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【完結】二振りの剣と星の航跡 〜次元を越え、時を超える少年の物語〜  作者: @SsRay
青年編 黄夏星(おうかせい)と緑春星(りょくしゅんせい)

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ep24. 重なる刻、星空の草原に眠る勝機

 湯上がり、スピカが袖を通したのは、森の静謐と星の輝きを織り込んだような、鮮やかなグリーンのドレスコートだ。膝から足元までドレスと同じブーツを履いている。


 深いスリットから覗く足元は機能的でありながら、胸元から裾にかけて流れるようなラインは、優雅さを醸し出している。肩から背中にかけて、髪と同じ若草色の生地が翼のように広がり、彼女が歩くたびに夜風を孕んで美しく揺れた。


 その手に携えるのは、彼女の運命を変えた『星の槍』緑のドレスに漆黒の槍。そのコントラストは、まるで暗い銀河を切り裂く一筋の希望の光のようだ。


「……まるで、本当に星の女神様みたいだわ」


 ミラが少し誇らしげに、けれど自分の胸元をチラリと見てから、小さくため息をつく。彼女の胸元はこれでもかと強調するようなデザインの胸元をしていた。


 スピカの瞳には、夜空の銀河よりも深い、静かな熱が宿っていた。後ろを向き、槍を回し、ピタリと止めた彼女は、空を見上げる。


「この世界に不穏をもたらすというこの槍と共に私は彼らと旅立ちます」


 スピカは誇らしげに、槍をグルグルと回し、故郷の世界へと別れを告げる。


「お待たせしました」


 桜の花びらが舞い散る中、彼女は慈しむような、けれど揺るぎない微笑みを浮かべた。


「頼もしいわね」

「よろしくな!」

「まあ、あれだ……」

 俺は頭に右手を当て恥ずかしそうにしているベガの背中を叩いた。

「さあ! 朝御飯を……じゃなかった。夕飯を食べに行こう!」

「いや、俺達の朝飯だ」

「水着で行くつもり?」

「あ! 向こうで一度着替えないといけないな」


 四人は桜咲く夜空輝く温泉を後にし、ゲートをくぐり、ミラと師匠と会った世界へと移動する。

 シリウス達は、まず宿屋へ向かい私服に着替えた後、夜のレストランへと足を運んだ。


「――綺麗な空。確かに、私のいた場所とは違う輝きをしていますね」

 初めて見る異世界の料理を、スピカは作法正しく、それでいて驚きを隠せない様子で口に運ぶ。


「ベガは驚かなかったけど、普通そうだよな」

「驚くことはないけど、毎回夜空に見とれてるわ」


 その横では、王子という肩書きを忘れたかのように、ベガが冒険者さながらの豪快さで肉に食らいついていた。


「そりゃあ、見るだろ。見慣れてないんだからな」


 スピカの正しい食事方法に対して、驚いているベガに俺は注意した。


「……ベガ、お前も見習えよ」


「……」


 その横で、俺はふと思い出したように呟いた。


「そういえば今日はまだ素振りしてなかったなぁ」

「お前、今日はいいだろ」

「シリウスは子供の頃から毎日かかさなかったもんね!」

「昔は振るのに必死に見えたけど、今では技の感触を確かめながら振ってるわ」

「まあ、これから戦いだってのに」

「まだ分からないだろ。あっちのいつの時間にでるのかまだはっきりしないんだ」


「いつにしても、スピカには説明しておいた方が良さそうだな」


 スピカに、剣士の国と魔法大国の国の話とエルヴァスのこと、それと、よく分からない子供の頃から目にしている『黒い敵』について、簡単に、今まであったことを伝えた。


「ミラ、バイクの修理にはどれくらいかかる?」

「研究室にストックしてた鉱石を使えば、10分で直せるわ。……もっとも、バリアや走行性能を強化する余裕はないから、あくまで動かせるだけの状態になるけどね」

「依然の状態ってことだね。十分だよ」

 ミラの研究室はいつも腕のアイテムボックスに入っているが、戦闘中に出すわけにもいかず、すぐに取り出せるもので戦闘中何とか凌いでいたのだ。ミラは適当な鉱石を手に取り、スピカにわかりやすいようにアクセサリーに変えて見せた。


「私は鉱物を好きな形に変形させることができるの! 簡単な合成も可能よ」

「ミラの特殊能力なんだ、子供の頃、シールドを張る敵がいてミラのバリアを破壊する爆弾ですごく助かったんだ」

「初めて見る装備とかには解析とかいるからすぐと言っても、そんなにすぐに出来ないわよ」

「まあ、《《あの光》》があれば、ミラの科学なんかいらないけどね。俺の剣で切れなかった装甲をバリアごと素手で破壊してたから」

「ああ、黒猿の頭もボーンだぜボーン!」

 ミラが黒猿の頭を吹き飛ばした様子をベガが両手を広げながら表現する。

「ベガだって空飛んで、敵軍を一掃してたくせに」

「それを言ったら、シリウスなんか青い閃光だよな」

「二つ名。《《青い閃光》》だったか?」

「勝手につけるなよ」

「ははははっ」


 笑い声が響く中、話題はあの《《謎の力》》に及ぶ。


「まあ、敵が来たら、戦闘態勢になった方がいいってことだな。よく分からない《《あの力》》には頼らずに魔法と剣技でなんとかしよう」

新入り(スピカ)にアドバイスしてやろう」

「アイツラには、連携ってもんがねぇ、そこが唯一の弱点だ」

「いや、連携されないことが前提だと危ないだろ。あの光がなけりゃ。今頃、あそこでやられていた」

「まあ、その女がいれば大丈夫だろ。死なない黒猿相手に数時間一人で戦ってたんだからなぁ」

「無理よ! あの光りがないと銃と爆弾で何とかしないと無理‼」

「ああ、ミラはあの光りがあるとパワーが異常に上がるんだよ」

 シリウスがミラの謎の光のその能力をあの戦闘で初めて体験したベガに補足する。

「それを言うなら、ベガだって、バイクいらないだろ。空飛んでたし。そもそも、バイクより早くなかったか?」

「あー、確かにって、俺もミラのクッションがなかったら怪我していたぜ」

「まあ。私もその謎の力というものを体験したいものだな。この空から振ってきた武器が原因か、それにしてもミラ……」

 ミラさんと言おうとしてるところにミラが割って入る。

「ミラでいいわよ」

「ああ、ミラの武器がないと言う点でその力は武器のせいではないだろうな」


「そういえば、スピカの世界には魔法というものはあったのかい?」

「風魔法なら使えます。ただ、あちらで剣や魔法を振るう機会は、ごく限られていました。基本的には、争いを拒んでいたこともあり、生活に利用する程度です」


 食事を終え、一行は夜の街の喧騒を抜けて、再び次元の狭間へと繋がるゲートへと向かった。

腹を満たしたベガは満足げに大剣を構え、体の周りには得意の雷の魔法がバチバチと黄色い火花を散らしていた。ミラは手元のデバイスで時空座標の微調整を繰り返している。スピカは、その手にしっかりと漆黒の槍を握り、静かな闘志を瞳に宿していた。


「さあ、行くわよ。次は『調整』のための跳躍。二回ゲートをくぐるわ。一回目で因果の揺らぎを観測して、二回目で本命の時間軸へ滑り込む。……戦闘態勢、忘れないでね」


ミラの警告に、俺は星の剣の柄に手をかけた。


一度目のゲートを抜けた先。そこに広がっていたのは、先ほどまでの凄絶な死闘が嘘のような、どこまでも穏やかで静かな草原だった。


ざわめく風の音すら耳に届かないほどの静寂。そして何より目を引いたのは、頭上に広がる夜空だ。


「……綺麗。さっきよりも、ずっと星が近くに見えるわ」


 ミラがデバイスから目を離し、思わず感嘆の声を漏らした。

 確かに、以前この場所を訪れた時よりも、星々の輝きはひときわ強く、鋭い。時間がより深夜の深淵へと近づいたことで、大気が研ぎ澄まされ、宇宙の瞬きが剥き出しになっているのだ。


「ああ。これなら、あの泥のような黒い死なない兵士に邪魔されずに、進めそうだな」


 ベガが大剣を手に、眩しそうに天を仰ぐ。スピカもまた、漆黒の槍を杖がわりに突き、その星明かりを全身に浴びていた。


「時間は、丁度剣士の国のエルヴァスの影を打った時の時間だわ」

「あの後。門の前で戦闘に巻き込まれて死にかけたっけ」

「都合がいいな」

 スピカがシリウス達3人に合わせ、予定通り再びゲートの先へと小走りで戻る。そして、3年前へ飛ぶゲートの前でスタートダッシュの構えをとる。

「予想通りだったな。もし次も同じ時間だったら。俺達がエルヴァスの影を倒した時間に一致する」

「都合が良すぎる話ね」

「都合はいい方がいいだろ、あの変な光もないのに、あんな大軍相手にできねぇぞ」

「……」

 スピカは無言で、シリウス達に合わせ、ゲートを駆け足で潜り抜けた。

「同じ時間だわ」

 ミラがデバイスに表示されている計算された時間をシリウス達に見せる。確認が終わったので、予定通り、全員一度元の世界へと小走りで戻った。


「よし、じゃあ。ミラのマシンで魔法大国へ全員で突撃しよう」

「決まりだな!」

 ミラがアイテムボックスから鉱石で即座に修理した黒いフォルムの4人乗りのマシンを取り出す。後部座席にはベガ。左右にシリウスとスピカが乗り込み、真ん中の操縦席にはミラが座る。


 ミラがスピードを上げゲートに飛び込み。ゲートを抜けた星が輝く草原をミラのマシンがブースト機能で一直線に魔法大国へと足を進める。


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