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【完結】二振りの剣と星の航跡 〜次元を越え、時を超える少年の物語〜  作者: @SsRay
青年編 星の使命

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ep26.星々の誓い ― 焦土に咲く純白の輪舞曲 ―

 爆炎の余波が収まり、硝煙の匂いだけが草原に停滞していた。


 なぎ倒された草と、焼けた土の黒。その惨状の中で、最初に上体を起こしたのはスピカだった。彼女は力なく投げ出された足を揃え、いわゆる女の子座りのまま、動かぬ仲間たちの傍らで天を仰いだ。


 そこには、戦いの喧騒を嘲笑うかのように、より一層輝きを増した星々が瞬いている。彼女は何も言わず、ただ静かにその光を見つめていた。絶望的な力の差、謎の四人組、そして『星の守り手』という言葉。重い沈黙が流れる中、彼女の周囲に柔らかなエメラルド色の光が霧のように立ち込め始める。


「……癒しの風よ、星の息吹と共に」


 小さな呟きと共に、草原に温かな回復の風が吹き抜けた。その風が頬を撫でると、泥に伏していたシリウス、ベガ、そしてミラが、深い眠りから引き剥がされるようにゆっくりと目を覚ました。


「う、あ……? なに? 何が起こったの!?」


 シリウスが顔を上げると、隣でミラが弾かれたように起き上がった。彼女は自分の体よりも先に、右腕に装着されたリング型アイテムボックスを必死に確認する。


「よかった……無傷。これ、壊れたら直すまで異次元のアイテム取り出せないから面倒なのよね……」


 安堵で肩を落とすミラの横で、ベガは忌々しげに舌打ちしながら、自身のアイテムボックスから魔法の保存水を取り出した。キャップを乱暴に引き抜き、一気に喉へ流し込む。


「けっ、挨拶代わりにしては高すぎる授業料だったぜ……。あの野郎共、次はタダじゃおかねえ」


 空になったボトルを握りつぶした時、草原の彼方から数騎の馬の嘶きと、重厚な車輪の音が聞こえてきた。魔法大国の紋章を掲げた、緊急派遣の馬車だ。


「貴殿ら、無事か! 先ほどの大爆発は何事だ!?」


 伝令の兵士が慌てて飛び出してくる。シリウスたちは顔を見合わせたが、説明するにはあまりに非現実的な出来事すぎた。結局、負傷の激しい一行は兵士の介抱を受け、そのまま剣士の国へと向かう馬車に揺られることになった。


 車輪の規則正しい振動が、極限まで消耗した精神を深い眠りへと誘う。半日に及ぶ道中、四人は泥のように眠り続け、気づけば馬車の窓からは、剣士の国が誇る質実剛健な城下町が見え始めていた。


 剣士の国の王への報告を済ませた後、一行に驚くべき知らせが届いた。

 数日後、あの戦いの舞台となった草原の真ん中で、盛大な結婚式が執り行われるというのだ。


「草原の真ん中に、魔法と剣を融和させた新たな国を建設する……。その礎として、両国の王家が結ばれるんですって」


 ミラの言葉通り、式典の会場は目を見張るほど美しかった。

 抜けるような青空の下、魔法大国の美しい王女と、剣士の国の凛々しい王子が手を取り合い、並んで歩いている。


「わぁ……。綺麗……」


 ミラはうっとりと、少女のような瞳でその光景を見つめていた。ウェディングドレスの白が陽光に透け、まるで物語のワンシーンのようだ。彼女はふと、隣に立つシリウスに視線を向ける。だが、シリウスはまだ、あのブラックとの戦いの感触を掌で確かめるように、無意識に拳を握りしめていた。


「あー……。めでたいのは分かったけどよ、堅苦しいのは性に合わねえぜ」


 ベガは豪華な料理を適当に口に放り込みながら、退屈そうに空を仰いでいる。彼にとっては、甘い祝福の空気よりも、雷鳴轟く戦場の方が居心地が良いのだろう。


 一方で、スピカは喧騒から少し離れた場所で、凛とした佇まいのまま式の進行を見守っていた。その瞳は、眼前の幸せな光景を映しながらも、同時にその先にある星の運命を見通そうとしているかのように静かだった。


 祝砲の魔法が空に大輪の花を咲かせる。

 一時の平和。だが、彼らの胸にはあの男の言葉が深く刻まれている。


(代償、か……この出来事は俺たちにとって十分に守るべき価値があるものだ)


 シリウスは、幸せそうに微笑む新郎新婦を見つめながら、心に誓った。この輝きを二度とあの絶望に汚させはしないと。



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