表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
湯けむり怪異譚「ぶらぶら」  作者: 秋野きつ
第1章 きみの湯
11/166

第11話 事始めのゾウ


 五郎は、文化住宅近くの銭湯『きみの湯』でアルバイトをすることとなった。やがて日常の一コマとなっていくわけだが、何事にも最初があるわけで、今日が初めてのアルバイトだ。


 銭湯を閉める午後10時から清掃に取りかかり、約1時間ほどの作業となる。その前に賄い飯というか、お呼ばれみたいなもので、午後7時頃、夕食を馳走になる約束だった。


 番台に座る月子さんから母屋の方へ回ってと言われて訪ねたところが、稲田と表札のある小さな玄関だ。古い平屋で、銭湯の空気とつながっているような温かい雰囲気があった。

 

 声をかけると、はいはいと稲田葛音が引き戸を開けて、また閉じた。


「ちょ、ちょっと。なんで閉めるの?」


「うるさい。何しに来やがった、変態め!」


「ひ、ひどい。誤解だよ、誤解。あれは、ちょっとした事故みたいなもので……」


「事故だとぉ」

 と、引き戸を少しだけ開いて五郎を睨む。「嘘つけ! スーパーで美琴に声をかけたらしいじゃないか。天地神明に誓って下心がなかったと言えるか?」


「う、それはもしかすると少し……」


「帰れ!」


 ぴしゃりと戸を閉められた。


「今日はアルバイトの人が来る予定なんだ。お前なんぞに構ってられないの」


「あ、それ俺だけど?」


 との返答に、葛音が無言のまま少し戸を開くと、胡散臭そうに見ながらいう。


「嘘つけ、パオーン」


「パオーンって、俺のこと?」


「そうだ。んなことより、どういうことだ。アルバイト? お前が?」


「浴場の清掃だよ。入浴無料、賄い付きって」


 にこにこという五郎の眼前で、葛音がぴしゃりと戸を閉めて鍵をかけた。どたばたと足音を響かせて、しばし待つと、また足音だ。戻って来た葛音が、じりじりと引き戸を開けて嫌そうな顔でいった。


「……仕方ない。入れよ」


 どうやら何も聞かされていなかったらしい。だって、絶対いやだっていうでしょう? と柔らかくも押しの強い月子さんの様子が目に浮かぶようである。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ