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【完結】二振りの剣と星の航跡 〜次元を越え、時を超える少年の物語〜  作者: @SsRay
青年編 黄夏星(おうかせい)と緑春星(りょくしゅんせい)

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ep17.全開突破(フルアクセル)

 地下から外に出た後、豪華な食事が配られた。

戦争の中だというのに、草原の兵士たちは、食事もとらずに永遠と戦い続けていたという。解放軍の疑うものが集まり、解放へと動くまでに三年の月日が必要だった。


 王宮の広間に、食後の静寂が訪れる。シリウスは王から手渡された、最高位の信頼の証である『聖樹の紋章』を握りしめ、王とセレスに向き直った。


「俺たちは、この世界を戦争がない世界。三年前、事件が起こる前。本来結ばれるはずの二つの国を1つに変えたいと思ってる。失われた命が戻らない今のままじゃなく、誰も死ななくて済む道を……」


 王は訝しげに眉を寄せた。

「三年前の事件を変える……? 過ぎ去った三年の年月を、どうにかできるとでも言うのか、わしらも出来るのならそうしたい。じゃが、それは叶わぬ夢じゃ」


 セレスが説明してくれていたことが、シリウスの提案を信頼する形に導いた。


「どういうことだ、シリウス! 何をする気だ?」


 セレスが口を挟む。


「方法は俺たちなら出来るとしかいえない……ただ、この世界を変えることが出来るのなら、変えたいという気持ちがあるのなら、俺たちに、三年前の事件が起きる前に俺たちが王様や、セレスに初対面で会った時に信頼出来る情報を提供してくれないか?」


 その言葉に、セレスが薄く笑った。


「……根拠はないか、まじないだとか、こうしろだとか、これをやらなければということでもなく情報か……」


 王は重々しく頷いた。


「……よかろう。その紋章が何よりも信頼の証じゃ。その証があれば、この国のどこにでも自由にはいれるじゃろう」


「三年前の私や王様の前にお前たちが現れても、その紋章があれば大抵のことは信頼できる。それと……」


 セレスがシリウスに接近し、耳元で呟いた。


「私にどうしても信頼して貰えないのなら、私の部屋のベットの下のにある、家族の写真を見せれば信頼するはずだ。これは私から聞いたとでも言えばいい」


 微かに笑みを浮かべながら、セレスはシリウスたちに情報を伝えた。


 セレスから、この国全体の地図を受け取り、シリウスたちは城を後にした。


「やっぱり、城は居心地が悪いな。次は外で待ってるぜ」

「ヘガは相変わらずだなぁ、王子ならいるべきところだろ」

「城は窮屈なんだよ」


 ミラが何も言わずに前を歩き、広い城の門の外へたどり着いた。


 ミラがアイテムボックスのリングから、結構大きな謎の物体を取り出し、ミラの最新作『四人乗りバイク』が現れた。


「おいおい、ソイツはなんだ?」


「草原の戦闘が終わっているなら広いはず、やっとそろったわ、1つの世界でクエスト報酬でお金を稼いだかいがあったわ。これは乗り物よ、こんないい草原他にないわ」


 低温で排気ガスもない4人乗りのバイクは静かに起動した。ミラに合わせて、シリウスとベガが乗り込む。


「さあ、出発よ! 過去に飛ぶ前に、まずは剣士の国で最後の情報を拾い集めなきゃね!」


「ああ、解放軍の話だと、剣士の国も同じように現況はミラが吹き飛ばしたアイツしか居なかったってことらしいじゃねーか」

「ええ、シリウスとわたしが吹きとばしたやつね」


 ミラがアクセルを煽ると、超硬剛ゴーレムの骨格で作られた銀色のボディが激しく振動する。


「おいシリウス、本当にやるんだな? 証拠も何も見えない相手に、あんな大口叩いちまって! まあ、俺は魔法剣士って奴が一般的に広まった世界を見てみてぇ」


 ベガが後部座席で豪快に笑う。


「ああ。……でも、これだけ美味い飯があるんだ。平和な世界で、魔法剣士という職の定着と、安定した国となれば、さらに美味しい飯にもありつけそうだな」


 シリウスが、ミラの肩を叩く。それが合図だった。


 ドォォォォン! という爆発的な加速と共に、銀色の獣が王宮を飛び出した。


「行くわよ、全開突破!!」


 昼、かつての激戦区、今は静まり返った草原を、四人乗りのバイクが風を切り裂いて突き進む。


 別の世界で必死にクエストをこなし、素材を集め、ミラが心血を注いだこの『鋼鉄の野獣』は、今や希望を乗せて走る弾丸だった。


 そこで全てのパズルを完成させ、明日の朝食を食べ終えた時――三人の、そしてこの世界の「本当の運命」を変えるための跳躍が始まる。


 暫くして、草原を走っていると巨大な魔獣が現れ、獲物を追うようにミラのバイクを追いかけてきた。


「おい! アイツをあっちの国までつれていく気か?」

「ミラ、降りきれないか?」

「しつこいわね、あの魔物」


「おい、ミラ! この乗り物になんかついてねぇのかよ!」


ベガが身をのりだし、サンダーボルトをその魔獣に当てるが、対したダメージを与えられていない。


「もう少しだけ引き付けた方いいかな?」

「シリウス、運転変わって!」


 ミラが科学銃をアイテムボックスの腕のリングから取り出し、強化弾を打ち込む。


 シリウスも、暇があれば後ろへ向けて氷の槍を打ち込むが一向に魔物の速度は止まらない。


「アイツも粉々に吹き飛ばしたらいいんじゃないか?」

「ダメ、こんなに動いていたら効果ないわ」

「大体、あの魔物かなり強くねぇか?」


「あんな魔物想定してないわ、シールドも私の周りにしか展開できないし、攻撃手段も私の銃と魔法位しか」

「おい、シリウスお前の奇想天外な剣でアイツどうにか出来ねぇのかよ」

「無理だって、俺が置いてかれちまうよ!」

「一度、この乗り物から降りて倒そうぜ」


 ミラが声をあげる。


「この乗り物にはシールドもないから急には止まれないわよ」


「仕方ねぇなぁ! 俺に任せろ。俺の切り札だ。お前ら前向いてねぇと巻き添えになるぞ!」


ベガが後部座席で立ち上がった。ミラがシリウスとバイクの操縦を代わる。


「俺のイケメンに目を眩ませやがれ! フラッシュ!」


 魔物が物凄い勢いで目をくらませ、地面に倒れ込んだ。


――ザザザッ


「へっ!ザマァ見やがれ!」

「無駄にしつこい魔物だったわ」

「あんな魔物も出てこれるくらいの環境になったってことみたいだ」


 舞い上がる土煙の向こう、遠ざかる魔獣を背に、銀色の車体はさらに加速していく。

 もう1つの確かな情報を手にするために、大草原を爆走し、剣士の大国へ向けて足を進めるのだった。


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