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玄武の渡り人 ~帰還できるのは、ただ1つの大陸だけ~  作者: かにかま
第1章 始まりの街

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予想外の収穫

始まりの街へ戻ると、シオリとヒナとはそこで別れた。


宿に着いたユースケは、さっそくステータスを開く。


【名前】ユースケ

【職業】盗賊

【レベル】16

【HP】50+3

【MP】37+3

【STR】17+5

【VIT】17+3

【AGI】20+3

【DEX】20+4

【INT】17+1

【LUK】17+1


【武器熟練度】

片手剣:Lv4

盾:Lv3

弓:Lv2


今日の戦闘では、HP、STR、VITがそれぞれ1伸びていた。


そして、気になるものがもう1つある。


Lv15になった時に習得した、盗賊の新しい固有スキルだ。


【クイックステップ】

消費MP:3

素早く後方へ飛び退き、敵との距離を取る。


「回避用のスキルかな」


Lv10では瞬足。


そしてLv15ではクイックステップ。


少なくとも今のところ、盗賊の固有スキルは5レベル刻みで習得している。


ユースケはクイックステップの説明を見つめた。


どれくらい飛び退けるのか。


発動はどれくらい速いのか。


連続で使えるのか。


実戦で攻撃を避けられるのか。


気になることが次々と浮かんでくる。


明日も朝からシオリたちと狩りをする予定だ。


本当なら、今日はこのまま休んだ方がいい。


けれど――。


「…これは試さずには寝られないな」


ユースケは立ち上がった。



再び旅立ちの草原へ向かう。


夜風が心地いい。


この時間になると、他のプレイヤーの姿もほとんど見当たらなかった。


「まずは安全な相手で確認しよう」


ブルースライムを1匹だけ弓で釣る。


ゆっくりと近付いてくるスライムを見据え、十分に引きつけた。


「クイックステップ!」


その瞬間、身体が後ろへ弾かれるように動いた。


気付けば、スライムとの距離が大きく開いている。


「おお…」


体感では3メートルほど。


着地も安定していて、ほとんど体勢を崩していない。


「これは使えそうだね」


すぐにもう1度試す。


「クイックステップ!」


――発動しない。


「なるほど」

「連発はできないのか」


少し待ってから、もう1度。


「クイックステップ!」


今度は問題なく発動した。


「再使用まで少し間があるみたいだね」


それでも、危険な場面でいったん距離を取れるだけでも十分使えそうだ。


何度か繰り返し、飛び退く距離や発動の感覚を確かめていく。


「よし」

「草原で試せるのはこのくらいかな」


ひと通り確認を終える。


そこで帰ればいいのだが――。


ユースケは旅立ちの森がある方角へ目を向けた。


「実戦でも試しておきたいな」


結局、そのまま森へ向かった。



いつものように、アイアンボウでウルフを1匹だけ釣る。


すぐにアイアンソードへ持ち替えた。


ウルフが地面を蹴る。


牙が迫った瞬間――。


「クイックステップ!」


身体が後ろへ飛ぶ。


ウルフの牙が、ついさっきまでユースケがいた場所を噛み締めた。


「いいね」


着地と同時に踏み込み、アイアンソードを振るう。


斬撃を受けたウルフがよろめく。


「実戦でも十分使えそうだ」


瞬足が移動そのものを補助するスキルなら、クイックステップは敵の攻撃から距離を取るためのスキル。


同じ移動系でも、使い方はかなり違う。


その後も狩りを続けた。


弓で釣る。


片手剣へ持ち替える。


通常の回避とクイックステップを使い分けながら、ウルフを倒していく。


途中、2匹がリンクする場面もあった。


1匹の攻撃をかわし、もう1匹が迫ったところでクイックステップ。


距離を作り直してから、落ち着いて各個撃破する。


「2匹なら問題なさそうだね」


もちろん、数が増えても同じように動けるとは限らない。


それでも、新しい選択肢が増えたのは大きかった。


狩りを続けていると、ヘルパーが表示される。


【DEXが1上昇しました】


さらにしばらくして――。


【AGIが1上昇しました】


「今晩も順調だね」


弓を使い、攻撃をかわしながら戦い続けた結果だろう。


片手剣の熟練度も、少しずつ上がっている。


「そろそろLv5も見えてくるかな」


次に何を覚えるのか。


それも楽しみだった。


ふと時刻を確認する。


「…もう1時か」


さすがに明日のことを考えると、この辺りで切り上げた方がいい。


「今日はこのくらいで許してやるか」


誰に言うでもなく呟き、ユースケは旅立ちの森を後にした。



旅立ちの草原へ戻る。


あとは街へ帰るだけだ。


だが、ユースケのMPにはまだ余裕が残っていた。


「…最後に使い切って帰ろう」


恒例のゴーゴートレインだ。


ブルースライムを次々と引き連れ、誰もいない夜の草原を走る。


十分な数が集まったところで振り返る。


「ワイドスラッシュ!」


横薙ぎの斬撃が、まとめてスライムを飲み込んだ。


次々と光の粒へ変わっていく。


場所を移し、もう1度。


さらにもう1度。


MPが残りわずかになった頃、最後のブルースライムが光となって消えた。


その直後だった。


ピコン♪


【安らぎの指輪を獲得しました】


「…ん?」


聞き慣れないアイテム名に、ユースケは足を止めた。


すぐに詳細を開く。


【安らぎの指輪】

装飾品

効果:横臥時のHP・MP自然回復速度上昇(小)


「装飾品?」


武器でも防具でもない。


今まで手に入れたことのない種類のアイテムだった。


ユースケはそのままヘルパーへ問いかける。


(装飾品)


【装飾品は2つまで装備できます】

【主にモンスターのレアドロップや宝箱などから入手できます】

【始まりの街では販売されていません】


「レアドロップか」


続けて、安らぎの指輪について確認する。


(安らぎの指輪のドロップ率)


【ブルースライムから0.02%の確率でドロップします】


「0.02%…」


頭の中で数字を計算する。


「単純計算で5,000体に1つか」


思わず口元が緩んだ。


「狙って手に入れるものじゃないな」


改めて指輪を見る。


「横臥時か」


草原で自然回復を調べた時、横になれば座っている時より回復が速くなることは確認している。


この指輪は、その横臥時の回復速度をさらに高めてくれるらしい。


「戦闘向きではないけど…」


休憩時間を短くできるなら、ユースケには十分魅力的な効果だった。


夜まで狩りをすることの多い自分には、むしろ相性がいい。


「…これは俺向きかもしれないな」


ユースケはさっそく安らぎの指輪を装備した。


クイックステップの検証。


AGIとDEXの上昇。


そして、思いがけないレアドロップ。


「今日は本当に大収穫だね」


満足しながら、今度こそ始まりの街へ戻っていった。

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