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074:田畑を増やそう

【第三層群屋上展望台】


「ダンジョン影響圏は概ね周囲10km程度まで順次拡張中で、既に丘全体に加え周辺の台地や低地も含まれます。本来、台地が畑や果樹園、低地が水田なのですが、ここは砂漠地帯ですので急に雨が降って低地で鉄砲水が起きないとも限りません。特に、今後このダンジョンが成長し、広大な農地や森林を持つようになったなら、気候にも影響を与え雨が増える可能性があります。」

「つまり、水田も台地上に開発すべきと?」

「そうですね。当面は、丘の斜面は果樹園や森林、台地は田畑や牧草地にすべきでしょう。水田をダンジョン構造物にすれば、水はけの良い台地の上でも水を溜めることは可能です。」

「牧草地?」

「いずれは馬……ハルナみたいな獣人だけでなく動物の馬も飼います。自動車工場ダンジョンなど期待できませんから自動車の生産はずっと先でしょうから。それにしても、以前に比企一族が連れてきた馬を捕まえられなかったのが残念です。」

「スレッジハンマーとかコウベトムキャットとかを育てて競争させると。」

「マスター、また言いますか。ベトナムキャットとやらで競争なんかさせている余裕はありませんよ。トラックでもあれば別ですが、本の知識だけでは複雑な機械は製造出来ませんし、現状では仮に何かで入手してもミントの手に余るので整備すらできません。」

 産業基盤が無い。なお、社会に広める場合は社会自体に拒絶される。という問題もある。

「トラックがあれば異世界転生者を召喚できるんだったな。」

「トラックは他の世界に転生『させる』方です。そして、このダンジョンは紫蘇(修羅)しか召喚できず、植物には脳は無いため、異世界転生者は苗の時期に記憶が飛んでしまい通常の輪廻転生と同じになってしまいます。とにかく、代官と商人と冒険者達には馬を探すよう依頼はしていますから、あとは待つしかありません。」

「探しに行く用の紫蘇(修羅)を召喚するとかは?」

「気候は過酷ですし賊も居ます。その上、ダンジョン影響圏の外ではダンジョンコアの力を使えません。確かに、名前付き(ネームド)モンスターは死んでも復活できますが、それでも死ぬのは嫌ですから、危険な任務を要求したら、それこそ反逆しかねません。」

 名前無しの普通のモンスターは自我は無いので反逆しないが、あまり高度な命令は理解出来ないし、そもそもダンジョンから出ることが出来ない。

「反乱は困るな。」

「特に修羅は自身を過大評価しがちで、しかも嫉妬心が強いですからね。……それは十分自覚しています。」


「水は全てダンジョンから供給されますので、丘の麓の台地はダンジョンに近い側から順次田畑を作り、完成次第作物を植え付けます。田植えには既に遅めですが、米は俸給にも賄賂にも最適ですから、多少無理しても栽培する価値はあります。」

「2,000人も居れば、相当の田畑を作ることができそうだ。」

「子供やニートもいますし、農業以外の仕事も多いですから、実質的には300世帯に800人ってところでしょうか。今のところ、ダンジョンからそう遠くまで開拓する必要はありません。とはいえ、さすがに夕方、畑から1kmの登り道を歩かせるのは可哀想。ということで、ダンジョンエネルギーが溜まったら、異世界からいくつか小型の公共図書館を召喚して村とします。」

「やはり図書館、なのか?」

「マスター、このダンジョンでは召喚出来る建物は図書館だけです。もちろん、建材で普通の建物を建てても良いのですが、ダンジョンはゴミを自動で処分でき衛生的、さらに丈夫なので海賊が来たら籠城できる。という利点があります。世界のコアからの獲得エネルギーはダンジョン本体の高低差により決まるので、分離した小ダンジョンを作るのは、エネルギー的には全くの無駄ですが。」

「ダンジョンは容易には壊せなかったな。」

「でも、田畑を荒らされると困りますから、即急に騎士団の強化が必要です。自動車を維持出来る産業基盤はありませんから、やはり竜騎兵が最強の戦力となるでしょう。」

「ああ、確か『鉄砲で武装した騎兵』だったな。ドラゴンに乗る兵隊では無く。」

「よく覚えていましたね。マスター。もちろんドラゴンは居れば強力な戦力ですが、龍を召喚出来るダンジョン以外だと固有法則が機能しないので、飛ぶどころか自重で潰れるでしょう。」

「固有法則と言えば、このダンジョンだと、火気厳禁だから入植者が煮炊きを出来ない。という問題があるな。畑は屋外だから焚き火は可能だが。」

「基本は全部電気ですからね。原子炉も無いのにどうやって世界のコアから6,600V50Hzの電力が供給されるのかは謎ですが。でも、困ったことに第三層群ほか、60Hz仕様も多いんですよね。」

「確かアメリカが60Hzだから、例えば大航海時代に日本がスペイン領になって、米西戦争でアメリカ領になった世界なら、周波数は60Hzだろう。」

「マスター、そういう世界は公用語が英語かスペイン語なので召喚コストが高くなり、通常は召喚されませんから大丈夫です。ですが、日本語が通じる世界でも世界ごとにいろいろと複雑な事情があるので困ります。召喚してみたら予想と周波数が違ったとか電圧が違ったとか。幸い、ミントでも手に負えないほど、とんでもなく仕様が異なる建物は無いようですが。」

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