34/166
第34話 七人様
とある雑居ビルの屋上にて。
初対面の猫柳理奈と神尾五郎の間に入ったのは、理奈の飼い猫のジジと、五郎に取り憑く自称式霊だか神様の温州蜜柑である。
もっとも、いずれも仲を取り持ったつもりはない。ジジに嚙りつかれた蜜柑が、助けを求めて喚いていただけのこと。
蜜柑が何者かも知らぬまま、慌てふためくその様子に思わず笑ってしまった理奈である。澄んだ笑い声がくすんだ灰色の空に散っていく。
ひとしきり笑い終えると、蜜柑に噛みついて離さないジジを宥め、べーよ、べー、と吐き出させた。
たがいに挨拶を済ませ、人の良さそうな五郎と、間の抜けたような蜜柑を見て安心したのか、あの、と理奈が口を切った。
「あの、初対面なのに、ごめんなさい。相談したいことがあるの。こんなことを話すと頭がおかしいと思われそうだけど、蜜柑ちゃんの憑く五郎さんなら……。私にもおかしなものが憑いているんです。七人様と呼ばれる神様のような、何か得体の知れないものが」




