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064:移民団の正体

【ダンジョン北西】


 難民達は小休止。先頭では軍議が行われていた。

「修羅は戦闘種族だから、修羅が支配するダンジョンなど要塞化されているに決まっている。まず間違い無く城門には罠が仕掛けてある。」

「そんな事分かっている。クソ餓鬼が。」

 犬は最初から餓鬼に対して喧嘩腰。なお、餓鬼の外見は寺に飾ってある絵の通り。

「餓鬼は丈夫だから矢の1本や2本は耐えられる。野営するなど敵に準備させる無駄な時間は与えず、到着次第まず餓鬼が敵陣に接近、あえて城門を避けて、城壁や堀があれば餓鬼が積み上がることで攻城櫓を作る。で、その上を身軽な猿や鹿が登って突入して斬られる。城門を内側から開けて猪と鹿が突入、最後に人間が制圧だ。」

 筑波内薬佑つくばないやくのじょうが考えていたような、部分的に土を盛って梯子を掛けるのでは無く、大軍を城内に送り込める通路を作る。アレクサンドロス大王がティルスを攻略したときは7ヶ月、ローマによるマサダ攻略では2年かかったが、餓鬼が生きた土嚢となれば1日も必要ない。もちろん餓鬼は丈夫で圧死しないので、後で掘り返せば良い。

「獣人は斬られ役か?」

「そもそも、この遠征の主役は餓鬼だぞ。餓鬼は絶食に耐えるから、この程度の距離なら飲食不要。おかげで小荷駄こにだ隊も要らない。」

「移民に偽装できたのは、武器では無く己が肉体で勝負する獣人のおかげだ。槍とか持ち歩いていたら比企の人間達みたいに100里向こうからでも遠征軍と分かってしまう。だいたい、筑波と合わせて攻め込むはずなのに、てめえら餓鬼どもの足が遅いから予定より遅れているんじゃ無いか。着いたときに既にダンジョンが落城していたら無駄足だぞ。」

 視界距離は計算すると17里。つまり、ちょうどダンジョンと霞ヶ関(かすみがせき)の距離で100里なんてことは無い。100里も見える塔なんて空気が地表の2割程度になり登山家すら生きられない。

「まぁまぁ、もっと建設的な議題をして。協力しないと城は落とせません。それこそ攻城戦中の内薬佑ないやくのじょう殿の足を引っ張る事になります。」

「黙れ発情期。一番役立たずな種族の分際で。」

 一番役に立たないのが天人。ダンジョンの固有法則無しでは飛ぶことも奇跡を起こすことも出来ない。性別も無いので遊女にも陰間(美少年)にも使えない。しかも最後は洗っても洗っても不潔で、頭が汚らしく斑禿まだらはげになり、酷いワキガが悪臭を放ち、しかもその状態で徘徊する。さらに全身が耐えがたい悪臭を放つとか目が見えなくなるとか言う。これを天人五衰と言う。

「現状、畜生の方が役立たずに見えますよ。誰彼構わず噛みつく狂犬、足が速いのに偵察すらしないバカな鹿。まぁ烏の鈴木は1羽しか居ないし飛ぶのは大変だから情状酌量の余地はあるにしても。そんなに頭が悪いなら、もはや獣人ではなくただの動物だから鍋にでもした方が良いでしょう。」

 江戸時代同様、犬はあまりまともな食材ではなく、武家奉公人が食べるもの。もちろん獣人は食用では無い。

「何を。」

「こいつは躾に失敗した駄犬ね。」

 仔犬のあいだに人間が上だと教え込まないと犬は反抗的になる。人間と獣人は宗教的には人間道と畜生道と異なるが生物学的にはどちらも動物なので、本能の影響を完全に脱することは出来ない。



【ダンジョン北西】


 移民団を迎えに来たハルナとラージャだが、近づく前にハルナが止まる。

「将軍、これ移民では無い。」

 馬の耳は良い。馬の耳に念仏と言うが、念仏が聞こえないのでは無く畜生道なので理解しないだけ。

「ハルナありがとう。大至急戻って対策を立てます。悪いけど全速力、襲歩しゅうほで。」

 ラージャとハルナは大急ぎでダンジョンに戻ったが、敵の到着まで1時間も無い。

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