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073:はじめての都市計画

【第三層群屋上展望台】


「西の方、入間との間には低地があり、南の方へ延びていますが、北や東は見る限り台地と低地が入り交じる荒野ですね。東の地平線に見える山が筑波でしょう。」

 マリーが手製の簡略な地図と現実の地形を照合しながら説明する。

「この丘は元々旅人の目印になっていたようで、道は5本。西の入間いるま、東の茨城(いばらき)、北東の那須塩原なすえんげん、そして北西から南東に延びる台地の上に、の国とふさの国を結ぶ寂れた中山ちゅうざん街道があります。ただし、どれも、きちんと宿場が整備された街道ではありません。」

 異世界の栃木県にあるのは那須塩原なすしおばら。この世界の塩類平原は「なすえんげん」で読み方は異なる。

「南西側にも道があるとバランスが良さそうな……。」

「確かに、そうすれば、ほぼ等間隔の6方向になりますが、南西には何もありませんよ。この先の低地が海ならば港でも作れますが。」

「えっと、マリーさん、確か『六道輪廻』って言って種族は6種類だったな。なら、6方向を6種族、そのうち街道が無い方向を『地獄門』にして刑場を置くとか。」

「餓鬼門で良いんじゃ無いですか。修羅が多いこのダンジョンに餓鬼は要りません。西の入間いるまは人間が多いから人間門、あ、入間と人間って文字も似ていますね。あとは適当に北西を畜生門、北東を修羅門、東を天門、南東を地獄門とか。ただ、十二支や八卦は方位と関係ありますから、六道と方位に関係がないか、きちんと調べてから決めるべきでしょう。」

「保留、かな。」

「わたしを含め修羅というものは他人に馬鹿にされることが大嫌いで、他人を見下すのは大好きですから、あからさまな間違いを犯す可能性は排除したいものです。」

 修羅にインターネットを与えてはいけない。大惨事必至である。マリーだって匿名だと何をしでかすことやら。


「5方向の街道は、将来自動車を量産可能になっても大丈夫なように一直線にしましょう。実際、ローマ街道も直線でした。幅は……難しいですね。100m道路っていうのは一つの目安ですが、それですら人口が数十万人に増えたら足りません。」

「そんなに要るか?」

「日本の都市は歴史的経緯で人口密度が高く道が狭く、その分を鉄道で補っています。例えば東京市だと交通量の8割が鉄道ですが、仮にこれを全て自動車で賄うなら、特に都心と郊外を結ぶ道路は10倍は必要です。このダンジョン、今は馬車すらありませんが、せっかく計画都市で土地の制約はありませんから、遠い将来に備えて十分な土地を確保します。」

 東京市の人口密度は16,000人/㎡で人口が1,000万人余りと同程度のロサンゼルス郡の人口密度800人/㎡と比べ20倍に達する。

「確かに、ダンジョン構造物なら高架道路も容易だろうし、100mで足りなければ美女木びじょぎジャンクションみたいに重ねたら良いな。」

「もっとも、当面は徒歩ですから、街道を整備しても江戸時代のように1日の移動距離は30~40km。宿場の間隔は10km前後が目安でしょう。江戸時代の埼玉付近はもっと宿場が多くありましたが。」

「街道や宿場を整備しても海賊に襲われると困るな。」

「そこなんですよね。5本の街道に騎士団を5つ貼り付ける。くらいやらないといけないでしょう。今は騎士団は1つしかありませんから、まず一番近い入間いるままでの道、埼玉県の地図だと川越新道に相当するでしょうか、これを整備します。」

「ダンジョン影響圏の拡張に合わせて道を整備していくと。」

「ダンジョン機能で地面を平らにして表面をダンジョン構造物に指定すれば完了です。ダンジョンエネルギーを使い切っていますし、今は20車線道路など要りませんから、まずは舗装は幅5m程度に抑えます。」

「ダンジョン構造物ってメンテナンスとか要らないんだろうか。」

「ダンジョンエネルギーで維持されますから、メンテナンスは要りません。そう考えると、あまり作りすぎても負担になるでしょうが、これだけ高い塔型ダンジョンだとコアからのエネルギーも相当多いですし、無駄遣いしなければ大丈夫でしょう。」


「そういうわけで、西の入間いるまへの街道を先行整備します。入間の手前まで順次ダンジョン影響圏に組み込んでダンジョン構造物の舗装道路を作り、宿場を整備します。奈良時代の駅なら16km間隔、江戸時代の宿場なら10km間隔。どうしましょうか。」

「この世界は尺貫法だから、メートル法は馴染みが無いだろう。」

「江戸時代みたいに2~3里間隔で宿場を配置し、健脚なら10里ですがそうでない場合にも対応しましょうか。入間いるままで17里程度ですから、まず8里か9里あたりに宿を置いて2日行程にするかな。」

「その辺は、そこまでダンジョン影響圏に組み込んでから考えたら良いんじゃないか。」

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