表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
湯けむり怪異譚「ぶらぶら」  作者: 秋野きつ
第3章 変化
88/166

第88話 失せ物探し


 名坂警部補が話し終えた時、時計の針が、ちょうど午前零時を指した。


「以来、水が駄目になった。ひかりのことを思い出し、あの時の怖さも蘇ってくるのだ。生き恥をさらしながら図々しく生きてやるさ。公僕として、この身をすり減らして死んで行ければそれで良い。目の前で溺れている人がいた時に果たして水に入れるか。それだけは心許こころもとないがな」


「あまり無茶をしないでほしいもんだ」


 残ったビールを飲み干して、千里が口の端を拭う。


「からかって悪かったよ。さっきのようなおかしなことは、よくあるのかい?」


「いや、初めてだ。ひかりの幽霊であったかどうか、確かなことはわからんよ」


「ふぅん、そうかい。この部屋には、取り憑かれ体質の五郎がいるからねぇ。電球が割れたのも、こいつのせいなんじゃないのかい」


「俺のせいってことはないでしょう。いや、別に名坂さんのせいとは言いませんが」


 それよりも、と温州蜜柑に目を向ける。


「さっきの妖しい影は、ひかりさんの幽霊なのか? 何か悪いものなのかどうか……」


「ん〜、どうやろなぁ。そないに悪い感じはせんかったけど、なんやゾクリとしたのはしたな。わても酔うてたし、ようわからんわ」


「まったくもって役立たずだな。やれやれ、せめて佳乃が起きていればな」


「なんや、その言い草。役に立たんでも、そこにおるだけでええ。そういうとったやんけ」


「佳乃の場合はな」


「なんやそれ。ロリコン対象と、非ロリコン対象への差別か。紳士と言えば何でも許されると思ったら大間違いやぞ」


 喚く蜜柑をおいて、千里が話を戻す。


「こんなことは初めてってことだが、何十年も経って何だろうね?」


「前にも言ったが、街自体がどことなくおかしな雰囲気なのだ。それに加えて、神様か何か知らんが、変なのと知り合いにもなったしな。それと……」


「変なのて、失敬な!」


 わめく蜜柑を、千里がつまみあげて脇へのける。


「蜜柑が入ってくると話が進まないからね」


「それと、失せ物探しのまじないものを買う機会があってな。悪ふざけというのでもなく、何となくのことだが、海へ消えたひかりを探してみた。まじないの結果は、いずれ見つかるというような、よくある類いの言葉で煙に巻かれたよ」


「その時は何もなかったのかい?」


「特段の変わったことはなかった。しかし、多少なりと関係があったのかもしれない。一度……」


 言いかけた後を引き取って、


「一度、そのまじないものを買った店へ行ってみようじゃないか」


と、にやりとしてみせる千里だった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ