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錬金術ってすごくない!?

「こんなところで立ち話もなんだから」


と言われて、誘ってくれた先生の研究室に案内された。


あれ? ボクたち、研究科の体験授業に来たはずなんだけど、魔法科や兵科のように上級生が演舞をやっていたり、論文の発表をやっていたりという痕跡がない。

魔法科の授業を覗きに行った時には、それはものすごく忙しそうに講師の先生とか、その助手をしている研究員さんや研究室の先輩たちが動き回っていたのに。


それどころか研究室で上級生が普通に授業として実験をしている。



「あ~あ。あなたたちがいけないのよ? どうせ初日は体験履修なんてこないから今日は実験。だとかいって実験なんて始めるから……」


そう狐のお姉さん先生が研究室にいた上級生らしい生徒にぶつぶつ文句を言っている。


「え~~、先生だって『ま、いっか。』みたいな態度だったじゃないですか~」


「う、うるさいわねぇ」


研究室の奥に入っていくと、たくさんのビーカーに入った緑や青色の液体がぐつぐつと音を立てて並んでいた。

科学の実験というよりは、魔女の研究といったほうがイメージ的には近いかな。

薬草やらなんやらわからない匂いが充満しており、結構鼻につく。


「わぁ、クアの木が綺麗に反応してますね。綺麗な緑色~」


おお? イオネちゃんのテンションがいつもと違うね!目が輝いてるよ!

さっき狐先生と話してた時から思ってたけど、どうやらイオネちゃんは根っからのリケジョみたいだね。


「お、君、新入生なのに反応色の是非がわかるのかい?」


机でビーカーに魔力を流していた先輩がビーカーの向こう側から顔を覗かせた。


「あっ……はい、私もクアの木を木炭にして練成したヒーリングポーションの気体回復薬を作ったことがあるんです!」


身を乗り出しすぎた事に少し顔を赤らめたイオネちゃんは、それでもいつもとは違って慌てて身を引く事はなく、そのまま会話を続けている。


「なるほど、木炭ね……んん?……君、まさか今年特待生でくるって話のイオネ・テュリスさん?」

「あ、ご挨拶が遅れました、イオネ・テュリスです」


イオネちゃんって、もしかしてボクが思ってるよりこっちの分野では有名人?




……そ、それよりもこういった錬金術とか、練成術っていうのを初めて見るボクとしては、イオネちゃんと先輩が話している内容が一切わからないんだよね……。

どうしようかと途方にくれていると、狐先生が声をかけてくれた。


「貴女は初めてみたいだから、私が体験履修をしてあげるわ。今日は薬剤課にしか人がいないのだけど、うちでいいかしら?」

「は、はい。もともとイオネちゃんの特待課の体験授業を履修するつもりで来たので、薬剤課で間違いないです」


「あらあら、なるほどね。じゃ、こっちにきて。一対一の講義なんて、緊張しちゃうわね」


狐先生、顔はあまり動かないけど、声の抑揚としっぽで機嫌がとてもわかりやすい。

ぶんぶん言ってる。しっぽが。

……可愛い。もふもふしたい。


イオネちゃんを一人、研究室に置き去りにして、ボクは狐先生と別の部屋に入った。

もうイメージそのまんま理科室のような部屋で、長い机が長方形の教室の中で縦に2つ並んでおり、各机の両脇に椅子が一定間隔でおいてある。

椅子の置いてある机の位置に、体験授業用と思われる錬金素材が机に各々纏められており、机の中央には錬金装置であろう大きな魔法陣の書かれた装置が設置してあった。


「おっと、その前に。紹介がまだだったわね。私はノイ・ファ・スェテ。見ての通り狐人族よ」


そういいながら狐耳をぴくぴく動かして見せてくれた。

うわ、めちゃくちゃ可愛い。


「スェテ先生……?」

「んー皆は口が回らなくて言いづらいからってセトって発音してるわ。セト女史とかセト先生。かしら?」

「確かに、呼ぶときはちょっと言いづらいかもですね……」

「獣民国じゃ、ファミリーネームなんてあまり使われないから気にしたこともなかったのよね」


獣の国なんてあるんだ。


そんなことを思いながら体験授業を履修した。

先生が真横で教えてくれるっていうのは、とてもわかりやすい。




午前中だけで錬金装置の扱いを覚え、ローポーションの練成までを体験した。


うん……

こ、これは面白い……! ものすごい有意義だった!

ちょっと錬金術にはまりそうかもしれない。


なんといっても草や木の実やらを溶液に溶かして、机の上に設置されている器具の魔法陣に魔力を流すと、その錬金過程である構造の変化が、ボクの魔力を通して伝わってくるのだ。

ボクの繊細さじゃ、あの薬草からはほんとちょびっとしか薬成分を抽出できなかったけど、あれをもっと極めたら、きっとこのローポーションの出来栄えとか抽出量があがるんだろうなぁ。


「またいらっしゃい」


講義の終わりにそう、送り出してくれた。

作ったローポーションは、小瓶3本分で、それは貰っちゃっていいのだそう。

「ポーションポーチもプレゼントよ」

と言って、ポーションビンが差し込めるポーチを頂いた。


元々この課目は週に1,2単位は履修するつもりだったけど、履修単位数増やしちゃおっかな?



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