第42話 背中語り
ここで舞台はライブハウスに逆戻り。
Black Catsの解散ライブが行われていたのだが、アンコールに応じて演奏にかかったところ、不可思議な風が吹き荒れ、猫柳理奈が外へ飛び出し、後を追って夏野千里も出て行ってしまった。残された遠山将吾のみではどうすることもできず、うやむやのうちにライブは終了した。
解散を惜しみつつも、三々五々、客もひいて行き、ガランとした会場には、将吾のほか、美琴と葛音だけが残っていた。互いの連れを待っていたところ、最初に帰ってきたのは夏野千里で、葛音とは昔会ったことがあるらしく話も弾んでいた。
やがて日も落ちて、ライブハウスで待ち続けるわけにも行かなくなってきたころ、ようやく五郎が帰ってきた。どうしたのか、理奈は見つかったのかと美琴と千里から矢継ぎ早に質問を浴びせられ、もごもごと口籠もりながら応じる。
「えっと、蜜柑が、じゃなくて。変な連中が千里さんを追いかけて行ったから心配になってですね。えーと、理奈さんはとりあえず無事で。え? どこにいたって? マンションの、じゃなくて、雑居ビルの屋上にですね。どうやって見つけたかって? えーと、それは蜜柑が、じゃなくて。えーと、えーと……」
しどろもどろの五郎に疑いの目を向ける千里らだったが、鋭く切り込んだのは、意外にも、普段は大人しい美琴だった。
「り、理奈さん、きれいな人ですよね」
「 うん、思わず見惚れるくらい」
「そうですね。か、帰りましょうか。きょうもアルバイトでしょ?」
「え、まあそうだけど」
「遅くなりますし、帰りましょう」
「あ、はい」
さっさと歩いて行く美琴の背中は声をかけづらい雰囲気で、私は怒っていますと書いてあった。が、察しの悪い五郎は、怯えながら付いていくだけである。




