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065:餓鬼という難敵

【コアルーム】


 ラージャの報告により緊急会議。とはいえ時間は無い。

「餓鬼は丈夫なので弓矢で射ても、なかなか致命傷にはなりませんし、刀で手足を斬ってもそれだけでは死にません。しかも鉱物の親類なので、焼いても穴に埋めても水に沈めても死にません。」

「面倒だな。マリーさん、どうやって倒すんだ?」

「マスター、頭を壊す、焼いてから水をかけて砕く、どこかへ閉じ込めて飢えて仮死状態になるまで待ってのみか何かで砕く。このあたりでしょうか。」

「餓鬼というのは要は生きた石ですから、石の性質を持ちつつ歩き回ることが出来ます。つまり野戦築城が極めて容易になります。敵に回すと厄介な存在です。」

 餓鬼は鉱物界の存在であり、ラージャが指摘するように、歩く石と言うのは強力な存在。

「石よりは柔らかいだけマシでしょうか。これがゴーレムみたいに額に『しんり』と書いてあるなら2文字消せば壊せるのですが。」

 ヘブライ語なら1文字消せば良い。もちろんこの世界、固有法則が対応した一部のダンジョン内でしかゴーレムは動作しない。なお、ゴーレムの額に書き込む文字は「真理」の一部を消すと「死」になる言語に制約され、かつその言語で命令しないといけない。このため、イディッシュ語を母語とする東欧のラビ(ユダヤ司祭)がヘブライ語を間違うとゴーレムは暴走するという。


「難題だな。確かミントさんの分身は自由に出したり消したりできたな?」

「消すのはどこでも自由ですが、出すのは本体から同時に4体づつ。という制約があります。」

「何で4なんだ?」

「単に、植物のミントの茎が四角いからでしょう。」


「なら、例えば、彼らの正体に気付かないふりしてダンジョン内に受け入れ、倉庫にでも案内してからミントさんの分身を消して閉じ込めるとか。」

「マスター、いっそ、風呂に案内して毒ガスでも流し込む方が早いと思われます。」

 第二次世界大戦が無かった世界では、マリーの発想は人類史に前例の無い独創的(邪悪)なもの。

「毒ガスなら風呂どころか城門の下で十分なのでは? 確か楼門用の床だけあったはず。」

「垂直な30mの城壁ですから、中華な楼門が似合うと思うのですが、一から作るのは面倒ですし、楼門型の図書館は見当たりませんし。というわけで保留中ですが、さすがにあの下に2,000人は多すぎるかな。一度に全滅は出来ないかも。」

「かといって、残りにダンジョン付近でうろうろされると、入間いるまとの交易に邪魔だし、何か手は無いのか。」


「そこは臨機応変に……正直、わたしにもこの状況で完全な作戦なんて無理です。……まず、全入植者にダンジョン本体への退避を命令。餓鬼は野菜を食べないだけマシと思うしかありません。でも、あの獣人は見た目から害獣と思われますから、確実に駆除しなければなりません。」

「餓鬼は高純度のアルコールやエーテルしか飲めないんだったな。」

「はい。餓鬼にとっては30度は暑さではなく、マイナス30度は寒さでは無く、度数30度は酒ではありません。動きが鈍いので30kmは距離でしょうが。」

 元ネタはシベリアに関するアネクドート。

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