表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
湯けむり怪異譚「ぶらぶら」  作者: 秋野きつ
第1章 きみの湯
20/166

第20話 大冒険


 きみの湯でのアルバイトにも慣れてきた五郎だが、それ以上に入り浸っているのが蜜柑である。賄い飯を食べに来る五郎と一緒に訪ねてくるのだ。


 夕餉の時間は午後七時ころ、浴場清掃のアルバイトは午後十時ころと半端な時間のため、五郎は、いったん帰宅して大学の課題をしたりしている。一方、用事のない蜜柑は、そのまま居座ることとなっていた。


 時々は番台で月子さんと、たいていは稲田家の居間で美琴や葛音と過ごす。勝気な葛音とは喧嘩になることもしばしばだが、不思議と険悪でもない。美琴と一緒にいることも多く、楽しく過ごしていた。


 その日も、アルバイト前に五郎が蜜柑を迎えに来た。保育園のお迎えのようでもある。


「お、五郎。いまから風呂掃除か」


 居間の卓袱台ちゃぶだいに座って談笑していた蜜柑が楽しそうに声をあげる。美琴も、にこにこと五郎を出迎えた。少し離れて、葛音も居間で過ごしているが、ぶすっとした表情で壁にもたれていた。


「ほな、寂しがり屋の五郎が来たで、そろそろ行くわな。そうそう、今日は美琴はんに歌を教えたったんやで。わての十八番おはこ、金太の大冒険な」


「……あほか」


「なんや、あほて失礼な。ぎなた読みという高度な技法を織り込んだ名曲やぞ」


「いや、そうかもしれんけど。なんで、よりによって金太の大冒険なの?」


「楽しいやんか」


 とのやりとりを見ながら、歌の一節を、楽しそうに美琴が口ずさむ。


「ちょ、ちょっと、美琴ちゃん? わかって言ってるのかな? 他所では歌わないでね」


 言われて小首をかしげる美琴である。


「み、みかんの声は、わ、わたしにも聞こえるの。おしゃべり、楽しいよ」


「そやで。耳の聞こえへん美琴はんにも、わての声は届くんや。それに、綺麗な姫さんを助けて冒険する歌がなんかあかんのか? あかんのやったら、その理由を言うてみい」


「むむ、確信犯か」


 困惑する五郎をみて、けらけらと笑いながら金太の大冒険を歌い始める。美琴も後について楽しげな合唱だ。問題のサビにかかったあたりで、それまで黙って聞いていた葛音が卓袱台ちゃぶだいを叩いた。


「あほな歌を歌うなよ!」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ