「ランさん、大丈夫ですか?」


「ええ。ありがとう」


「ガハハ!交代できなかったら危なかったな!」


「そうね。1人で受け続ける相手じゃなかったわ」

サトルとランが顔を見合わせる。


ユースケもシルバーソードを下ろした。

簡単な相手ではなかった。

それでも、6人で役割を入れ替えながら戦い、誰も欠けることなく勝つことができた。


その時だった。

キメラが消えた場所に、宝箱が現れる。


「あっ!」

シオリがすぐに気付いた。

「討伐報酬!」


「開けよう!」

ユースケが宝箱の蓋へ手を伸ばす。


カチッ。

次の瞬間、眩しい光が溢れ出した。

光が6人を包み、それぞれの前に通知が表示される。


【職業に応じた討伐報酬を獲得しました】

【盗賊の小手を獲得しました】


「小手か」

ユースケは詳細を確認する。


【盗賊の小手】

【腕装備】

【DEF:+8】

【効果:武器の持ち替えにかかる時間を短縮(小)】


「おっ」

「いいの出た?」

サクラがユースケを見る。


「武器の持ち替えが少し速くなるみたい」

「ユースケにピッタリじゃん!」

「そうだね。かなり使えそう」


複数の武器を使い分ける今の戦い方なら、ありがたい効果だ。

ユースケは盗賊の小手を装備した。


「私も小手!」

サクラも自分の報酬を取り出す。

「狩人の小手。弓スキルのディレイが少し短くなるって!」


「いいじゃん」

「でしょ!」

サクラは嬉しそうに小手を装備した。


「私は靴!」

シオリが新しい靴を見せる。

「魔力の靴だって。次の魔法を使えるまでの間隔が少し短くなるみたい!」

「いいね。シオリもディレイ減少か」


その隣で、ヒナも報酬を確認していた。

「私は祝福の髪飾りです」

小さな髪飾りを手に取る。

「味方にかけたバフ効果が、少し長く続くみたいです」


「ブレスとも相性良さそうだね」

「はい。使いやすくなりそうです」


サトルは新しい兜を両手で持ち上げた。

「俺は守護の兜だ!」

そのまま効果へ目を通す。

「盾スキルの消費MPが軽くなるらしいぞ!」


「それはサトルに合ってるわね」

ランが言うと、サトルが豪快に笑った。


最後にランが黒い帯を取り出した。

「私は反撃の黒帯ね」


「黒帯!」

シオリが反応する。


「ナックルスキルのディレイが少し短くなるみたい」

ランは黒帯を眺め、小さく頷いた。

「悪くないわね」


6人とも、それぞれの戦い方に合った報酬だった。

サクラが新しい小手を眺める。


「やっぱり討伐報酬って美味しいね」

「だな!」

サトルも守護の兜を軽く叩く。


「普通に狩ってるだけじゃ、こういう装備はなかなか手に入らねえだろ」

「前の報酬も良かったよね」

シオリも魔力の靴を見下ろす。


ユースケは頷いた。


ゴブリンジェネラル。

リザードタートル。

グレートサラマンダー。

そして今回のキメラ。


どれも簡単な戦いではなかった。

だが、その分だけ得られたものも大きい。


「玄武街でも、ボス討伐のクエストがあったら積極的に受けてみようか」


「賛成!」

サクラがすぐに答える。


「私も!」

シオリも手を上げた。


「おう!その時は俺たちにも声をかけてくれ!」

「サトル」

ランが横を見る。

「分かってるって。無茶はしねえよ!」


ユースケも笑った。

「相手の強さを確認して、いけそうならね」


「はい。それがいいと思います」

ヒナも頷く。


報酬は魅力的だ。

だからといって、無理をするつもりはない。

できる範囲で挑む。

それで十分だ。


「じゃあ、行こうか」

6人は玄武古道の出口へ向かう。


崩れた石門を抜ける。

その瞬間、視界が大きく開けた。


青空の下。

遠くに高い城壁が伸び、その向こうには大小さまざまな建物が並んでいる。


中央付近には、大きな塔も見えた。


「でかっ!」

サクラが声を上げる。


「玄武門より全然大きい!」

シオリも目を輝かせている。


サトルが豪快に笑った。

「ようやく着いたな!」


「ええ」

ランも街を見つめる。


ヒナが小さく息を吐いた。

「長かったですね」


ユースケは振り返った。

自分たちが歩いてきた玄武古道が、崩れた石門の向こうへ続いている。


始まりの街を出て。


旅立ちの森を越えて。


玄武門へたどり着き。


仲間と出会い、戦い、少しずつ強くなってきた。

そして今。


その先に、新しい街がある。


ユースケは再び前を向いた。


第7玄武街。


これまでより多くの渡り人が集まる場所。


タケシやマユの情報が見つかるかもしれない。


まだ知らない場所も、敵も、できることもあるはずだ。


「行こう」

ユースケが歩き出す。


「うん!」

5人も後に続いた。


6人は玄武街へ続く道を歩いていく。


新しい街へ。


そして――。

伝説へ。

ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

第70話をもちまして、第2章は完結となります。


第3章では、新たな舞台となる玄武街を中心に物語が進んでいきます。


少し準備期間をいただくため、ここで一度更新をお休みします。

再開時期や更新ペースについては、執筆状況を見ながら決めていく予定です。


ここまでユースケたちの旅を追っていただき、本当にありがとうございます。


「続きも読んでみたい」と思っていただけましたら、ブックマークしていただけると、第3章再開時の目印になります。


また、評価していただけると、今後の執筆の大きな励みになります。


第3章でも、ユースケたちの冒険を楽しんでいただけるよう、少しずつ書き進めていきます。


それでは、また玄武街で。

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